『コムイか?今任務終わった』
「お疲れ様、君。そうだ、一度教団に帰っておいで」
『面倒だから嫌だ』
「そんな事言わずにさ〜。リナリーも会いたがってたよ。それに新しいエクソシストも入ったんだ」
『………今教団にいるエクソシストは誰だ?』
「今かい?リナリーと神田くん。それにその新しく入った子だよ」
『判った。一度帰る』
想いが重なるその前に
鍛錬を終えた俺は、部屋に戻るべく廊下を歩いていた。
あと少しで自室に着くと言う時、意外な人物を発見した。
その人は、俺より先輩のエクソシスト。
俺の憧れ…いや、どうしても振り向いて欲しい人だ。
「、帰ってきたのか…?」
「ん?神田じゃないか。久しぶりだな」
「珍しいな…が帰ってくるなんて」
「何だその顔は。帰ってきて欲しくなかったか?」
が笑いながら言う。
帰ってきて欲しくなかった…?
そんな事思うはずがねぇだろ。
はほとんど教団に帰ってこない。
俺も長期任務が多いから、滅多に会う事が出来ねぇ。
今回帰ってきた時も、に会えるとは思っていなかった。
だからこうしてに逢えて凄く嬉しい。
その事を伝えようとした時…
「!!お帰りなさい!!」
リナリーが走ってきて、に抱きついた。
抱き止めた瞬間、の黒く綺麗な髪が空に靡く。
はリナリーの頭を軽く撫でた後、ゆっくりと体を離した。
リナリーはを気に入っている。
それと同様、もリナリーを妹のように可愛がっていた。
だが、リナリーに会う為だけに帰ってきたとは思えない。
何故は帰ってきた?
「兄さんからが帰って来るって聞いて嬉しかったわ!!
、ちっとも帰って来てくれないんだもの」
「悪い悪い。私もリナリーに会いたかったよ」
「ホント!?今度はいつまでいるの?」
「そうだな…次の任務が入るまではいるつもりだ」
とリナリーが楽しそうに話す。
女同士の会話を弾ませる二人に、なかなか入っていけない。
チッ。邪魔なんだよ、リナリー。
会話に割って入ろうとした時、リナリーが信じられない事を言った。
「はアレン君に会いに来たんでしょ?彼の所へ案内するわ」
はモヤシに会う為に帰ってきたのか…?
モヤモヤした気持ちが、胸の中に広がっていく。
こんな気持ちのままと話していたくない。
にキツイ事を言ってしまうだろうから…
俺は六幻を握り直し、足早にその場を去った。
暫く経つと、胸の中にあったモヤモヤした感情も何とか消化できた。
だから久しぶりに会ったと話をしようと何度も探すが……
見つける度には誰かと話していた。
それはリナリーだったり、モヤシだったり、探索部隊の奴等だったり様々だ。
これがモヤシやリナリーだったら、その場で会話に加われるだろう。
だが生憎俺はそんな性格じゃねぇ。
誰かと話している所に加わる事ができない。
損な性格なのは判っているが、こればかりはどうしようもなかった。
は今も探索部隊の奴等と話している。
チッ。またかよ。
イノセンスに選ばれなかった奴が、図々しいんだよ。
イライラした気持ちを抱えたまま、俺は食堂に向かった。
† † † † †
何時ものように蕎麦を注文し、席に座る。
その蕎麦を食べていると、近くで探索部隊の奴等の会話が聞こえてきた。
「っく…アイツとは同期だったんだ…何度も一緒に仕事をした…なのにこの間の任務で……」
うざってぇ。
人がメシを食ってる時に、メソメソ泣くんじゃねぇよ!
その人物を横目で見てみると、少し前にと話してた奴じゃねぇか。
イライラした気持ちがますます増えていく。
そんな俺の様子に気付かないソイツは、泣き続けていた。
バァン!!
いい加減腹が立った俺は、持っていた箸をテーブルに叩きつける。
その音は食堂中に響き、今までざわついていた食堂は静まり返った。
「ここでそんな話をしてんじゃねぇよ。メシが不味くなるだろ」
正面を向いたまま言う。
するとソイツは拳を震わせながら俺の所へ来た。
俺の胸倉を掴むなんていー度胸だな。
「俺達探索部隊は、エクソシストの為に働いてるんだ。それをアンタは…!!」
「お前等が何人死のうが俺には関係ねぇ」
「何だと!?」
真っ赤になって怒鳴り、殴ってこようとする奴の拳を片手で受け止める。
そして俺の胸倉を掴んでいる手を、払いのけた。
一触即発の雰囲気が辺りを包む。
奴と一緒にメシを食ってた奴等は止めようとするが、聞く耳を持たなそうだ。
先に動いたのは奴だった。
右手を振上げ、殴りかかろうとする。
はっ!お前如きが俺に敵うと思ってんのか?
奴の攻撃を避けようとした時、間に人が入り奴の拳を受け止めた。
「止めないか、二人とも」
「…」
「止めないで下さい!!俺はコイツを殴らなきゃ気が治まらない!!」
「馬鹿を言うな。ここは公共の場だぞ。それより何でこうなったんだ?」
「理由を話せ」と言うに、奴が事の顛末を話した。
話を聞いた後、は深い溜息をつき俺を見る。
「神田、言いすぎだ。探索部隊も志は同じ仲間だろう」
「……イノセンスに選ばれなかったハンパ者だ」
「私達をサポートしてくれてる。私達が円滑に任務をこなせるのも、彼等のおかげだ」
「そうですよね!」
奴がの言葉に強く賛同する。
チッ。久々にに会えたのに、何でこんな事を言われなくちゃいけねぇんだ。
今日は厄日か?
