ふぅ…今日の仕事が終わったわ。
時計の針はとっくに深夜を指してるけど、これでも早い方。
科学班、何であんなに書類が溜まるのかしら?
………コムイ室長の所為ね。
もう少し整理整頓してくれないかしら?
優しい子守唄
部屋に戻るため、教団の長い廊下を私は一人歩く。
締め切りが近い書類を思い出しながら、明日の仕事を考えていた時。
『やめろおおおおぉぉぉぉ!!!!!』
この声って…神田!?
何かあったの?
でも教団内に限って危険な事は…
って考えてる場合じゃないわね。
私は持っていた合鍵を使い、鍵を開けた。
え?何で合鍵を持っているかって?
そりゃ…神田の恋人だもの///
そっとドアノブを回し、部屋の中に入る。
神田はベッドの上で上半身を起こしていた。
どうやら今まで寝ていたみたい。
「大丈夫?大きな声で叫んでたみたいだけど」
神田に近付いて、顔を覗きこむ。
よほど悪夢でも見ていたのかしら?
冷や汗をかいていた。
「………?何で…」
「仕事が終わって、部屋に戻る途中だったの。
そしたら神田の声が聞こえたから…悪夢でも見た?」
「悪夢………夢…?さっきのは夢…か?」
神田はぎゅっと手を握る。
その手は小刻みに震えていた。
この人がここまで恐がるなんて珍しいわ。
「どんな夢だったの?悪夢だったら話してみて。
ほら、悪夢は誰かに話すと実現しないって言うじゃない」
ベッドの端に座りながら尋ねる私を、神田の腕が捉えた。
そしてそのまま私を自分の方へ抱き寄せる。
神田は私の肩口に顔を埋めながら、その内容を話してくれた。
「科学班勤務のお前が…現場にいた。アクマが狙ったのはで…
戦う術を持たねぇお前は、そのままアクマに……」
神田の抱きしめる腕の力が強くなる。
震えながら言う神田を私はそっと抱きしめた。
―少しでも神田の不安がなくなるように―
「大丈夫。私は生きてる。ここで神田の帰りを待ってるよ」
「それは本当か…?こっちが夢で、さっきの夢が現実じゃないよな…?」
「違うよ。ほら私は温かいでしょ?心音も聞こえるでしょ?」
規則正しく刻むリズムを聞くと、神田は腕の力を緩めた。
今が『現実』だと言う事を確信して、安心したのかな?
「俺は今まで怖いものなんかないと思ってたんだ…」
「うん?」
「だが…さっきの夢を見て………が死ぬかと思ったら…凄く怖かった」
「私は死なないわ。神田が守ってくれるんだもの」
「あぁ………は絶対俺が守る。死なせねぇ」
「だったら私は大丈夫。ねぇ神田。もう眠った方が良いよ」
神田は先日帰ってきたばかりだけど、いつ任務が入るか判らない。
任務中は休める時間なんて殆ど無い。
しかも常に神経を張り巡らせている状態。
だから、せめて教団にいる間はゆっくりと眠ってほしいの。
「………眠れねぇ」
「駄目よ。無理にでも眠らなくちゃ」
神田から体を離し、ベッドに寝かせ、布団を掛けた。
えーっと………これ以上私がいてもゆっくり眠れないよね?
邪魔になるだけだし…
そう思ってベッドから離れようとすると、神田が私の手を掴んだ。
「悪ぃ…もう少しいてくれ」
「私、邪魔にならない?」
「邪魔なんて思うかよ。がいた方が安心するんだ」
「うん、判った。神田が眠るまでここにいるね」
再びベッドの端に座り、私は神田の指に自分の指を絡ませた。
そう言えば…私も小さい頃、よく怖い夢を見たっけ。
その度に泣いて、お母さんを困らせてたわ。
泣きじゃくる私に、お母さんは子守唄を歌ってくれた。
不思議と、それを聞くと安心して眠れたの。
怖い夢も見なかったわ。
そうだ!!
「子守唄、歌ってあげようか?」
「はっ?子守唄…?」
神田が驚いた顔をしている。
しまった……神田も子守唄って年じゃないよね(汗)
「ごめん…何でもない」
「いや…歌ってくれ。の子守唄が聞きたい」
「うん。OK」
深い闇の中 ずっと彷徨っていた
掴めない希望 それでも
光があると信じて
手を差し伸べてくれた あなたは
またすぐに闇の中へと身を投じたね
私にできるのは あなたを信じて待つこと
帰ってきてね
また会えたときは 抱きしめてあげる
辛いこと 哀しいこと 包んであげる
全部わかちあいたいの
一人で眠れないなら 私を呼んで
あなたが目を覚ますまで 優しい子守唄を歌うわ
だから今は ゆっくり眠って
「いい歌だな」
「そう?ありがとv今私が作ったのよ。神田への想いを歌にしてみたわ」
「今作った!?凄ぇな。また歌えるか?」
「え?えぇ。もちろん歌えるよ」
神田への想いは沢山あるから。
とても とても大切人だから何曲でも歌えるわ。
あなたが眠るまでずっと………
何曲か歌っているうちに、神田から規則正しい呼吸音が聞こえてきた。
どうやら眠ったみたいね。
眠った神田の顔をじっと見つめる。
彼は幾つもの哀しみを見てきたんだろう。
どれくらい辛い思いをしてきたんだろう。
闇の中で戦っていかなくちゃいけない日々。
私はあなたの安らぎになれるかな?
あなたを癒したいの。
その為なら、どんな努力も惜しまないわ。
「神田、愛してる。今はゆっくり眠って」
そっとキスをし、私は神田の部屋を後にした。
後書き
美鈴様、お誕生日おめでとうございますv
何とか神田を母親の如く眠らせました!
そしたら、なんか弱い神田になってしまいました…(汗)
「神田さんが悪夢を見て叫ぶの?」
というツッコミは無しの方向でお願いしますね(マテ)
こんなんで宜しければ、お納めくださいませ。
この1年も美鈴様にとって素晴らしい年であるよう、祈りを込めて。
美鈴様のみ転載可でございます。
ブラウザを閉じてください。