ある街で再会したコムイお兄ちゃん。

 お兄ちゃんに勧められて、私は黒の教団で働く事になったの。

 初めて教団に来た日、凄く驚いちゃった。

 小さい頃に別れちゃったリナリーちゃんに会えたから。

 リナリーちゃんも、私と再会できた事を喜んでくれた。

 また大の仲良しになったの!!

 でもね、リナリーちゃんにお仕事内容を聞いちゃった…

 だから私に出来る事、いっぱいいっぱい考えてる。

 少しでも大好きな人の役に立ちたいから。

 なのに…この性格が恨めしいです……ハァ(溜息)




I Wish




「どうしたの?。溜息なんかついちゃって」

「リナリーちゃん〜〜(泣)」



 書類を持ってきてくれたリナリーちゃんに泣きつく。

 リナリーちゃんは軽く溜息をつきながら、私の頭を撫でてくれた。



………またなの?」

「またなんです」



 私は極度の人見知り。

 最初は科学班の皆さんとも喋れなかった。

 それでも時間が経つにつれ、随分と話せるようになりました。

 リナリーちゃんやコムイお兄ちゃんが協力してくれたおかげなの。

 だけど未だにエクソシストの皆さんは苦手で………

 何回もお話すれば大丈夫なんだろうけど…

 そんな私が、あるエクソシストに書類を届けなくちゃいけない。



「今度は誰?」

「『神田』さんです………」

「神田かぁ。ついてってあげたいけど、私もこれから用事があるのよ」

「うぅ…そうなんだ。じゃあ行ってくるね……」

「大丈夫?」

「うん。何時までもリナリーちゃんに頼るわけにはいかないもの」



 今までは書類を届ける時、リナリーちゃんがついてきてくれた。

 リナリーちゃんが話をしてくれて、私は後ろで見てるだけ。

 私もここで働いている以上、それじゃ駄目よね。

 これは良い機会。この人見知りを克服する為の第一歩にしよう。

 そう決意し、部屋を出る。

 えーっと……神田さんの部屋は、向こうの棟ね。一旦中庭に出なくちゃ。

 階段を降り中庭を歩いたら、森の中から何かで風を切り裂く音が聞こえた。

 何かな?

 不思議に思い、木の陰からそっと覗いて見たの。

 うわぁ………!凄い!!

 綺麗な黒髪を高い位置で括ってる人が、刀を操っていた。

 その人は、目隠しをしながら舞い散る落ち葉を真っ二つにしていく。

 それも一枚も外す事なく!!

 流れるような動きに見惚れていると、彼が急に目隠しを外した。



「誰だ!!」

「きゃっ!」



 彼が怒鳴りながら睨んでくるから、思わず逃げちゃった。

 走って走って、気付けば向かっていた棟の中。

 吃驚したー。でも訓練の邪魔をして申し訳なかったなぁ。

 謝りたいけど、ちゃんとお話できるかな。

ちょっと怖そうだったし。

 でも、木の葉を斬っている姿は凄く綺麗!できればもう一度見たいな。

 その前にこの書類を『神田』さんに渡さなきゃ。

 …………あれ?書類がない。さっきまで手で持ってたのに。

 落としちゃったーーー!?

 ももももももしかして、中庭で驚いた時に!?

 大変!急いで戻らなきゃ!

 走って元来た道を戻る。

 あの書類は大切なもの。無くす訳にはいかないわ。

 刀を持ってた人を見るまでは持ってたもの。

 あるとしたら、そこよね。



 中庭に着き、辺りを見回す。

 書類は………あった!!

 でも…でもですね…さっきの刀を持った人が書類を持っているのです(汗)

 返して貰わなくちゃ。大事な書類なんだもの。

 話掛けたいけど、やっぱり怖そう…

 初めて会う人だし。

 こんな時リナリーちゃんがいてくれたらなぁ。

 ってダメダメ!

 さっき人見知りを何とかするって決めたばかりじゃない!



「あの……」

「あぁ?何だよ」

「えっと…あの…その書類……」

「これがどうかしたか?」



 うぅ…怖いよう。睨まれてるよぅ…

 頑張れ私。勇気を出して!!

 自分に言い聞かせながら、私は目の前の人に用件を伝えた。



「その書類、私のなんです…」

「これが…お前の?」

「はい…エクソシストの『神田』さんに渡す為の書類です。返して…頂けないでしょうか……?」



 恐る恐る伝えると、目の前の人は眉を顰めていた。

 私、変な事を言ったかな?

