「もぅ!!いい加減にして下さい!!」



 バンッ!!と机を叩きながら怒鳴った私を、科学班にいる皆は驚いた表情で見つめていたの。






HAPPY BIRTHDAY






 今日は私にとって、とても大切な日。

 え?何故って?それはね、今日が6月6日だから!

 今日は神田の誕生日なのよ!!

 神田が生まれてきてくれた日。

 この日がなかったら、私は神田と出会う事が出来なかったもの。

 神田の為にお祝いしたいじゃない。

 だから私はこの日に合わせて、仕事を調整したの。

 2週間前に入った任務も、本来なら1ヶ月かかるはずだったわ。

 でもね、必死に頑張って2週間で終わらせたのよ?

 本当に、本当に頑張ったのよ。

 なのに…これは酷いんじゃないですか?



!今度はこっちの書類も頼む!!」

「あ!さん、錬金術でこれを作ってくれませんか?」

「おーい〜〜。さっき渡した書類はもう終わったか?」



 いきなり科学班の人達から呼ばれたと思ったら、書類仕事をやってくれと言われたの。

次から次へと仕事が回ってくる。

 しかも今やってる仕事が終わる前に。

 そうして気付けば、私が使っている机の上は書類の山。

 じょ…冗談じゃないわよ!

 こんなにも書類があったら、今日中には終われないじゃない!

 嫌な予感に、冷や汗をかき始めながら手を動かしてると。



「この書類の計算、間違ってるぞ」

さん〜〜、錬金術をお願いします〜」

「後はその書類で完成なんだ。早く頼むなー」

くーん。ボクの為にコーヒーを入れて〜〜」



 今度は仕事の催促が入ってきた…(泣)



「リーバー班長、今他の書類をやってるので、後でもいいですか?
 錬金術も後にして下さい。あ、その書類はもうすぐ終わります。
 コムイさん、コーヒーはご自分でお願いします」

「えー?くんの入れたのが飲みたいのに〜〜」



 小首をかしげて訴えるコムイさん。

 そんな事をしてないで、仕事して下さい!!

 コムイさんがそんなんだと、終わらないじゃないですか。



さん、次の書類なんだけど………」



 新たな書類が、私の机に置かれたとき………

 プチン…と、自分の中で何かが切れる音が聞こえました。



「もぅ!!いい加減にして下さい!!」



 バンッ!!と机を叩きながら私は怒鳴ったわ。

 今まで我慢して我慢して我慢して(以下エンドレス)いた堪忍袋がとうとう切れたの。

科学班にいる皆は驚いた表情で見つめている。



く…ん?どうしたんだい?」



 コムイさんが恐る恐る尋ねてきた。

 私はそれに答えず、俯いたまま必死で涙を堪えてたんだけけど…

 このままじゃ神田のお祝いが出来ない事と、久し振りに怒鳴った事で感情が高ぶっちゃったみたい。

 とうとう泣いちゃったのよ。

 

「「「「「(くん)(さん)!?」」」」」



 私が泣くなんて思わなかったのかな?

 コムイさんやリーバー班長達が慌てている。

 久し振りに泣いたから恥ずかしいのと、皆に心配かけたくないから涙を止めようとしてるんだけど、
 感情が高ぶりすぎちゃって止まりそうにもない。

 だって、このままだと神田のお祝いが出来ないのよ?

 朝イチで科学班に連れてこられちゃったから、まだ神田にも会ってない。

 『おめでとう』すら言ってないの。

 神田に何も言えず、何も出来ないまま終わる誕生日なんて嫌!



