―――応えて下さい、 この声が届くのなら… きっと、私はあなたの力となりましょう… 眠ったはずの機体に光が灯った。 それは機械的な鋼鉄の兵士のものじゃない。 まるで命が宿ったかのような、鼓動。 誰かが俺に語りかけてくる。 あの魔神に立ち向かえと。 あいつは、この大陸に生きる者の全ての命を奪う存在なのだと。 口の中から鉄の味がする。 血の味だ。 体は全身中が痛む。 だけど、それでも俺の意識ははっきりとしていた。 その『声』が俺の体を突き動かそうとしてるのだろうか。 霞みかけていた目の先に幻覚のようなビジョンが見えた。 二人の神が精霊達の済む美しい大地を発見し、そして大地を巡って争い。 そして長い戦いを経て一人の神の末裔がそれを治めた。 昔話で聞いた事がある、聖戦の話だ。 ―――私は過去の遺恨を忘れた訳ではありません。 ですが、この大陸を守るためにあなたに… いつの間にか機兵の手には美しい槍が握られていた。 機体からは魔力のようなオーラが発せられている。 操縦桿を握る手はまるでこの機体が自分と繋がったかのような感覚を受ける。 ―――お願いです。 あなたの手で魔神を…!! はっきりと声が聞こえた。 その声が誰のものかは解らない。 だが、その時には俺は決意していた。 この大陸の全ての敵である、この魔神を倒してみせると。 そして、漆黒の黒い機械の騎士は眩しいほどの光を纏い、 破滅を呼ぶ巨人と一昼夜戦い続けた。 …それは後に、神竜と魔神の戦いとして伝説に刻まれている。