平成11年10月19日
手 薬 煉
  「今年の夏は長かったし、時々雷雨の洗礼などもあって『本格的な夏を楽しむ事ができた!』」と真夏が大好きと言う友人の弁ですが、私はその話しを聞くだけでうんざりです。
  暑い夏にビールの商戦はホットに繰り広げられ、有名なタレントを使って莫大な宣伝費を使っても十分に利益が出たそうですが、例年なら宣伝の活発だった海外旅行のコマーシャルは減ったように思いました。
  今年の猛暑と夕立に辛い思いをしたのは、何と言っても飲食店。暑さに参ったお客さんが家の中に閉じこもり、ほんの僅かな人通りを呼びこもうと必死でしたが、何処のお店も閑古鳥だったそうです。
  そして夕立、夕涼みのお客さんをあてにして3時頃から材料を仕込み、準備万端てぐすね引いて待っている所に夕立ちが見舞うと、お客さんは家から一歩も出ずに残り物を食べて我慢をしていたのですから、飲食店の夏の収支が厳しかったのもうなづけます。
  持ち返りの寿司やなどは、折り詰めにして店頭に並べそれが全部売れ残る。一般家庭なら、昨日のご飯が少し黄ばんでも気にしないで食べますが、商売となればそれも許されません。
  当然、売れ残ったマグロをはがして明日売るわけにもいきません。シャリもネタも全部処分をしなければならず、信用問題ですから、作って捨てる2度手間にゴミ捨て料。溜め息をつきながらの作業になる様です。
持帰り食品
  ここ数年、あちこちの商店街に持ち返りのお惣菜のチェーン店が増えているようです。思えば、核家族化で小人数の家庭が増え、少しばかりの量を煮ても美味しくないのであの商売が成り立つのでしょう。
  友人と話している時に「お惣菜の店で買う事ある?」と質問されました。我が家でも急ぐ時などには買う事も有りますので「時々買うけれど、便利だよねぇ」と答えます。
  「で、どうしたの?。何かあったの?」と聞くと「実は、近所のお惣菜の店で買った肉じゃがが傷んでいたッ!」という。「3種類のおかずの詰め合わせパックを買って家に帰り、開けたら臭いんだよ」と。
  「でも、買って来たばかりだからと、息子がじゃが芋を口に入れたとたんに吐き出した。とてもじゃ〜ねぇが臭くて食えたもんじゃ〜ねぇってんで、腹が立ったから買った店に電話をしたわけよッ」と。
  「30分ばかりしたら、店員が謝りに来て、『確かに饐(ス)えています。お詫びに私が食べます』って食べようとするから『そんなことをしなくても、今後気をつければ良いから』と言ったら、肉じゃがの代金とお詫びの水羊羹を置いて帰っていった」と言います。
  「『お詫びに私が食べます』ってのは、トラブルの場合のマニアルに入っているのかもしれないけど、びっくりするよねぇ。平謝りで実に丁寧な応対だった!」というから、「中には、怖いお客さんがいて『お前が食って見ろッ!』てな事を言われるのかも知れないしねぇ」と。
  もし、友人が保健所にでも通報すれば、水羊羹のお詫び程度で済むはずが無く、数日間の営業停止も有り得る状況だったと思いますが、商品を山の様に並べなければお客さんの買う動機がおきず、残った物を翌日に売ればトラブルが発生する。食品を扱うのもなかなかに難しい商売ですねぇ。
  名の売れたコンビニなら、本部の厳しい指導で、時間を経過した食材は廃棄処分が徹底していますから安心ですが、お惣菜のお店で買う場合は、大皿の中の煮物にしても、追加、追加と盛り上げたら、一番下のほうはかなり古いかも知れません。
 『食欲の秋』ですが、健康の為、ご購入の際には腹いっぱいの毒見をしてから買うように致しましょう。
夕暮れ時
 つい喉の鳴る
   食 の 秋  


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