「春眠、暁を覚えず・・!」とか申しますが、花粉症の薬を飲んでいる影響もあって、運転をしていてもつい眠気を感じるこの頃、ふと、思い出した昔話しなど書いて見ましょう。 |
この話しは、「バブルは弾ける運命にある」と国民の誰もが気づかなかった頃の体験で、「春眠」というよりは、「爆睡!」をした人もいたのどかな春の昼下がりの出来事でした。 |
私は、「ロイヤルチェーン」という同業者の勉強会に入っており、その会は毎月、第2土曜の午後に新宿の文化センターの会議室を借りて月例会を行っておりました。(現在は、日本興亜損保の会議室) |
文化センターの会議室は何部屋もありますが、私たちが何時も利用していたのは、25人が座れるドーナツ状の円卓で、会員20名の会議場としてはゆったりしていました。 |
円卓は、マホガニー調の立派なものであり、ソファーは肘掛がついた上にクッションも豪華な作りの快適な座り心地でしたから、何となく偉くなったような雰囲気の場だったのです。 |
バブル華やかりしある年の春、「ご参考になる情報を提供したい・・」というコンサルタントS先生からの申し出があり、「1時間20分なら・・・」と講演をして頂くことになりました。 |
実は、私はその先生の実力を知っていましたから、内心は反対だったのですが、紹介してくれた人の義理で断るわけにも行かず、午後2時からの月例会は講師のお話からスタートしたのです。 |
熟 睡 |
先生のお話は、「業界の展望」から始まって、「業際の見極め・・」などと参考になるテーマの筈なのですが、ユーモアやジェスチャーも無い先生の口ごもった単調な話し方が良くありません。 |
春の繁忙期で疲れ気味の面々が、午後のやわらかな日差しを浴びている会議室で、ふかふかのソファーに座っている上に、パンチの無い単調な話し方で小難しいテーマを聞かされているわけですから、勉強会というよりも「催眠術!」を掛けられているような状態になっていきます。 |
一生懸命に眼を開けようとしても、つい、上と下のまぶたが仲良くなってくるのは避けられず、真剣に聞いている様子を先生に伝えるために、下を向き、両手を前で組んでうなづいてみせるのがやっとです。 |
時折、周りの様子を伺うと、ほとんどの人が手を組んで下を向いていますが、中には、ソファーに背を持たせた仲間からイビキも聞こえてくる始末ですから、勉強会とは程遠い状態になっていきます。 |
運良く私は、円卓の席順が先生から2人目でしたから、時折、眼を開けていれば先生には居眠りが分かりにくい場所だったのですが、1人だけお気の毒な仲間が居たのです。 |
それは、円卓の先生の真正面に座った会計担当のH氏で、あくびを我慢するために口を押さえ、眼をこすったり手の平をつねったり、ほっぺを叩いたりして眠気が襲ってくるのを我慢しているのです。 |
会議の後で、「何たって、真正面なんだもの・・・、生涯でこんなに辛い思いをしたことは無かった・、たった1時間20分なのに・・!」というH氏の嘆きには実感がこもっていました。 |
「いい、昼寝が出来た・・!」という豪傑も居た勉強会でしたから、「少し講演料が高すぎるよなぁ、催眠術の勉強会なら安かったかもしれない・・!」というH氏の意見に、「えっ!、無理に押しかけたあの程度の話しに講演料を払うの・・!」と思わず口に出た私たちでした。 |
それにしても、全員が先生の話を聞いておらず、あくびをしながら眠っている状況の中で、自分のペースで淡々と1時間20分も話し続ける度胸は、「並の神経ではない!」ことは確かでしょう。 |
「方々から講演の依頼がある・・」という先生は、「自分がどのように評価されているのか分からないのだろうか?。催眠術の先生になれば、大成功かも・・」と夢心地の中で私も感じていた春の珍事でした。 |