準拠法とは、その契約について裁判を起こす場合に、どこの国の法律で裁判をおこなうのかを決定する特約です。
準教法はできるだけ自国の法律で
準拠法は、国際取引で問題となる特約です。契約当事者の所在地、契約締結の場所、契約を履行する場所など、契約に関係する場所がすべて日本国内であるは、当事者間で別段の合意でもない限り、日本国の法律が適用されます。これに対して、契約に関係する場所の一部にでも海外が含まれる場合、どこの国の法律が適用されるかが問題となります。
特に、当事者の所在地の国が異なる場合は、契約に対する考え方、法令順守の意識、文化・価値観などの違いによって、当事者間の意思の疎通に齟齬をきたす(=トラブルとなる)ことが多くなります。このため、準拠法の規定は、一定の価値観の判断基準をあらかじめ決めておくという意味でも、極めて重要です。
実務上、
準拠法を規定する場合は、できるだけ、自国側の法律を規定するようにします。これは、自国側の法律にしたほうが、法律の情報が入りやすい、弁護士を準備しやすい、単純に馴染んでいる、という理由によります。ただし、これは、相手方にとっても同じことです。ですから、準拠法は、利害が完全に対立します。このように、利害が完全に対立する条項については、契約交渉の最初の段階で、合意しておくようにします。最後に先延ばししてしまうと、まとまりかけた契約交渉が暗礁に乗り上げる可能性があります。これは、合意管轄裁判所についても同様です。
(合意管轄裁判所については、くわしくは、「
合意管轄裁判所」をご覧ください。)
必ず合意管轄裁判所とセットで規定する
準拠法は、必ず合意管轄裁判所とセットで規定します。確かに、法理論上、準拠法の国と裁判所の国が異なっていても、裁判自体はおこなわれます。例えば、アメリカのニューヨーク州の法律を準拠法として、日本の東京地裁を合意管轄裁判所とした場合は、ニューヨーク州法にもとづいて、東京地裁で裁判がおこなわれます。
ただ、これでは、日本の裁判官が、よく知らないニューヨーク州法にもとづいて判決を下さなければならなくなります。しかも、裁判の手続きは、日本の民事訴訟法に従わなければなりません。このようなことを避けるためにも、
準拠法と合意管轄裁判所の国を一致させるようにします。
なお、
仮に裁判に勝った場合であっても、必ずしも、その判決にもとづいて強制執行ができるとは限りません。トラブルを解決するための裁判と、その判決にもとづく強制執行とは、別物の手続きです。例えば、中国では、日本の判決にもとづいた強制執行はできません。また、逆に、日本では、中国の判決にもとづいた強制執行はできません(判例・2008年1月現在)。ですから、
どこの法律を基準にどこの裁判所で裁判を起こすのかは、裁判の後の強制執行を視野に入れたうえで検討しなければなりません。上記の例の場合は、仲裁を活用する方法も検討するべきです。実務上も、日本の企業と中国の企業との契約の紛争処理については、仲裁によって解決するように規定することが多いようです。
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