2月初旬



 どよ〜ん…

 そんな擬音語が似合うような雰囲気が教団内を覆っている。

 暗い。はっきり言って暗い。

 任務から帰ってきたは、そのあまりの暗さに驚いた。

 同様に任務から帰ってきた神田も、表情には出さないが内心驚いていた。



「暗いな」

「だよね…みんなどうしたのかしら?」



 訝しく思いながらも、二人は報告の為コムイを探す。

 が、その前に二人は良く見知った人物に捕まった。

 いつもはや神田を見つけると笑顔で近づく彼も、今日は様子が違う。

 彼もまた、重い雰囲気をまとっていた。



「ラ…ラビ?どうしたの?」



 思わず声をかけたに、ラビは目に涙を浮かべながらに抱き付こうと――



ドカッ



「何やってんだ」



 神田に蹴りを入れられ、ラビは派手な音を立てて壁に激突した。

 今度こそラビは滝のように涙を流しながら神田を睨む。



「ひ…ひどいさー。親友のオレに対してユウは…」

「ユウって言うな。つかテメェと親友になった記憶はない」



 相変わらずの二人ねぇ。

悪びれもせず言う神田に苦笑しながら、はラビに手を貸す。

 その手を握り立ち上がるラビだが、立ち上がってもの手を離す気配がない。

 痺れを切らしたのは、神田だ。

 不機嫌さを表情に出し己の右手を振り上げ、思いっきり振り下ろした。



「いてっ!!何するんだよ〜」

に触るんじゃねぇよ」

「だからって手刀で離さなくてもいーじゃん」



 そう。神田はの手を握っていたラビの手首に手刀を降ろしたのだ。

 痛めたのはラビの手首だけで、には全く危害がないのは愛故だろう。

 神田はラビからを離し、己の腕の中に閉じ込める。

 は神田の腕の中で頬を染めながらも、ラビが気落ちしている理由を問いかけた。

 ………ここまで来るのに時間がかかりすぎたのは気にしないで頂きたい。



「何だかいつもと様子が違うけど、何かあったの?それにラビだけじゃなくてみんなの様子も…」



 心配そうに聞くに、ラビは再びの手を握ろうとした。

 が、その前に神田に蹴りを入れられる。

いい加減、学習しようよラビ…



「ってて…(泣)ユウは冗談も通じないんだからなぁ。で、そうそう。オレが暗い理由だったよな?
 そりゃ暗くもなるさー。だってバレンタイン間近なんだぜ?」

「バレンタイン…あ、もうそんな時期なんだ」

「そ。でもここって女性は少ないだろ?今年はが入団したけど、もうユウがいるし〜。
 オレ達独り身は、今年も貰えないのかな〜って」

「ハッ!くだらねぇな」

「そりゃユウは良いよ!がいるんだからな。だからから貰ったチョコをオレにくれ!」

「はぁ?意味判んねぇよ。つか誰がのチョコをやるか」

「いーじゃんかぁ。第一ユウは甘い物ニガテだろ?」



 言い争っている二人をさも気にしない様子で、は何かを考えている。

 そして何かを思いついたらしく、神田の腕の中から抜け出して走り去った。

 それは一瞬の出来事で、ラビとの言い争いに気をとられていた神田は対処できなかった。

 走り去ったを見て、神田はますますラビを睨む。

 他の人ならばその睨みに体を震わせるだろうが、そこはラビ。

 に逃げられた神田の様子をニヤニヤ笑いながら見ている。

 そんなラビの態度が神田をますます苛立たせた。

 辺り一体を冷えた空気が包み込む。

 不幸なのは、一部始終と二人の黒さを見てしまった探索部隊の人達だろう。



(((((さん、戻って二人を何とかして下さい!!)))))



 彼らの心が一つになった瞬間であった。
























































 † † † † †



 神田の腕から抜け出したは、リナリーを探していた。

 ある計画のため、そして皆を救済するために。

 真っ先に思いついたのはコムイの所。

 任務の入っていない今なら、そこにいる可能性は高い。

 果たして、リナリーはそこに居た。

 トレイにコーヒーカップを乗せ、皆に配っている。



「あ!リナリー発見」

「あら?じゃない。お帰りなさい」

「うん、ただいまvあのね、今良いかしら?」

「えぇ。ちょっと待ってね。コーヒーを配っちゃうから」

「手伝うわ」



 先程の二人と違い、なんて華やかなのだろう。

 女性特有のやわらかいオーラは、殺伐とした科学班に花をもたらしているようだ。

 コーヒーを受け取った科学班勤務の人達は、涙を流しながら喜んでいる。

 この場に神田がいない事を心から喜んでいた(酷)

 神田はからコーヒーを受け取った人を睨むので、あながち大袈裟でもないだろう。

 まぁそれは置いといて。

 コーヒーを配り終えたとリナリーは、近くの椅子に腰を降ろした。



「で、何なの?」

「もうすぐバレンタインじゃない?」

(((((っ!?)))))



