「はい、確かに報告書は受け取ったよ。任務お疲れ様」

「有難うございます」




 笑顔で労ってくれるコムイさんに笑顔で返し、退室しようとする。

 だけど、その前にコムイさんに呼び止められた。




君、あと1時間したら食堂に来てくれないかい?」

「へ?食堂ですか?」




 何で食堂?何故に食堂?

 は!もしかして、食堂で次の任務の話?

 えー?折角帰ってきたばかりなのに〜。

 また任務に行かなくちゃ行けないの?

 神田にも逢いたいのに〜…

 ん〜…でも仕方ないか。

 それがエクソシストでもある私の仕事なんだし。

 願わくは、今度の任務は神田と一緒だったら嬉しいな。




「判りました。1時間後に食堂ですね?」

「そ☆因みにそれまでは、部屋から出ちゃいけなないよ」

「はぁ!?何で?」




 神田に逢いに行こうと思ったのにー。

 逢える時間って凄く少ないのよ。

 コムイさんだって、知ってるじゃない!

 私達が付き合ってる事も、なかなか一緒にいられない事も。

 せめて、今くらいは……

 泣いて訴えた私を、コムイさんは一刀両断してくれた。




「問答無用☆」




 コムイさんがパチンと指を鳴らすと、アレンとリナリーが現れた。

 そして私の腕をそれぞれ持ち、引っ張っていく。

 うそーん…アレンとリナリーに誘拐されてます。




「二人とも私達を応援してくれるんじゃなかったの?」

「ごめんね、ー。今はダメv」

「大丈夫ですよv1時間したら迎えに来ますから」




 何が大丈夫なのか判らんわ!

 そうツッコミを入れながら、大人しく連れ去られる私。

 何で抵抗しないのか?

 出来るもんならやってますよ。

 だけど、二人ともイノセンスを発動してるんだよ?

 流石に一度に二人のエクソシストを相手にしたくありません。

 最後の望みは、何処かで神田に出会う事。

 なのにそれすらなく、私は部屋に連れてこられた。




「それじゃ呼びに来るまで大人しくしててね」




 リナリーがそう言い、二人は笑顔で去っていく。

 ご丁寧に、外から鍵をかけて………

 ふふふ。そんな事でへこたれるさんだと思っているの?

 持ち前の器用さで鍵を開け、そっとドアを開く。

 ………よし。アレンもリナリーもいないわ。

 部屋から1歩踏み出した瞬間。




殿、どちらへ行かれるのですか?」




 ちっ。見張りがいやがった。

 しかも二人も。

 コムイさんめ、私が逃げ出すと予め読んでたな。

 しかし…教団内で入口に探索部隊の人に立たれるってどうよ?

 私が最初で最後じゃない?

 まさか彼等に攻撃するわけにもいかず、仕方なく私は部屋に戻った。

 いいもん、いいもん。

 こうなったら不貞寝してやるーーー!!




































 † † † † †




「………ろ………きろ……」




 ん…誰?まだ眠いの。起こさないでよ。

 私を起こす声に反抗すべく、寝返りをうち頭を毛布の中に入れた。

 だけど声の主も諦めない。

 何度も何度も私を起こす。

 ………あれ?この声……何処かで…?




「起きろってんだよ。それとも起きれなくしてほしいのか!?」




 耳元で妖しく囁かれ、私は慌てて飛び起きた。




「神田!?」

「たく。やっと起きたか」

「あれ?何で?」

「お前を迎えに来たんだよ」




 迎え?何の事だろう?

 疑問に思っている時に、ふと時計が視界に入った。

 あれから1時間経ってる。

 と言う事は、コムイさんに言われて来たんだろうか?

