見送るだけじゃ嫌。

 早く追いつきたいんです。




憧れの背中




 イノセンスの適合者と判って、教団本部に来て3ヶ月。

 今まで戦闘なんてした事のない私は、訓練の毎日です。

 基礎体力作りから始まり、器具を使って筋力アップ、最後はイノセンスの発動。

 毎日ヘロヘロになるまで訓練してます。

 肉体的にはキツイのですが、弱音なんて言ってられません。

 あのお二方のように、早く一人前になりたい。

 そしてアクマになってしまった人達を救いたいのです。

 私の父と母のように―




 私の父は不慮の事故で亡くなりました。

 でも母はその事実を受け入れる事が出来ず、千年伯爵の誘いに乗ってしまいました。

 悪性兵器と化した母は私を殺そうとしたのです。

 母が私に銃口を向けた瞬間。

 白髪の少年が私をかばい、黒髪の青年が母を破壊しました。

 少年はアレン、青年は神田と名乗りました。

 お二方は、イノセンスの回収に来たそうです。

 それはどうやら我が家に伝わる双剣だったようで。

 命の恩人ですし、両親を解放してくれた方の頼みを断る事はできません。

 双剣をお渡ししようとしましたが、ここで問題が起きたのです。

 神田さんもアレンさんも、双剣が重くて持てませんでした。

 剣と言っても、長さは神田さんの持っている刀より短いです。

 持てないほど重いはずがありません。

 なのに、神田さんもアレンさんも持ちあげる事が出来ませんでした。

 お二方がどうしようか困っていた時、ふと気配を感じました。



 双剣が私を呼んでいるのです。



 導かれるまま双剣を手にした私は、持ち上げる事が出来ました。

 全く重くありません。羽のように軽いのです。

 驚いたお二方は、ある結論に達しました。

 私が適合者ではないのかと……



 そのまま教団本部へ一緒に行き、検査を受けました。

 結果、私もイノセンスの適合者だと言う事がわかりました。

 ですが、私に戦いの経験はありません。

 このままでは足手纏いです。

 なので一人前のエクソシストになるべく、毎日鍛錬しています。
































 † † † † †




 何時ものように器具を使ったトレーニングを終え、私は森に来ました。

 舞い落ちる木の葉を双剣で切るトレーニングです。

 ゆらゆら動く木の葉の動きを予測しながら素早く切る。

 それが実践に慣れる方法だと、神田さんに教えて頂きました。

 


「イノセンス発動。『』」




 イノセンスを発動し、ゆらゆら落ちてくる木の葉に狙いを定めます。

 自分の周り全部に神経を張り巡らせて、全ての木の葉を切ろうとしました。

 ですが、なかなか上手くいきません。

 で切り損ねた木の葉が沢山落ちていました。

 こんなんじゃ駄目ですね…

 一人前のエクソシストになるには、まだ遠そうです。

 落胆していると、背後から声をかけられました。




「随分と上達したね!

「アレンさん!!任務から帰ってきたのですか?」

「うん。ついさっき帰ってきたんだ。の扱いが上手になったね」

「まだまだ駄目です…切り損ねた木の葉が沢山あります…」

「でも最初の頃よりは減ったでしょ?動きも滑らかになってるし」

「神田さんはもっと多い量の木の葉を、目隠ししたまま全部切るんです。
 私もそれが出来るようにならないと」

「ちょっと待って。何でがその事を知ってるの?」

「ある日、早朝マラソンをしていて鍛錬をしている神田さんをお見かけしたんです。
 その日以来、神田さんが本部にいらっしゃる時は、朝の鍛錬に付き合って貰っているんですよ」

「ふーん…カンダは抜け駆けをしてたんだ」




 アレンさんがポツリと呟きましたが、声が小さくて聞こえませんでした。

 聞き返しても「何でもないよ」と笑顔で答えるだけです。

 そう言えば…アレンさんと神田さんは仲が悪いとお聞きしました。

 それなのに、私が神田さんの話を出したのはまずかったでしょうか…?




「ねぇ。僕も鍛錬に付き合うよ」

「お言葉は嬉しいのですが、アレンさんは任務から帰ってきたばかりです。
 お体を休めた方が良いですよ」

「僕なら大丈夫。帰ってくる間に休んだから。
 だから僕にどれだけが扱えるようになったか見せてよ」

「はいっ!!」




 嬉しいです!夢見たいですっ!

アレンさんと手合わせが出来るなんて!