 普通に(?)お願いしただけなんだけど…

 何か言ってくれないかなぁ。この無言がイタイです…



「おい、これを『神田』に届けるのか?」

「はい…?そうですが…それが何か」

「『神田』は俺だ」



 ……………………えぇ!?この人が神田さん!!

 本人を目の前にして、神田さんに渡す書類を返してって言っちゃった…

 あわわわ……何て事をやっちゃったの私!

 きっと気分を害されてるよね…?

 自分の愚かさ加減に顔が赤くなっていくのが判る。

その場にいる事に耐えられず私は部屋に向かって走り出した。

 だから知らなかったの。

 神田さんが何かを企むような笑みを浮かべていた事に。











































 † † † † †



「お帰り。ちゃんと書類は渡せた?」



 科学班の部屋に戻ると、リナリーちゃんがいた。

 笑顔で言ってくれるリナリーちゃんに、私は抱きつく。

 驚くリナリーちゃんに、私は今あった事を話した。



 

「神田さん……怒ってるよね…」

「そんな事ないわよ。神田は気にしてないと思うわ」

「訓練の邪魔もしちゃったし…」

が気にする事ないわ。神田は誰かに関わるのを煩わしいと思ってるみたいだもの」



 リナリーちゃんが言うならそうなのかも。

 私より神田さんの事を知ってるから。

 それでもまだ不安があって…

 「平気かな?」と呟くと、「平気よ」と答えてくれた。

 リナリーちゃんがそこまで言うなら大丈夫よね…

 神田さんも私みたいな小娘なんて気に掛けないよね。

 少しだけ元気が出た私は、残っていた仕事に取りかかった。



 なんだけど………

 あの日以来、何故か神田さんと接する機会が増えました…

 神田さんに渡さなきゃいけない書類は全て私に回ってくるの。

 他の仕事を代わってでも、神田さんの書類を届ける事になっちゃうの。

 そして、そのまま神田さんとのお喋りタイムに入っちゃう。

 はっきり言って神田さんに書類を届ける方が簡単。

 そればかり続いちゃ、皆の仕事が増えてしまう。

 申し訳なくて断ろうとしたら、真っ青な顔で否定された。

 他にもよく廊下ですれ違ったり、ご飯をご一緒したり。

 最初は怖かったけど、話してみるとそうでもなくて。

 今では、神田さんの訓練風景を見せて貰ってます!

 やっぱり木の葉を斬る様子は凄く綺麗!!まるで剣舞のよう!!

 でもね、困った事もあるの。

 神田さんはスキンシップが多いのよ。

 嫌…ではないけれど、慣れてないから恥ずかしい。

 反応に困っちゃうのよね…



 軽く溜息をつきながら、書類作成に使う為の資料を探す。

 確かこの棚の…あった!

 目的の書類を取る為に手を伸ばした。

 けれども、その書類は後少しと言う所で届かなかった。

 え〜っと…何か台になるような物は…ないですね(汗)

 うぅ…仕方ない。もうちょっと頑張ろう。

 一生懸命つま先立ちをして、書類に手を伸ばす。

 あと少し………

 その時、背後から手が伸び、取ろうとしていた書類を簡単に掴んだ。



「取ろうとしてたのはコレか?」



 この声は………神田さん!?

 え?何時の間にこの部屋へ?というか背後へ!?

 うわわわ///神田さんの腕の中へ閉じ込められている状態です!!

 でもまだ右手が空いてるわ。

 そこから逃げようとしたけれど…

 神田さんは持っていた書類を私に渡し、その腕も棚についた。

 完全に逃げ道がなくなっちゃった!!

 えと…えと…どうしよう…///

 真っ赤になって慌てている私の頬に、神田さんの綺麗な黒髪がかかる。

 神田さんの腕は、私の腰に回されていた。

 次の瞬間、後頭部に柔らかな感触。

 えええぇぇぇ//////もももももしかして//////



……」



 はわわわ!神田さんの声が耳元で聞こえます!

 と…吐息が耳に!!

 って…神田さんの手が怪しい動きを(汗)

 どう対応して良いか困っていた時、いきなり部屋のドアが開いた。

 入ってきたのは、リナリーちゃんでした。

 あれ…?リナリーちゃん、何か怒ってる。

 笑顔が黒いよぉ…(怖)

 そんな様子のリナリーちゃんに驚いたのか、神田さんの腕が緩んだ。

 今だ!!