 バレンタインと言う単語が出た瞬間、淋しい野郎共の耳が大きくなる。

 やはり教団でもバレンタインは重要なイベントなのだろうか(笑)



「バレンタイン…そうねぇ。それがどうかしたの?」

「向こうの世界では、バレンタインの時はみんなにチョコを作ってたのよ」

「みんなって…エド君やアル君?」

「他にもね大佐やリザさん、ハボック少尉達にも作ってたの」

「つまり軍の人達って事ね」

「うん。だから、こっちでも作ろうかなぁって。みんなにお世話になってるもの」



 そう言うと、リナリーは真剣に何かを考え始めた。

 所変われば習慣も変わる。

 この世界には、『義理チョコ』と言う概念は無いのだろうか?

 は不安になりながらリナリーを見つめた。



「リナリー…?」

「へ?あ、ううん。何でもないわ。そうね、私も手伝うわ。一人じゃ大変でしょ?」

「ほんと!?ありがとう、リナリーv」



 手を握りながら満面の笑みでお礼を言う

 そんなの様子を見て、リナリーは先ほど考えた計画をやめようかと真剣に考えたらしい。

 ………リナリーさん、計画って何ですか?(汗)

 けれどもリナリーは計画の事などおくびにも出さずに、との打ち合わせをしている。

 だから計画って何ですか…?

 さん、ちょっと危機感を持った方が良さそうですよ。



「材料はだいたいこんなものね。ジェリーさんにキッチンを借りて…」

「私がクッキーを焼くから、はトリュフをお願いしても良い?」

「えぇ。こっちが終わったらリナリーを手伝うわ」

「うん、お願い。ラッピングは………」



 計画を紙に書きながら、打ち合わせをする二人。

 けれど、リナリーはふと疑問に思った事をに尋ねた。



「神田にはどうするの?本命チョコを贈るんでしょ?」

「えっ///も…もちろん贈るわ…」

「だったらその時間も確保しなくちゃねv」

「ありがとう、リナリー」

「ふふvどういたしましてv大好きなのためだものv」

「私もリナリーが大好きよ!」



 二人の会話を聞いて、涙を流しながら喜ぶ科学班。

 教団の二大美女と謳われるとリナリー。

 (例え義理でも)二人からチョコを貰えるのが嬉しいだろう。

 そしてそのニュースはあっ!という間に教団内へ広まった。

 するとあの暗かった雰囲気は嘘のように明るくなっている。

 あのラビでさえ、スキップしながら教団を歩いていた。









 バレンタイン前日

 とリナリーは朝からキッチンで忙しく動いている。

 教団にいる人数がハンパじゃない為、作る量もハンパじゃない。

 二人は黙々と作っていた。

 教団にいる人達が期待の眼差しで見ている事を二人は知らない………











 バレンタイン当日

 完成したプレゼントを持って二人は教団内を歩いていた。

 出会う人達に、チョコを渡しているとリナリー。

 貰った人は涙を流しながら大喜びしていた(大袈裟な)



〜〜〜〜〜!!」

「あらラビ?はい、バレンタインのチョコよv」

「さんきゅ〜〜〜!!オレすっげぇ嬉しいさ〜〜」

「きゃっ!」



 チョコを貰ったのが嬉しかったんだろう。

 思わずを抱きしめ――



 ガッ!!



「………………」



 笑顔のリナリーと固まったラビ、そして穴の開いた壁。

 嬉しくてを抱きしめようとしたラビの横すれすれに、リナリーは蹴りを入れたのだった。

 しかも黒い靴を発動して………



「ラビ?どうしたの?」



 視覚に入らない所で蹴りを入れたため、何も判っていない

 リナリーの笑顔に命の危機を感じたラビは、冷や汗をかいた笑顔でその場を去って行った。

 ラビの様子に疑問を思いながらも、チョコ配りを続ける

 教団にいる皆に配り終え、残るは神田だけとなった。

 神田を探す二人。

 食堂もトレーニングルームも中庭もいないとなると、残る場所は…



「神田は部屋にいそうよね」

「うん。行ってみましょう」



 果たして神田は部屋にいた。

 本を読んでいる神田に声を掛け、とリナリーは部屋に入る。



「神田、今良いかしら?」

…とリナリー。何か用か?」

「あら?私はおまけなの(笑)」



 くすくす笑いながらとリナリーは神田に近寄る。



「今日はバレンタインでしょ?だからね、はいどうぞ」



 は持っていた袋の中から昨日作ったチョコレートを取り出す。

 もちろん、「本命だからね」と付け足すのは忘れない。

 甘い物が苦手な神田も、この時ばかりは嬉しそうに受け取った。

 というか、神田なら例え激甘でもが作った物なら喜んで食べそうだ。

 続いてリナリー。

 彼女もまたチョコを渡す――はずだったのだが。

 リナリーの持っていた袋の中には、チョコが入っていない。

 数を間違えたのだろうか?