と話せないだけじゃなく、こんな事を言われるとはな。
全て奴の所為だ。
イライラした気持ちを現すかのように、眉間のしわが深くなる。
ここにいても、怒りが増すだけだ。
部屋に帰ろうと立ち上がりかけた時、が奴の方へ向いた。
「キミにも非はあるぞ」
「さん!どうしてですか!?」
「確かに仲間を失ったのは悲しい。だがここは食堂だ。
ご飯は楽しく食べるものだろう。そこで友人の死を悼んで泣かれたら、周りはどう思う?
ましてや、それが知らない人だったら?」
「ですが……」
「悲しむなとは言わないが、場所を考えろ。ここは公共の場だ」
「はい……」
「判ってくれれば良い。済まない、私もキツイ事を言った。
皆も済まなかった。食事を続けてくれ」
の言葉に、再び食堂がざわめく。
しかし食べる気の失せた俺は、トレイを片付け食堂を出た。
† † † † †
「神田、少し良いか?」
食堂で出た所で、に呼び止められた。
俺に話があると言う。
ここからなら、の部屋より俺の部屋の方が近い。
俺の部屋の誘うと、も承諾した。
部屋に着き、は椅子に座る。
そしてベッドに座った俺を見て、笑みを浮かべた。
「神田、さっきのアレは八つ当たりだろう?」
「あぁ?何の事だ」
「食堂の事だ。さっき泣いてた奴、私と喋っていたのが気に入らなかったんだろう?
私と話したかったのに、何時も邪魔されてイライラしてたもんな」
「っ!!ちが…」
「違うのか?」
違わねぇよ!!
溜まってたストレスを、あいつで晴らそうとしてたんだよ!!
くそっ!!には全てお見通しかっ!
図星を指され黙る俺に、はますます笑みを浮かべる。
「全く…可愛いな、神田は」
「そんな事言われても嬉しくねぇ」
「図星を指されてすぐ拗ねる所も可愛い」
「可愛いって言うな。それよりも良いのか?」
はモヤシに会う為に帰ってきたんだろう?
なのに、ここにいても良いのか?
そう尋ねると、は既にモヤシに会ってきたと言った。
「モヤシ…(笑)確かに白いな、アレンは。アレンはお前と違って素直で可愛かったよ」
「悪かったな捻くれてて。素直で可愛いモヤシの所に行けば良いだろ」
「妬いてるのか?」
「ばっ…///誰が!!」
「まぁそう怒るな。神田、お前は誤解してるぞ」
はあ?誤解?何の事だよ。
つか何に対しての誤解いなんだ…?
話が見えねぇ。
疑問に思っていると、が椅子から立ち上がり歩いてきた。
そして、俺の横に座る。
「確かにアレンには会ってみたかったが、帰ってきた理由はそれじゃない」
「じゃあ何なんだよ」
「………はぁ。やっぱり気付いてなかったか」
「何をだよ」
「それじゃあ神田、推理ショーの始りだ。因みに探偵役はお前な」
「はぁ?何だよそれ…」
「いいから考えろ。私は滅多に帰ってこない。神田も長期任務が多いよな?」
「その通りだが、それがどうした」
「私は比較的短期な任務が多い。
一旦ここまで帰るより、そのまま次の任務に行った方が楽なんだ。
だから私は滅多に帰らない。それでも、全く帰ってこないわけじゃない。
私が帰ってくる理由が判るか?」
が帰ってくる理由…
今回はモヤシに会う為に帰ってきたと思ったが、違うらしい。
じゃあコムイに報告をする為か。
「コムイへの連絡は無線で事足りるだろう」
「リナリーに会う為なのか?」
「あながち外れてもいないが、ちょっと違うな」
それも違うのか。他の理由は…
思い浮かぶ限りの理由を言ってみたが、悉くに否定された。
全く判らねぇ………
は一体、何が言いたいんだ?
「仕方ない。ヒントをやろう」
一向に答えの出ない俺に痺れを切らしたのか、がそう言った。
「滅多に帰ってこない私がここに帰ってくる時、必ず神田がいる。
それがヒントだ。それじゃ、私は部屋に戻る。謎が解けたら部屋に来い」
はそう言うと、俺の部屋から出て行った。
ちょっと待て。は何て言った…?
が帰ってくる時、必ず俺が居る?
そう言えば、俺が教団に居る時しかは帰ってこない。
それ以外でがここに居るという話は聞いた事がないな。
一度や二度なら偶然もあるだろう。
だが、毎回なんてあり得ねぇ。
が意図的にそうしているしか思えない。
つまりそれは…期待しても良いのか?
は俺に逢う為に帰ってきていると思っても良いのか?
導き出した答えの確認をする為、俺はの部屋へ向かった。
後書き
腹の底からごめんなさい!!
リクエスト…全くこなせてないじゃん…
「連載神田以上のクールなさんと、それを必死で振り向かせようとするヘタレな神田」だったのですが…
いや!これでも頑張ったんです!!
クールなさんとヘタレな神田さんにしたつもりなんです!!
私にとっては未開の地を開発する感じでした…
もうホントごめんなさい(土下座)
京香様のみ転載可でございます。
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