 私は神田さんの体を押し退けて、リナリーちゃんの所へ向かう。

 リナリーちゃんは私に先に部屋に戻るように言った。



「判った。リナリーちゃんはどうするの?」

「私は神田と話があるから、後から行くわ」



 それを聞いた瞬間、胸がちくんと痛んだ。

 ?何だろ、この痛み。

 自分でも判らない痛みを抱えながら、私は部屋に戻ったの。

 




































 † † † † †



 資料室の事件(?)から2週間。

 神田さん、任務が入って教団にいないの。

 大丈夫かな?怪我してないかな?

 神田さんが強いのは知ってるけど、やっぱり不安だよ……

 戦えない自分がもどかしい。

 ………ダメダメ。こんな事を思ってる位なら、仕事をしよう。

 私は目の前の書類と格闘し始めた。





 更に数日後。

 漸く神田さんが帰って来てくれた。

 でも…今回の任務で神田さんは大怪我をしてしちゃったの。

 今は医務室で寝てるってコムイお兄ちゃんが言ってた。

どうしよう………私の所為だ…

 私が調子に乗って神田さんの訓練風景を見に行ったから……

 神田さんの訓練を邪魔しちゃったから…

 エクソシストの任務は命がけだから、普段の訓練が大事だって知ってたのに…

 ………私が神田さんに会う資格なんてないよね。

 医務室の前まで来たけれど、私は部屋に入る事なく引き返した。

 神田さんの容態と自分の愚かさに涙が出てくる。

 泣きながら歩いて、辿り着いた先は中庭の木の下。

 ここ……何時も神田さんの訓練風景を見てる場所だ。

 一番大好きな場所で……今は来るのが辛い場所。

 ここで神田さんを見てるのが好きだった。

 六幻を操っている神田さんが凄く綺麗で……大好きなの。

 だけど…私が無理を言ったから…神田さんの邪魔をしちゃったから…



「っく…ひっく……」



 止まらない涙を隠すため、私は膝に顔をうずめた。

 泣きながら想うのは神田さん。

 会いたいけど、私には会う資格ない…

 それでも…



「神田さんに……会いたいよう」

「だったら会いに来ればいいだろ」



 一人呟いたのに、返事が返ってきた。

 驚いて顔を上げると、コートを羽織っただけの神田さんが目の前に立っている。

 左胸からお腹の辺りまで包帯が巻かれ、血が薄らと滲んでいた。

 私でも判る程の大怪我。

 その痛々しい様子に、また涙がこぼれた。



「神田さんに会う資格なんてないよ……私が神田さんの訓練の邪魔をしちゃったから…
 だから神田さんが怪我を………」

の所為じゃねぇよ。俺の不注意だった」

「でも………でも!!」



 泣き続け反論する私を、神田さんはそっと抱きしめた。

 

「泣くんじゃねぇ。これくらいの怪我ならすぐ治る。それに俺は…お前に会えない方が辛い」



 神田さんは私の頬にそっと手を添え、上を向かせた。

 涙をその手で拭ってくれる。

 

「会う資格がないなんて言うな。俺はに会う為に戻ってきたんだ」

「か…んだ…さん?」

「好きなんだよ」



 えぇ!?神田さんが私を好き…?

 突然の神田さんのコクハクに呆然となる。

 でも凄く嬉しくて、心が温かくなった。

 恥ずかしくて視線を逸らしたいけど、神田さんの双眸が私を捉えて離さない。

 真っ直ぐな綺麗な瞳。

 それは初めて神田さんを見た時を思い出させた。



「私も神田さんが好き。きっと初めて見た時から………」



 初めての、一世一代のコクハク。

 それを聞いた神田さんは、私をぎゅっと抱きしめてくれた。

 温かい……神田さんが生きてる証拠。



 神田さんの腕の中で、私は誓ったの。

 もっともっと仕事を頑張るって。

 私は直接現場には行けないわ。

 代わりに、伯爵に関する資料や情報を集めるの。

 少しでも神田さんや現場に行く人が有利になるように。



だからお願いします。

私の元に、必ず神田さんを帰してください。













後書き
どーん……
なんじゃこりゃ〜〜な話ですね…(汗)
頑張って設定を考えたのに生かされてない…
おまけに無駄に長いですね………
最後までお付き合い頂いて有難うございました。
あうぅ……もっと勉強が必要だわ(ホントにな)
Ray様、折角リクして貰ったのに、こんなんで申し訳ないです…(土下座)

Ray様のみ転載可でございます。

ブラウザを閉じてください。