私は発動したままだったを構えます。

アレンさんもイノセンスを発動しました。



意識を集中して、双剣を握っている手に力を込めました。

そして地を蹴り、アレンさんに向かいます。

最初の一振りはあっさりとかわされました。

ですが再び踏み込んで2撃目を繰り出します。

その攻撃をアレンさんは左手で受け止め、そのまま大きく振ります。

投げ飛ばされましたが、何とか衝撃を殺し再びアレンさんに向かいました。


静かな森に何度も剣戟の音が響きます。

長時間動いていた私はアレンさんの攻撃を受けてバランスを崩してしまいました。

その隙をついて、アレンさんが私の背後に回りました。




「参りました。私の負けです…まだまだ修行が足りませんね」

も強くなったよ。僕も何度かヒヤっとしたもん。
 でも体力が足らないね。もう少し持久力をつけなくちゃ」

「はい!体力ですね」

「あと、は左足を踏み込む時に……」




 アレンさんが沢山指摘をしてくれます。

 それを一つ一つ聞きながら、次からの鍛錬では気をつけようと思っていた時。

 森を歩く音が聞こえてきました。

 足音はこちらに向かって来ています。

 誰だろうと思い音の方を向くと、神田さんが歩いて来ました。




「神田さん!!」

「探したぜ。調子はどうだ?」

「まだまだ神田さんみたいにはいきませんよ〜」

「そうか。で、何でモヤシがいるんだ?」




 モヤシ?モヤシって……もしかしてアレンさんの事でしょうか?




「さっきまでアレンさんに相手をして貰ってたんです」

「はっ!?コイツが…?」




 神田さんは一瞬驚き、そしてアレンさんを睨んでいます。

 アレンさんも、そんな神田さんを睨んでいました。




「てめぇ…抜け駆けとはいー度胸じゃねぇか」

「カンダに言われたくありませんね。僕は早朝の鍛錬の事を知りませんでした」

「はっ!そもそもてめぇに出番なんて無いんだよ」

「何故ですか?僕もの鍛錬に付き合いますよ」

が使ってるのは双剣だ。なら六幻を使っている俺の方がいいだろ」

「そんな事関係ないですよ。僕だって実践くらいできます」

「つかに近づくんじゃねぇよっ」

「それが本音ですか。出来るわけ無いじゃないですか。僕だってが好きなんですから」




 お二方で何やら言い争いをしているみたいなのですが、声が小さくて聞こえません。

 ………放っておかれるのも寂しいですね(苦笑)

 さて、どうしましょうか。

 次は何をやろうかなと考えていると、アレンさんと神田さんがいきなり私に話しかけました。




はどっちがいい?」

「へっ!?何がです?」

「俺とコイツ、どっちに相手してほしいかって聞いてんだよ!」

「カンダ!そんなに怒鳴らなくても良いじゃないですか。が怖がってますよ」

「別に怒鳴ってねぇよ。ではどっちがいいんだ?俺だよな?」

「僕ですよね?」


 ちょっと待ってください。

 話の展開が読めないのですが(汗)

 なんで私の相手の話になってるのでしょうか…

 どちらが良いと言われましても…

 お二方は私の憧れですし。決められませんよー(泣)

 でも、『二人とも』なんて言える雰囲気ではありません。




「カンダより僕の方が優しいし教え方も上手だよ」

「剣術なら俺だろ。モヤシよりも俺の方が強ぇ」




 いや…あの…その…そんな事を言われましても(汗)

 だからお二人とも私の憧れなんですってばー!

 答えようも無くおろおろしていた私を助けてくれたのは、コムイさんでした。




「あ、神田くんもアレンくんもこんな所にいたんだ」

「何か用ですか?コムイさん」

「くだらねぇ事だったら切るぞ」

「えー?任務だから折角呼びに来たのにー」




 頬を膨らませて拗ねるコムイさん。

 神田さんもアレンさんもこれから任務なんですね。

 私も早く一人前になって、任務に行きたいです。




くんは、まだ駄目だよ。もう少し強くなってからネ♪」

「はい。神田さん、アレンさん。お気をつけて下さいね」

「任務なんてさっさと終わらせて帰ってくるから、また一緒に鍛錬しようね」

「あぁ?何言ってんだ。次は俺とやるんだよっ」

「早い者勝ちです」




 アレンさんと神田さんが、また口論しながらコムイさんと共に歩いていきます。

 お二方の背中は、私の始まりで、憧れで、目標です。

 必ず追いついて、隣に並んでみせます。

 待っていて下さいね!










後書き

さんはエクソシスト見習いなので敬語にしてみたのですが…
なーんか違和感(汗)
神田さんの口調も変ですし……
しくったなーー。
おまけに夢っぽくないっスね(-_-;)
神田VSアレンを目指したんだけどなぁ。