!!急いで戻ってきてくれええぇぇぇぇ!』




 任務終了後、本部に連絡を入れたらリーバー班長が出ました。

 班長……うるさい。そんなに怒鳴らなくても聞こえるから(怒)




Nursing




 あれから急いで帰ってきた私は、早速班長の元へ向かう。

 何か切羽詰ってたような感じがしたんだけど、どうしたんだろう?

 そんな疑問を浮かべながら、科学班のドアを開けた。




「ただいま帰りました〜。
 なんか連絡で切羽詰ってたみたいでしたけど、どうかしたんですか?」

「「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!」」」

うわっ!?いきなり引っ付かないで下さい!!」




 部屋の中にいた科学班のメンバー全員が私に駆け寄った。

 中には涙まで流している人が居るよ。

 口々に「女神が帰ってきた」や「救世主だ!!」とか言ってるけど、何の事?

 聞いてるのに彼らは、泣き拝んでるだけで質問に答えてくれそうにない。

 あぁもう!この人達じゃ埒があかないよ。

 他に誰かいないの〜?リーバー班長は〜?




!やっと戻ってくれたんだな!」

「あ、班長だ。みんなの様子がおかしいけど、どうかしたんですか?」

「……………そりゃおかしくなるよ。アレが連日続けば…な(泣)」




 は?アレって何?

 詳しく聞いてみると、これまた吃驚。

 「あの」神田が風邪をひいたんだって。

 風邪を引いたから大人しく寝てればいいのに、神田は誰の世話にもなりたくないらしい。

 普通に(?)生活をしてるんだけど、やっぱ風邪の時は辛いじゃない?

 ブラックオーラ&殺気の大量放出をしてるんだって。




「見かねた室長が(面白半分に)看病をしようとしたけど、返り討ちにあった」

「だから室長がいないのか(汗)駄目ですよ。神田はプライドが高いから」

「だよなー。それ以来、神田の殺気が強くなってな。あの視線で人が殺せるぞ…だから後は頼む」

「………は?班長は私に死ねと仰るのですか?」

恋人のなら大丈夫だ。暫く休暇をやるから任せたぞ」




 班長はそう言い、私を科学班の部屋から押し出した。

 …………仕方ない。神田の部屋に向かいますか。

 滅多に二人っきりになんてなれないんだし、たまにはこういうのも有りだよね。


































 † † † † †




 コンコン




「神田いる〜?」




 ドアを開けると、神田はベッドの上で寝ていた。

 だけど私が部屋に入ると上半身を起こした。

 ありゃ?起こしちゃったかな?




「ごめんね。起こした?」

「別に。寝てねぇ」




 部屋に入り、神田の傍へ寄る。

 彼の額に手を当てると、かなりの熱があった。




「熱がかなり高いねー。ホントに風邪ひいたんだ。鬼のかく乱?」

「うるせぇ。犯すぞ」

「そんな元気もないくせに(笑)」




 これだけ熱が高いと辛いはず。

 薬、ちゃんと飲んでるのかな?って聞くまでもないか。

 神田の事だから医務室に行ってないな。

 後から薬を貰ってこなくちゃ。

 その他にタオルと氷水も用意して…

 洗面器に氷水を入れ、それでタオルを冷やす。

 そのタオルをしっかり絞ってから、ベッドに横になった神田の額に乗せた。




「何しに来た。任務じゃなかったのか?」

「ん〜?任務は終わらせたわ。連絡を入れたらね、班長に戻って来いって言われたの」

「余計な事しやがって……」

「あらら〜…そんな事言うの?
 折角休みを貰ったから神田の看病をしようと思ったのに〜。
 『余計な事』なんだ?」




 「帰ろっかな〜」と呟きながらドアの方へ歩きかけたら、ガシっと腕を掴まれた。




「何?神田さん」

「別に…」

「そう?だったら放して」

「……………」




 まぁーったく。素直じゃなくて可愛いんだからv

 でもそんな事を言ったら、後からの仕返しが怖いから言わないけどね。

 


「はいはい。判ったから。ちゃんと看病しますって。だから手を放して」




 そう言うと、今度は素直に手を放してくれた。

 さて。看病と言っても何をしようかな?




「神田、おなかは?」

「空いてねぇ」

「でも薬を飲まなきゃいけないから、後から食べようね。ん〜…何かして欲しい事ある?」




 聞くと、神田は少し考えてからぶっきら棒に言った。




「俺が寝るまで傍にいろ」

「了解」




 くすくす笑いながら、椅子をベッドの近くに持ってきて座った。

 タオルを再び氷水で冷やし、額にのせる。

 そしてずれている布団を掛け直し、額にかかっている邪魔そうな前髪を払いのけた。

 熱で苦しいのか、神田の眉間にはしわが寄っている。

 こんな状態になる前に、医務室に行けば良かったのに。

 きっと『たかが風邪』なんて軽く考えてたんだろうね。

 全く…世話のかかる人なんだから。

 そんな所も好きなんだけどさ。




 具合が早く良くなる事を願いながら神田を見つめる。

 どのくらい時間が経ったのかな?