 だったら行かなくちゃね。

 でもその前に。




「えい!」




 いきなり抱きついた私を、神田は驚きながらも受け止めてくれた。

 はー。やっぱりここが落ち着くわv




「吃驚するだろっ!どうしたんだ?いきなり」

「んー?神田を補充してるの。だって久しぶりなんだもん」




 暫く任務で逢えなかったから淋しかったんだもん。

 そんな想いを込めて、抱きしめている腕の力を込めた。




「俺も、に逢いたかった」




 神田の手が優しく髪を梳く。

 気持ちいい。

 ずっとこうしていたいな。

 ………駄目よね。コムイさんに呼ばれてるんだもん。

 食堂に行かなくちゃ。




「そろそろ行くぞ」

「うん。あ、やっぱり神田は迎えに来てくれたの?」




 神田の答えはイエス。

 ふーん。コムイさんもなかなか気が効くじゃないv

 食堂まで、私達は久々の逢瀬を楽しんだ。








 はぁ。もう着いちゃった。

 これから任務の説明を受けて、ココを出発しなくちゃいけないのか…

 あ!でも隣りに神田がいるという事は、もしかして一緒の任務かも!

 期待しながらドアを開けると…




 パン パン パン




「「「「「お誕生日おめでと〜〜〜〜〜」」」」」




 へ!?何?何の事!?

 ちょっと待って。この状況を確認してみるね。

 『パン パン パン』はクラッカーの音。

 しかも私に向けられている。

 「お誕生日おめでとう」って………




「あ!?もしかして今日は私の誕生日!?」

「忘れてたのかよ……」

「だってー。最近忙しかったんだもん。任務にも行ってたし。日にち感覚がなかった」

「まぁまぁ。さ、君。主役の姫君はこっちへ来て」




 コムイさんに促され、食堂の中央へ行く。

 その道すがら辺りを見回してみると、沢山のご馳走と人がいた。

 エクソシストだけじゃない。探索部隊のみんなや科学班の人もいる。

 みんなお祝いしてくれるんだ!嬉しいな!!




「どう?吃驚した?」

「はい!でも凄く嬉しいです!!」

「それは良かった。それじゃあケーキの蝋燭の火を消してくれるかな?」

「はい!!」




 大きなケーキの上に、歳の数だけ立ててある蝋燭にふぅっと息を吹きかけた。

 火が消えたと同時に、大きな歓声と拍手が起こる。

 「おめでとう」や「一つ年をとったなー」と。

 誰!?年の事を言う奴はっ!!

 でも今回は許してしんぜよう。

 だって嬉しいんだもん。

 軽い足取りで、神田の所に戻る。

 その道すがら、いろんな人から「おめでとう」と言って貰った。

 愛されてるなぁ私(笑)




「神田!神田は知ってたの?このパーティーの事」

「あぁ。を驚かせる為に、内緒にしてた」

「そっか。ありがとー」




 神田と談笑していると、アレン、リナリー、コムイさんが私達の元へやってきた。

 その手には綺麗にラッピングされた箱を持っている。

 え…嘘…もしかして…?




「「「(君)お誕生日おめでとう!」」」




 そう言って、三人とも手に持っていた箱を私の渡してくれた。

 これ…誕生日プレゼント…だよね。

 貰っちゃっても良いのかな?




「当たり前よー。の為に買ってきたんだもの」

「そうですよ。に貰ってほしいんです」

「さ、開けてみて☆」




 コムイさんに促され、プレゼントの包みを綺麗にほどく。

 最初に開けたのは、アレンがくれたプレゼント。

 箱の中には、グレーと白の格子柄のマフラーが入っていた。




「アレン、これ…!」

「前に寒いのが苦手って言ってたでしょ?マフラーがあれば暖かいかなって思って」

「有難う!!わv手触りが良いね。カシミアだぁ!」

「気に入ってくれた?」

「うんっ!早速使わせて貰うね」

「今度は私のを開けてみて」




 リナリーに促され、プレゼントの包みを開ける。

 アレンより小さい箱から出てきたのは、可愛い羽のネックレス。

 これ、前から欲しかった物だ!




はこういうの好きでしょ?それに、これはのイメージにぴったりだったのよ」

「有難う!リナリー。これ前から欲しかったの〜」

「そうなの!?買って良かったわv」

「それじゃ、今度はボクのを開けてみて♪」




 最後にコムイさんのプレゼントを開けてみる。

 大きさ的には、コムイさんのが一番大きい。

 ワクワクしながら開けてみると…




「これ…今大人気ブランドの鞄じゃないですか!?こんな高い物貰えないですよ」

「良いの良いの」

「でも……」

「良いのよ。兄さんもに使って貰いたいのよ」

「そういう事。だから遠慮する必要なんてないんだよ」

「っはい!有難うございます!!」




 どうしよう。凄く嬉しいよう!

