04年 7月 
「なにが問題? 自衛隊の多国籍軍参加」


イラクでは6月28日、占領暫定当局(CPA)から暫定政府へ、主権が移譲されました。これに伴い、自衛隊は多国籍軍に参加することになりました。
 小泉総理は多国籍軍への参加に当たり、@武力行使はしない、A自衛隊の活動は非戦闘地域に限る、Bイラク復興支援特措法の枠内、C日本の指揮下――の4点を原則として定めました。では、この原則は守られているのでしょうか。

イラクは全土が戦闘状態
 イラクでは現在、米同盟軍と占領抵抗勢力との戦闘が続いています。戦争中(03年3月20日〜5月1日)の米同盟軍の死者は171人でしたが、その後(03年5月〜04年6月)の死者は約800人。戦争中よりも占領期間中の方が、死者が多いのです。
 小泉内閣が多国籍軍参加を決定した6月18日の前日には、首都バグダットで自爆攻撃、バグダッド北方のバラドでは米軍補給基地にロケット砲攻撃、バグダッド西方のラマディでは2件の攻撃が行われています。自衛隊が駐留しているサマワでも、度々迫撃砲攻撃が起こっています。主権移譲後も戦闘は行われており、収束の見込みはありません。
 小泉総理は、イラクを「戦闘地域」と「非戦闘地域」に分けていますが、現在のイラクは、全土が「戦闘地域」なのです。

多国籍軍の指揮は米軍
 小泉総理は、「自衛隊は日本の指揮下で活動」と説明しています。しかし、米国のロドマン国防次官補は「国連安全保障理事会決議の『統一の指揮下にある』は、現在の状況において米軍の指揮を意味する」と述べ、米軍に指揮権があることを確認しました。
 指揮権について、日米の間には認識の差があります。これでは戦場で、米軍から何を要求されるかわかりません。

「人道復興支援」だけではない自衛隊の活動
 小泉総理は、自衛隊の活動を「イラク特措法の枠内」「人道復興支援に限定」としています。しかし、イラク特措法には「人道復興支援活動」とともに「安全確保支援活動」が明記されています。
 「安全確保支援活動」とは、米同盟軍の支援のために行う補給や輸送活動のことです。また先の国会で成立した有事関連法のうち、改正「日米物品役務相互提供協定」(ACSA)は、イラク特措法を適用対象としています。イラク特措法と改正ACSAを用いれば、戦闘行為以外の、あらゆる米軍支援が可能となるのです。

「安全確保支援活動」は武力行使の手助け
 米軍は、アフガニスタンとイラクでの兵力を維持するために、正規軍だけではなく、予備役・州兵までも動員しています。自衛隊が補給・輸送などの後方支援業務を行えば、米軍はより多くの兵士を戦闘に参加させることができます。自衛隊の多国籍軍参加は、結果的に米軍兵士を増やすことになるのです。
 以上のように、政府の定めた4原則はまやかしなのです。

日本がイラクのためにできること
 自衛隊は「人道復興支援」として、主に給水と医療活動を行っています。ところが政府は、自衛隊だけではなく、ODAでも給水活動・保健医療活動を実施しているのです。既に、ムサンナー県水道局には給水車12台が供与され、サマワ総合病院やサマワ母子病院には医療器材等の供与が行われています。新たに、総額約313万ドル(約3億4480万円)の給水・保健医療活動の無償資金協力も決定しました。給水・保健医療活動は、「自衛隊でなければできない活動」ではないのです。
 小泉総理は自衛隊のイラク派兵を、国際社会の義務であるかのように説明します。多国籍軍を認めた国連安保理決議1546は、全会一致で可決されました。ところが安保理常任理事国5カ国の中、派兵しているのは米英2カ国で、中国・ロシア・フランスは派兵していません。主権移譲以前に軍隊を派兵していた国は全部あわせても39カ国。国際社会の中で、派兵国は少数派なのです。
 自衛隊の派兵は、米軍支援でしかありません。ODAやNGO支援を始め、非軍事・民生分野でできる復興協力は様々あります。むしろその方が、イラクの社会資本整備や雇用の拡大につながるのです。
 日本は、平和憲法の理念にそった、独自のイラク支援を考えるべきではないでしょうか。


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