 けれども、リナリーに焦りの様子は無かった。



「ごめんね、神田。どうやら私数を間違えてたみたいなの」

「あ…あぁ…気にすんな…」

「あら?駄目よ。みんなにあげたんだもの。神田だけあげない訳にはいかないわ」



 プレゼントはもう無い。彼女はどうするつもりなのだろうか?

 リナリーの笑顔に、神田も訝しんでいる。

 するとリナリーは袋の中から長めのリボンを取り出し、へと近づく。



「どうしたの?リナリー」

「ちょっと大人しくしててねv」

「へ?」



 リナリーはの首にリボンを巻き、そして――



「はい、神田。私からのバレンタインのプレゼントよv」

「へっ!?」



 リナリーの爆弾発言に驚く

 まさか自分がプレゼントになるとは思っていなかったのだろう(当然だ)

 一方、プレゼントされた神田はと言うと………



「ナイスだ」



 と、ものっそ(黒い)笑顔だったと言う。



ちょっと待って!ナイスじゃないから!」

「どう?私からのバレンタインプレゼントは」

「最高だぜ。リナリーもなかなか気が利くじゃねぇか」

「でしょうv神田は甘い物苦手だもんね。チョコよりはが良いと思ったのv

「人の話を聞いてー!」



 貰ったプレゼント()を抱きしめながら、を無視して話を進める二人。

 リナリーは二人の様子に満足そうに頷くと、部屋を出ようとドアへ近づく。

 が、出る直前に神田を振り返った。



「神田、ホワイトデーは期待してるわよv」

「あぁ、今回は任せろ」

「ふふvそれじゃあ、ごゆっくり〜」



 満面の笑顔を残して、リナリーは部屋から去って行ったという。



 清々しいほどの黒い笑みでに近づく神田!

 残されたはこれからどうなるのか!?

 次回こうご期待!!(大嘘)




〜 オマケ 〜



「やっぱり折角のプレゼントなのに食べねぇのは悪いよな?」



 一歩一歩、近づく神田。

 は逃げようとするが、それを遮るように腕を掴む。

 もう片方の腕を持ち上げ、首に巻かれているリボンを引っ張った。

 しゅる…とリボンは解かれる。



「ちょ…待って、神田。私が作ったチョコは食べてくれないの…?」

「そっちも食うが、先に軽く運動をしようと思ってな」

「う…運動って何ですかーーー!?」

「何って…アレに決まってんだろ」

「アレって…私判らないわv」



 冷や汗をかきながら、苦し紛れの笑顔で逃げようとする



「具体的に言ってやろうか?」

「いい!激しく遠慮します!!言わなくていいから〜!!」

「そうか。なら何も知らないに実践で教えてやるよ(黒笑)」



 を抱き上げ、ベッドへ移動する神田。

 どうやら神田の方が一枚上手だったようです。






〜 オマケのオマケ 〜



「あら?の声が聞こえたわ」

「そう言えば、はどうしたんですか?さっきから見ませんが」

なら神田の部屋よ。神田へのプレゼントだもの」

「………もしかして食べられてる…とか?」

「きっとそうでしょうねぇ。ふふv神田からのホワイトデー、期待できるわv」

「(も大変だけど、まぁ僕に被害がないから良いや。あ、このチョコ美味しい)」

「アレン君からのホワイトデーも期待してるわね」

「へっ!?僕も何かあげるんですか?」

「あら当然よ。何事も等価交換でしょ?」

「う〜ん………リナリーは何が良いですか?」

「今度はアレン君やラビ、神田が作ったお菓子でお茶会をしたいわ」

「………お菓子なんて作った事ないですよ?」

「だから楽しいんじゃない!楽しみにしてるわね。早速ラビにも言ってくるわ」

「(僕とラビとカンダ…このメンバーでお菓子なんて作れるのかな?キッチンを破壊しそうな気がするのは僕だけなのかなぁ)」





 終わってしまえ(汗)












後書き
ごめんなさい orz
何に謝罪かって?
もちろん全てに謝罪です(マテ)
ラビ…扱い酷っ!
思いっきりヤラレ役じゃないですか。
いや…まぁ連載ヒロイン(の予定)なので、オチは神田なのですが…
バレンタイン夢なので、フリーにしようかと思ったのですが、こんな駄文、誰も要らないですよね…?
Dグレ夢小説メニューでは表記しませんでしたが、
「あっはっはっは。お持ち帰りしようかな」
と思われる方は、ご自由にドウゾ(だから要らないって)
後書きを読んで下さった方にトクベツです(#^.^#)
文さえ変えなければ、レイアウト等はお任せ致しますv

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