 私は何度もお礼を言いながら、プレゼントを箱の中に片付けた。

 あ、リナリーから貰ったネックレスはその場でつけたよ。

 そしてみんなでパーティーを楽しんだの。





























 † † † † †



 パーティーの終了後、私は神田の部屋に来た。

 神田が来てくれって言ったから。

 何だか神田の様子が変。

 怒ってるわけじゃなさそうだけど、いつもより表情が硬い。

どうしたのかな?




「ん?なあに?」

「コレ…」




 神田が差し出したのは、小さな正方形の箱。

 これも綺麗にラッピングされてるって事は…




「もしかして誕生日プレゼント…?」

「それ以外に何があるんだよ」

「うそ!?開けていい!?」




 神田に聞きながら、返事を貰う前に開ける私(笑)

 だって嬉しいんだもん。

 丁寧にラッピングを開けながら、箱の中にある箱を取り出した。

 え…?この箱って………

 『まさか』という淡い期待を抱きながら、恐る恐る箱を開ける。

 果たしてその中にあったのは……




「神田…!これリング…!?」




 そう。箱の中にはシンプルだけど可愛いシルバーリング。

 リングの中央には宝石があしらわれていた。

 この宝石、私の誕生石だ!




「凄い…綺麗」

「気に入ったか?」

「うん!有難う神田。つけても良い?」




 指に嵌めたくてリングに手を伸ばしたけど、その前に神田がその箱を持ちあげた。

 神田は箱の中からリングを取り、更に私の右手を取る。




「俺が嵌めてやるよ」




 神田はそう言って、私の右手の薬指にリングを嵌めてくれた。

 どうしよう…言葉に出来ないくらい嬉しい…!




「サイズもぴったりだな。気に入ったか?」

「うん…うん!凄く嬉しい…!!」

「ったく。これくらいで泣くんじゃねぇよ」

「だってぇ…」




 凄く嬉しいんだもん。

 まさかリングを貰えるとは思ってなかったら。

 神田、こういうのには疎いし…




が嵌めたから、漸く俺も嵌めれるな」




 神田がコートのポケットから何かを取り出した。

 それは宝石こそないものの、貰ったリングと同じデザインのリング。

 え!?じゃあ、これって……




「ペアリング!!」

「この国では、恋人同士が同じ指輪をするんだろ?」

「そうだけど…どうして知ってるの?神田の故郷には無い習慣だよね?」

「リナリーが教えてくれたんだよ」




 神田が右手の薬指にリングを嵌めながら言う。

 そっか。後でリナリーにお礼を言いに行こう。

 シルバーリングを見つめながら考えていると、不意に神田に呼びかけられた。

 神田は私の左手をとり、そっと薬指に口付ける。




「神田///!?」

「全てが……」

「え?」

「全てが終わったら、この指に必ず指輪を贈る」




 それってプロポーズ!?

 嬉しい!嬉しい!!

 どうしよう。嬉しさと恥ずかしさで顔が真っ赤になっていくよ〜。




「俺はお前を死なせねぇ。守ってやる」




 真剣な眼差しの神田を私も見つめ返した。

 ねぇ神田。その言葉は嬉しいわ。

 でもね守って貰うだけじゃ嫌よ。

 私だって貴方に死んでほしくない。

 死なせないわ。




「私も神田を守る。これから先、ずっと一緒に歩んで行こう?」




 頑張って千年伯爵を倒そうね。

 そして、左の薬指にリングを貰える日を楽しみにしているわ。










後書き
ポポさん、お誕生日おめでと〜〜〜〜(私信)

友人の誕生日のお祝いとして書きました!!
誕生日ネタの神田夢、どうでした?
今回、白い神田さんをイメージしてみました(笑)
だってウチの神田さん、いつも何か企んでるんだもん。
たまには…ネ。
でも書いてて違和感があったのは秘密です^^;



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