平成12年10月3日
悪 い 奴
  少し前に『短気』という愛論百科≠出しました様に、わがまま勝手な人が多いのには閉口します。
  知人が、「デパートの婦人服売り場で、『服が気に入らないから引き取れ!』と大声で交渉しているお客が居た。どう見ても、一日か二日は着た洋服だった!」と教えてくれました。
  通常、買って帰ったものを、『包装紙は破いたが着用はしていない』程度の返品はデパートでは珍しくないようですが、一日着てから「気に入らない!」と言われても対応に困ります。
  それでも、サービスを旨とするデパートでは、大声で怒鳴るお客の場合、わがまま勝手と判っていても品物を引き取ることも有るそうで、お客様は神様ばかりではないようです。
  デパートで指輪やネックレスなどの宝飾品を買い、謝恩会などの席で皆に見せびらかせてから、翌日、 「主人に内緒で宝石を買ったので叱られてしまった。このままでは離縁される!」と泣きついて返品する泣き脅しのテクニックを書いたことがありますが、技はかなり巧妙になっているようです。
  先日友人から聞いた恐ろしい話しをご紹介します。デパートの婦人服売り場で、中年のご婦人が「店員が『とてもお似合いです』と言うから買ったのに、着用して出掛けたら、友達から『イメージが合わないッ!』といわれた。だから、押し売りした店員の責任なのだから引き取れ!」と脅すテクニックです。
  このケースを考えれば、店員はお客に対して、『とってもお似合いですわ、素敵なセンスで、品がいいですし・・、お買い得と思います・・』などと勧めたら大変なことになる。
  うっかり『相槌』も打てない世相には困ります。屁理屈とわがまま、強引と脅しで対応のしようがない。以前の日本人には、『美徳』という世界に誇れる魅力があったのに、困った世の中になったものです。
悪  辣
  近頃、個人経営の大工さんが家を建てている現場を見なくなったと思いませんか?。
  工事中のテントや看板を見れば、大手の建築会社の名前ばかりで町の小さな大工さんの現場は殆ど見かけません。大工さんの業界は、いったいどうなっているのでしょうか?。
  以前の町の小さな大工さんは、材木屋さんの仕事場を借りて柱などを刻み、大工さんを中心にまとまっていた、とび職、左官、タイル、経師、畳やさんなどの下職と和気藹々の連携で作業していたものです。
  ところが最近は、大工さんが材木屋で刻んで作業している姿を見かけません。当然のことながら、関連している材木屋さんの廃業も多くなっているようです。
  知人の左官屋さんに聞いたら、「不況の影響で、年間を通して仕事が無いために、大工さんに限らず、建築関係に携わっているほとんどの人達は、大手の下請けをしている」のが現状だそうです。
  「たまにしか仕事をくれない町の大工さんを当てにしていたら仕事が続かない。大手の下請けは、手間は安いが年間を通して仕事をくれるから・・」とのことで、町の棟梁の姿が見えない理由がわかります。
  話しは続き、「でねっ、知合いに残り少ない個人経営の頑張り屋の大工さんが居たんですがねぇ。少し前に飛び込みで入ったお客さんから依頼され、立派な家を建てたんですよ」と今時珍しい豪儀な話しです。
  「普通は、家具や電気製品はお客さんが別に注文するものなのに、そこの場合には、高級家具から照明器具、エアコンなどの電気製品まで全部大工さんが取り付けて、スグに住めるように作ったんですよ」という。
  「そしてねぇ。その相手が悪い奴だったために、手付金と中間金を少ししか貰えなかったから、大工さんは資金繰りがつかなくなった。何でも、依頼主が、出来上がった家にケチを付けるんだそうで、一軒の家を作れば、間取りから材料までケチはどうでも付けられる!」と。
  「お気の毒なことに、結局、大工さんは悩んだ末に自殺してしまった!。大工を泣かせた上に自殺までさせた家に住んでも、依頼主だって住み心地が悪いだろうに、彼らの神経はどうなっているんですかねぇ!」。と何とも悲しく恐ろしい話しになってしまいました。
大手の業者が『そっくり下請けに出す』
ことを、業界では丸投げというそうです。
究 極 の
 悪は未曾有の
    大 不 況


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