平成13年10月2日
浴  衣
  近頃は、実に簡単に縫ってある衣服が多くて困りますが、今回は日本の伝統の浴衣の事件からです。
  今回のトラブル、クリーニングに出た『浴衣』は、首の後ろから背中を通って裾まで、背中の裏の縫い返し部分にそって貼ってあった両面テープの一部が、洗濯中にはがれてしまったのです。
  スラックスの裾の部分を止めるために使用する両面テープが、30センチ程剥がれただけなのですから、別なテープを貼れば解決しそうなものですが、実に困ったことがおきたのです。
  それは、洗濯中に剥がれたテープが浴衣の所々に付いただけでなく、一緒に洗った別の浴衣にまでテープが付いてしまったのですから一大事になってしまいました。
  強力な両面テープですから、シンナーを使えは簡単に取れるのですがベンジンでは取れません。浴衣の染めの白色の部分は問題ないのですが、紺色の模様の所に付いたテープを取るのは、超のつく難問です。
  浴衣の紺色に染めてある部分は、シンナーを使えば色が抜けてしまうので、他の染み抜き剤で工夫しても接着剤が取れず、試行錯誤を繰り返すうちに、結局、その部分の色が褪めてしまったのです。
  この事件、お客さんに「本来の和服の縫製に使わない両面テープは、浴衣には使用しないで欲しい」とお願いしたら、「裁縫の先生が教えてくれたので、弟子から先生に『駄目』とは言えない」とのことです。
  おまけに、「洗う時に、セーターのように押し洗いをすれば傷まないはずで、乱暴に洗ったのが原因・・」と続くと、「浴衣を押し洗いしているクリーニング屋は無い」と言いたくても、双方の見解が違いすぎる上に、「クリーニング業界は、乱暴すぎる!」とも言われそうで反論も難しい。
  ですから、今後も同様なトラブルで業界が悩むことになると思うのですが、伝統を継承してくれていると思っていた和装の業界までが手抜きを実行する状況では、日本の堕落(ダラク)の歯止めは難しいようです。
浴  衣(2)
  今年は、クリーニングに出る浴衣の中に、極端に縮んでしまう品物が数点ありました。
  浴衣は、首からスソまでの長さが、およそ130a程度ですが、仮に、その浴衣が5%縮むと6a以上も短くなるわけで、これでは「足が出てみっともない!」と苦情が出ます。
  格別に乱暴に洗っているわけでは有りませんが、甚平に使うようなザックリした感じの生地の場合には、そのくらいの縮みが起きる事がたまにあるのです。
  例えば、右の袖口から肩と首を通って左手の袖口までの寸法は、140aもありますから、上の計算で縮めば、これは7aも縮む事になりますから苦情が来る事になります。
  浴衣生地は、のりを付ける段階で水を使っていますから、通常は縮まないのですが、ざっくりした生地が縮むトラブルは、縫製する人が『地詰(ジヅメ)』といって、霧を十分に吹きかけて縮むだけ縮ませてから縫うべきで、クリーニング業者の責任というよりは生地の処理の問題なのです。
  今年の夏には、別々なお店から預かった粗い目の生地の浴衣が、同じ状態に縮んでしまい、仕上げるときに伸ばして何とか納まりましたが、次に洗うときも縮むことでしょう。
  『売ってしまえば勝ちだッ!』のメーカーの無責任には困りますし、町会や趣味の踊りの会などのグループで一緒に作った浴衣などが粗悪品の場合には、全部が対象となりますから解決も簡単ではありません。
  改 革 が
   過ぎて堕落の
     伝 統 芸


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