平成11年2月16日
たこ焼き
  最近『たこ焼き』が大ブームです。東急線の自由ヶ丘駅の正面口を出て、右手のガードをくぐって少し行くと、左側のお店の前に、土曜や日曜日には老若男女入り混じってかなりの行列ができています。
  その行列は、『たこ焼き』を売っている店に並ぶ人達なのですが、寒風をものともせずに並ぶからには理由があるはずです。行列があると好奇心殿が黙っていません。
  人間の行列が出来るときには、@超安い買い物が出来るとき。A只で物が貰えるとき。B当たる確率が高いと言われる宝くじの売り場。C火事か交通事故の現場。Dライブや宗教関係などでしょうか。
  他に、Eそのお店でしか手に入らないものを売っている。という場合にも行列が出来ます。私は、好奇心は旺盛ですが、ご覧になってお分かりの様に上品ですから、あまり行列には並びたくないのです。でも、好奇心が上品を上回ったときに気がつくと行列の中にいるのです。
  持ちかえり専門のそのお店の行列で、ざっと数えて私は25人目。前後には、若いカップルや女子高生、お母さんからおじいちゃんまで様々であり、たこ焼きの購買層の広さに感心する事しきりです。
  陽当りが無く、冷たい風が吹きすさぶ真冬の路地で、ダウンジャンバーに身を固めて並ぶこと30分。背中に寒気を感じながら、やっとたこ焼きを焼いている若者が見えるガラスの前にたどり着きました。
たこ揚げ
  ガラスの前に到達したとはいえ、まだ買う順番が来たわけではありません。ガラスの向こうを覗くと、3人の若い男性がたこ焼きを焼いている様子が良く見えます。
  そのたこ焼きを焼く手元を見て驚いた、鉄板の丸い窪みのたこ焼きが入る穴に、何と、1センチほど油が溜まっているではありませんか。
  普通のたこ焼きは、焼く時にすりこ木の様な棒の先の布切れに油を付け、鉄板にこすって湿らせますが、そのお店では、湿らせるのではなく油を溜めた中で焼いていたのです。
  ですから、『たこ焼き』ではなく『たこ揚げ』ということになります。見た目も『コロッケ』のような色であり、世間のたこ焼とは一線を画し差別化を計っている事がうかがえます。
  並び始めてから35分経って、やっと私の番になり『二つ!』というと『840円です。30分以内に召し上がりますか?!』と質問されましたが、上品な街、自由が丘で『何時食べたってこっちの勝手じゃ〜ねぇか!』とは言えません。それにしても、たこ焼やで時間を聞かれたのは始めてです。
  『いやッ、1時間くらい後です』と言うと『じゃ〜、たれを別に入れておきます』と。今まで、何処のたこ焼でも、黙って勝手にたれを塗りたくっていたのに、このお店は、またもライバルに『差別化!』です。
  たこ焼を受け取って帰ろうとすると『美味しく召し上がれますように!』と普通の商人の『有難うございます』とは全然違うフレーズで個性を強調し、またも『差別化!』。
  2軒ほど離れた所にあるハンバーガーショップに入り、一番奥の席に座ってたこ焼の味見ですが、何と言っても油で揚げているから冷めにくく『ほッ、ほッ!』と濃い目の醤油味でタレが無くても美味しいのです。ま、ほとんどの料理は『脂肪分が多く』『塩分が濃い』と美味しく感じるという両刃の剣です。ご注意を。
  目黒のお不動さまの縁日に出る『たこ焼』は超大きいので人気がありますが、人気の秘密はもうひとつ、お客が並んでいるところに、大きな『とろろ芋』を置いて、如何にも『美味しいとろろ芋が沢山入ってますよッ!』と演出して、隣の焼きそばやお好み焼きとの差別化に成功です。
たこ焼に
 並んで風邪の
    好 奇 心


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