06年10月 解説米軍再編 米軍とアジア太平洋


米軍の編成
 米国は陸軍・空軍・海軍・海兵隊の4つの軍隊を持っており、それぞれに「タテ」の指揮系統があります。例えば沖縄海兵隊の指揮は、海兵隊司令部→太平洋海兵隊→第3海兵遠征軍→第3海兵師団となっています。
 この他にも米軍には、4軍を合わせて地域ごとに分ける、統合軍という「ヨコ」の指揮系統があります。統合軍は、北方軍(北米大陸)、南方軍(南米大陸)、太平洋軍(アジア太平洋)、中央軍(中東)、欧州軍(欧州・アフリカ)の5軍です。
 「タテ」の指揮系統が日常業務を行い、「ヨコ」の指揮系統は戦時の作戦計画を担当します。日本に直接関係するのは、太平洋軍です。太平洋陸軍・太平洋空軍・太平洋艦隊・太平洋海兵隊を傘下に置き、アラスカ・ハワイ・グァム・日本・韓国・オーストラリアに基地があります。またフィリピン・タイ・シンガポールなどで、定期的な軍事演習を行っています。

在日米軍の活動範囲はアジア太平洋全域
 私たちは、在日米軍は日本の防衛に専念していると誤解しがちです。しかし米軍は、アジア太平洋を一つの単位として行動しています。横田基地や嘉手納基地には、韓国やグァムから米軍機がやって来ます。沖縄の海兵隊と陸軍特殊部隊は、フィリピンで反政府組織の掃討作戦に協力しています。在日米軍再編は、アジア太平洋全体の米軍再編の一部であり、世界米軍再編の一環です。3つの米軍再編は、密接につながっています。それは、私たちの側から見れば、どこか一つが頓挫すれば、全体が動かなくなるということなのです。

アジア太平洋地域の反米軍基地運動
●韓国
 韓国には約38,000人の米兵が駐留しています。これまで米軍は38度戦からソウルにかけて兵力を集中させてきました。再編では、この地域の基地を削減し、ソウル南部のピョンテク(平澤)に集中させようとしています。ピョンテクには今でも、5つの基地がありますが、韓政府は基地群を拡大するため、農地の強制収用を行おうとしています。
 この地の農民は日本植民地時代に1度目の土地収用にあい、米軍によって2度目の収用に、そしていま3度目の収用を強制されようとしているのです。農民たちは、「今年も耕作するぞ」を合言葉に農業を続け、連日のロウソク集会を行っています。政府は今年に入り、軍隊を導入して土地の強制収用を開始しました。統一連帯や民衆連帯、民主労総などの全国的な社会運動団体は「平澤米軍基地拡張阻止汎国民対策委員会を結成し、農民の闘いを支援しています。

●グァム
 グァムは16世紀以来、植民地支配を受け、1945年以降は米国の準州としての支配を受けています。島面積の2割を米軍基地が占めていますが、大統領選挙に投票することもできません。原子力潜水艦や戦略爆撃機の拠点として基地が強化され、数年後には沖縄海兵隊の司令部が移設されます。先住民族のチャモロは、生活と文化を守るために「チャモロ・ネイション」を組織し、米国の支配と闘っています。

●オーストラリア
 オーストラリアは、日本と同様に米国の忠実な同盟国です。ベトナム・アフガニスタン・イラクと、米国の侵略戦争には常に協力してきました。中部にあるパインギャップ基地は、海外最大の米軍基地で、米国の軍事衛星の管理・運用を行っています。また両国政府は、オーストラリア国内に、共同訓練基地を建設することで合意しています。AABCC(オーストラリア・アンチ・ベース・キャンペーン)などの団体が、米軍基地の閉鎖を求めて活動しています。

●フィリピン
 かつてフィリピンには米空軍と海軍の基地がありましたが、1991年に国会上院の決定で米比基地協定を終了させ、米軍基地が撤退しました。しかし近年、南部諸島でイスラム系武装組織の反政府活動が活発化していることから、政府が米国に支援を求め、米軍の再駐留が始まっています。米軍や政府軍による住民殺害など、人権侵害が多発しています。現在、非共産党系の諸団体による反米軍組織が作られ戦いを続けています。

アジア太平洋反米軍基地連携へ
 平和フォーラムは昨年、これらの国々から反基地団体を招き、「10.21国際反戦・反基地集会」を開催し、国際連帯の第1歩を踏み出しました。そして今年も11月25日から、「アジア太平洋反基地東京会議」を開催します。米軍と闘っているのは、私たちだけではありません。世界の労働者・市民の力をあわせて、米軍の戦争政策と海外基地強化に対決しましょう。


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