 神田から規則的な呼吸が聞こえた。

 眠ってる今の内に、必要な物を取りに行きますか。








































 † † † † †




 …………ここは…俺の部屋…か。

 確かが看病に来てくれて…

 あぁそうか。その後、俺は寝たんだな。

 じゃあは?何処へ行った?

 天井を見ながら考えていると、部屋のドアが静かに開いた。

 入ってきたのは

 その手にはトレイがある。

 薬とりんごと…あれは粥か?




「あ、起きてたんだ。丁度良かった。ご飯を持ってきたよ」




 はサイドテーブルにトレイを置き、土鍋から茶碗に粥を移す。

 その茶碗とれんげを俺に向けた。




「少しでも良いから食べてね。薬を飲まなくちゃ」

 確かに薬を飲まなくちゃいけないだろう。

 そのためには、胃に何か入れなくちゃいけない事も判ってる。

 俺は上半身を起こしたが、茶碗を受け取らなかった。

 その様子には訝しんでる。

 『風邪』に『粥』とくれば、アレだろ?




「神田?どうしたの?」

「食わせろ」

「は?それって『あーん』ってヤツですか?」




 他に何があるってんだよ。

 それに俺達は恋人同士だろ?やったっておかしくねぇ。

 なのには真っ赤になって否定している。




「無理!絶対に無理っ!!」

「ふーん…俺の看病に来てくれたんじゃねぇのか?」

「それは……そうだけど…」

「なら食わせろ」




 俺に譲る気が無いと判ると、はしぶしぶれんげで粥をすくった。

 ふーっと息を吹きかけ冷ました後、俺の口元へ持ってくる。

 俺が口を開けると、はゆっくりと粥を入れてくれた。

 ふーん。塩加減が丁度よくて美味いじゃねーか。

 俺好みの味だ。

 ジェリーが作ったのか?




「ねぇねぇ。美味しい?このお粥ね、私が作ったんだよ」

「はぁ!?が作ったのか!?」

「んー…微妙な反応。私が作ったらおかしいかな?」

「お前、今まで料理した事なかっただろ!?」

「任務 任務 任務で作る時間なかったじゃない。
 というか、メンドーだったから作らなかった」




 マジかよ…(怒)

 つーか、料理できるんなら作れよ。俺に!!




「今度なんか作れ」

「はいはい。神田が元気になったらねー。はい。最後の一口」




 は最後の一口を俺の口に入れると、今度は薬の準備をする。

 粉薬の包みを開け、コップに入った水と共に俺に渡した。

 薬の何とも言えない感触と苦味が、口の中に広がっていく。

 ちっ。だから粉薬は嫌いなんだ。

 眉を顰めると、はくすくす笑い出した。




「相変わらず粉薬が駄目なんだ」

「うるせぇ」

「怒らないの。そんな事だろうと思って、デザートにりんごを持ってきたから」




 はトレイの上にあったりんごをフォークで刺し、俺に渡した。

 そのフォークを受け取り、りんごを一口齧る。

 あぁ、蜜入りりんごか。

 苦い薬の後もあってか、りんごが何時も以上に甘く感じた。




「どう?りんご甘い?」

「甘いな。も食ってみるか?」

「うん!食べたい!!」




 笑顔で答えるを見て、俺は持っていたりんごを齧る。

 そしてを引き寄せ、唇を奪った。

 その唇を舌でこじ開け、りんごをの口に入れる。




「ん…ぁ…」




 艶かしいの声が部屋に響いた。

 ぎゅっと瞳を閉じ、頬を染めるは可愛い。

 だが、これ以上は駄目だな。

 名残惜しいが、唇を離す。

 は涙を浮かべ俺を睨みながら、俺が移したりんごを食べていた。




「神田の馬鹿」

「感じたのか?」

ちっがーう!風邪がうつったらどうしてくれるのっ!?」

「その時は俺が看病してやるよ」




 「体のすみずみまで…な」と耳元で囁く。

 顔を赤く染めて、慌てて空になった食器類を片付ける

 そんな様子を見ながら、俺はが風邪をひいた時の看病方法を考えていた。




 こんなふうにと二人でゆっくり過ごせるのなら、風邪も悪くねぇな。








後書き
あれ?あれ〜〜?
リクエストは風邪をひいた神田さんを看病するって話だったんですけど…
神田さん、元気ですね(爆)
病人が何やってんだよ…
何だかツッコミ所が満載の話になってしまいました(汗)
犬神様、これで宜しかったでしょうか?


犬神様のみ転載可でございます。