【 幻想戦記外伝 - ブラックレイ - 】 ―――戦え。 その声は、響くような声だった。 ―――我に血を。 黒き翼は戦場を駆け抜ける。 魔剣は止まる事無く、彼女を駆り立てた。 朱に染まる街。 炎と瓦礫の中に彼女はいた。 「………ッ!!」 彼女の目に移るのは焼け焦げた物質。 かつて、人であった物。 「………そんな、こんな事が許されるわけがないっ!!」 それは、親にすがる子供のように見えた。 それは、子を庇う親のように見えた。 そして、それらの体は切り裂かれていた。 私が魔剣を手にしたのは、復讐する力が欲しかったから。 人を殺める理由など、それで充分でしょう―――? 例えどんな結果を引き起こそうとしても、 全てを失った私にとって、それが何だと言うのだろう。 光は交差する――― 己の想いをかけて。 「答えろ、聖剣の使徒!!  私に立ち止まる事ができると言うのか!!」 彼女の目には怒りと、悲しみと、迷いがあった。 「―――それが、幸せであるってことくらい、君は解るだろう!  魔剣の衝動に駆り立てられてられる事は、苦痛だ!!」 魔剣の一撃は、気を失いそうになる程に重い。 それに彼女の、全ての念が込められているかのように。 「今更、許されるか!!」 「君が認める事から逃げているんだろう!! 青年は聖剣の力を解放する。 その力は全てを焼き尽くす浄化の炎。 少女の魔剣もそれに反応するかのように、闇を創る。 ―――魔剣が重くなる、意識が、潰されるかのようだ。 少女には自分が自分という認識すら薄くなっていた。 体は魔剣と言う存在に突き動かされている。 心が、痛い。 光が再度交差する――― そして、魂が解放されるのを感じた。 「―――ああ、なんて暖かくて眩しいんだろう」 「―――また、みんなと一緒に居られるんだね」 その日、黒き翼に捕らわれた少女は、 光の中へと、消えていった―――