くん!!どうしたんだい!?」

「………っく…ひっく…か…んだに…」

「神田くんだね?リーバー班長!神田くんに連絡して」

「了解っス!神田!聞こえるか?急いで科学班に来てくれ!が泣いてる」








































 † † † † † 



「神田!聞こえるか?急いで科学班に来てくれ!が泣いてる」



 リーバーの連絡を受けて、俺は急いで科学班へ向かった。

 あのが泣くなんて、よっぽどの事に違いない。

 まずはの涙を止めてから、後は…を泣かした奴を切り裂いてやる。



!!」



 部屋の扉を開けると、は俯いたまま涙を流していた。

 俺は急いでに駆け寄り、ぎゅっと抱き締める。



?どうしたんだ?何があった?」



 優しく頭を撫でながらに尋ねた。

 は俺にこうされると落ち着くって言ってたからな。

 これで涙が止まれば良いんだが…



「か…んだ?」

「あぁ、俺だ。一体何があった?」

「ちが…何でもないの…」

「何でもない訳ねぇだろ。誰がお前を泣かせたんだ?」



 人をも射殺せるような目つきで周りを睨む。

 を泣かせた奴、さっさと出て来い。今なら楽に息の根を止めてやる。

 辺りを睨むが、やはり誰も出てこねぇ。

 チッ。仕方ねぇな。ソイツの事は後回しだ。

 先にを落ち着かせるか。



「とりあえず部屋に戻るぞ」

「え…?でも書類が…」

が気にする事じゃない。元々お前の仕事じゃないんだろ?」

「それは…そうだけど」

「だったら行くぞ」




 俺はの手を引いて、科学班から出ていった。

 教団の廊下を二人で歩いている時も、は涙を流している。

 ………ったく。足元が危ねぇぞ。

 

、しっかりつかまってろよ」

「へ?」



 驚くの背中と膝の裏に腕を置き、抱き上げた。

 所謂、姫抱っこってヤツだ。



「か…神田!?降ろして!自分で歩けるわ」

「足取りが覚束なかった奴が何言ってんだよ。今は俺に甘えとけ」

「でも…うん、ありがとう」



 は小さく礼を言うと、俺にギュッと掴まった。


















 部屋に着いた俺は、ソファにを降ろした。

 さて…邪魔者はいねぇし、の涙の理由を聞くとするか。



「どうして泣いてた?」



 俺の問いに、初めは俯いているだけのだったが、少しずつその理由を話し始めた。



「今日は…神田の誕生日なの」



 そう言えば…今日は俺の誕生日だ。忘れてたな。

 だが、それとの涙…何の関係があるんだ?



「神田の誕生日…神田が生まれてきてくれた日だから、お祝いしたかったの。
 だって…この日がなかったら、私は神田と会えなかったんだもの」



 まぁ確かに、俺もの誕生日は祝いたいと思うな。

 

「でも…今朝からずっと科学班の手伝いをしてて…神田にも会えなくて…
 仕事は終わらないし、どんどん溜まっていくし…」



 いろいろと思い出したんだろう。

 の目には再び涙が浮かんでいた。



「もしかして、神田に会えないまま…
 お祝いが出来ないまま『今日』が終わるのかなって考えたら、哀しくなっちゃって」

「だから泣いたのか?」

「うん…呆れてるでしょ?」



 呆れる?俺が?

 そんな訳ねぇだろ。が俺の為に泣いてくれたんだ。

 嬉しいと思っても、呆れるはずがない。



「呆れる訳がない。俺の事を考え、俺を想って泣いてくれたんだ。嬉しいに決まってる」



 の頬をそっと包み、目に浮かんでいる涙にそっと口付けた。

 俺の行動に、真っ赤になって慌てているが面白い。

 こう言う事は初めてじゃないんだ。

 慣れても良いのに、何時までもの反応は初々しい。

 そんな所も可愛いと思ってしまう俺は、重症なんだろうな(笑)



「か…神田///

「愛してるぜ。誰よりも…」



 耳元で囁くように愛の言葉をつむいだ。

 はやはり頬を染めているが、俺の言葉に嬉しそうに微笑んだ。



「私も愛してる。今日は後数時間で終わっちゃうけど、お祝いは何が良い?」

が俺の事を想ってくれるだけで充分だ」

「それじゃ駄目なのよ。神田の誕生日だもの。お祝いがしたいの!!」

「………だったら、俺の傍にいてくれるか?プレゼントはが良い」

「了解しました///



 こうして俺は、最高の誕生日を迎えた。

 来年も再来年も…

 これからずっと、が隣で微笑んでいてくれる事を祈りながら、抱き締める腕に力を込めた。






の涙の原因は科学班だったな。

コムイに仕事を溜めないように、脅しをかけてくるか。






後書き
神田さんハピバ☆
と言うわけで、神田さんの誕生日に合わせて、夢小説を書いてみました。
いつもは『神田さんに愛されよう』がコンセプトですが、
今回は『神田さんが愛されよう』をコンセプトに書きました。
如何だったでしょうか?
神田さん、ちゃんと愛されてますかねぇ(おまいが聞くな)

神田さんの誕生日と言うことで、フリー夢に致します。
欲しい!と思われる方は(いらっしゃるのかな?)、是非お持ち帰り下さいませ。
文章さえ変えなければ、レイアウト等はお任せ致します(#^.^#)


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