【 幻想戦記外伝 - 惑わしの魔笛 - 】 笛は不安を奏でる――― 聞くもの全てに等しく。 笛は恐怖を奏でる――― それは悪魔の嘲笑のように、人を陥れた。 「良くやってくれた、我が国の英雄よ」 ―――良く言う。 「さあ、ゆっくり休んでくれ。どうか、次も頼むよ。我々には君だけが頼りなのだよ」 ―――私に拒否する事など許さないのだろうに。 気がついたのは、いつからだろか。 私には想いを音色にする力があった。 私が微笑みながら笛を奏でれば、みんなが笑ってくれた。 私が涙を浮かべならが笛を奏でれば、みんなが悲しんでくれた。 そう、私はそれだけで良かった。 みんなが音色を聞いて、私の気持ちを感じてくれるのは幸せだった。 私は不安を奏でる――― 聞くもの全てに等しく。 私は恐怖を奏でる――― まるで翼をもがれた、鳥のように。 神よ、願わくば――― この力を私から、音色と共に風に乗せて持ち去って欲しい。 例え、それで何を得れるとしても。 人を陥れる力に何の意味があると言うのか。 神よ、願わくば――― 私を呪縛から解き放って欲しい。