【 - 幻想戦記外伝 機構の天使 - 】 いつの頃からだろう――― 私は、兵器になっていた。 彗星のように降り注ぐ魔法弾を私の背の白銀の翼が凪ぎ弾く。 魔法弾は拡散し、火の粉のように飛び散った。 私の両手に握られた機構杖が私の意思に反応し、起動する。 「大気は、光となり―――  空を駆ける鳥となる」 スペルリアライザーと名づけられた機構杖は、 持ち主の言葉を元に魔力を構築し、攻撃呪に変化させる。 「羽ばたけ、鳥よ  愚かな魔人を打ち砕かんが為に―――!!」 光の鳥は、次の魔導砲を撃とうと魔力を充填していた魔導巨兵の頭部に直撃し、巨兵の頭を吹き飛ばした。 巨兵がバランスを崩して倒れ、それを見た王国軍の数体の機械鎧兵がとどめを刺しに飛び掛る。 私には、生まれた時から飛びぬけた魔力キャパシティが備わっていた。 体を宙に浮かす事だって出来たし、 雨に濡れずにとなり街まで歩くことも出来た。 苦手な編み物を魔法で紡ごうとした事もあった。 上手くはいかなかったけれど、あの人は笑っていた。 高い魔力キャパシティを持って生まれたことは、それなりに幸せだったのだと思う。 でも、それは戦争と同時に終わりを継げた。 私は、王国の権力者に兵器としての価値を見出され、 新型の魔導兵器を動かす為の道具となった。 「君の家族や友人を守る為でもあるだろう」 金銀に縁取られた服を着た人はそう言っていた。 魔神が人の全てを滅ぼそうとしているのなら、戦わねばならぬと。 白銀の杖と白銀の翼を駆る私は、人々の目から見て ―――天使なのか、魔人なのだろうか。 この戦が終わった時、 私の戦いも終わるのだろうか。 きっと、あの日々に戻る事は出来ない。 その時にはきっと、私は人では無くなっている。 自由を失った鳥は、空に憧れるだけなのだから。