平成11年11月16日
陰  口
  何が楽しいと言っても『人の悪口を言っている時が一番愉快だッ!』とおっしゃる人は多いものです。
  天高き小春日和に心地よく喋っていると、近所の悪口から始まって、知人、友人、親戚や身内の悪態まで、言わなくてもいいことを山の様に並べてしゅべってしまったりする。
  悪口を言っているときは会話に熱が入り、口角泡を飛ばす状態になることが多く、ふと気がつくと、実情よりかなり飛躍した会話になっていることがあるものです。
  「隣の娘は、浴衣を着て自転車に乗るようなアバズレだから・・・」と言っている人がいたが、浴衣で自転車に乗るのは陽気で活発なお嬢さんなのに、物事を斜めからみる性格が問題の様にも思うのです。
中傷合戦
  商店街で「向かいの魚やは、猫が箱をひっくり返して地面に落ちたサンマを、簡単に水をかけただけで並べて売っちまう!」と教えてくれた人がいました。
  そして「冷凍物ばっかり並べて、あれじゃ〜スーパーに勝てッこないッ!」と手厳しい。こういうことを言う人は、誰、彼なく喋るから商店街で買い物をしているお客さんの耳にも当然聞こえます。
  例えば、魚やさんの悪口を聞いたお客さんは「近所の人が悪口を言うくらいだから、品物が悪いのは本当だろう」とその魚やさんで物を買う事が少なくなりますので、そのマイナスの影響は計り知れません。
  仮に、魚屋さんの悪口を言えば、魚屋さんだって山ほどに言い分はあるから「向こうの洋品屋の親父は、売れ残って汚れた品物をクリーニング屋に出して、また店に並べて売っている」とお客さんに告げ口をするのです。ですから、近所の悪口を言えば、その数倍は自分の所の悪口を言われていることでしょう。
  俗に『人の口に戸は立てられぬ』とも『噂は蜜の味!』と申しますから、悪口を聞いたお客さんは、家族を始めとして友人・知人に触れ回り、噂は際限無く広がっていきます。
  そうでなくても衰退して悩む商店街が、隣の弱点を言い合って、結果、お互いに足の引っ張り合いをしてお客さんを減らしているのに誰も気がつかないのが悲しいですねぇ。
  「私の所の悪口を言われていることは分かっていても、近所の事だから一応は挨拶しているけれど、腹の中は煮え繰り返っているから口先だけのお付き合いにしている・・・」のが現状なのでしょうか。
  人間は悪口を話す度に自分の品格の無さをさらけ出しているのですから、御近所の悪口は控えめにして、お客さんから見て、和気藹々の商店街を目指したいものじゃ〜ありませんか。
例  外
  生鮮品を扱う商売は難しく、新鮮な内に売切れればいいが何時もとはいかず、『先月仕入れた時は、新鮮だった!』というような物を売っているお店も時々見かけます。
  先日「向かいの果物屋は、店先に黒いバナナを皿に乗せて売っているが、『あれッ!。新種かな!?』と思ったら、売れ残りの古い物だった!」と言われて果物屋さんを見ると、真っ黒なバナナの隣に崩れた葡萄としなびた梨が並んでいて『お勤め品』と書いてあったが、これでは陰口を言われても仕方ない。
  売れる見込みの無い『真っ黒なバナナ』を、一山50円で並べて信用をなくすなら、そうなる前に売さばくか処分する工夫が肝心でしょう。だいたい『お勤め品』は果物やさんには似合わない単語です。
  しかし、言うは易く行うは難しとか申すように、なかなか思うようには行かないのが商売です。でも、ご近所から陰口を言われないような努力は続けていきたいと思うのですが、・・・如何でしょうか?。
陰 口 に
  『私も参加!』と
      閑 古 鳥


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