平成15年3月4日
お 愛 想
  先輩の経営する会社を訪問して、コーヒーをご馳走になっているときに、「近所の噂では、この先の角にあるクリーニング屋の経営が思わしくないらしい・・・」と先輩が話し始めました。
  「あそこは、親の代には結構流行っていたんだが、1年前に息子夫婦の経営になってから急激にお客が減ったようだ、挨拶もろくにしないから、不景気だけが原因ではないと思うよ・・・」と話は続くのです。
  すると、脇で仕事をしていた事務の女性が、「私もあそこを利用していたんですが、最近は行くのが嫌になって、たまにしか・・・」という。
  ですから、「利用しなくなったのは、息子の仕事が下手なんですか?」と私が質問すると、「仕上げは、もともと息子さんがやってたから関係ないんですよ・・・」となります。
褒 め る
  「お母さんの時には、『うわーっ、素敵なブラウス!』とか、『上品なセーターねぇ!』と褒めてくれたのに、息子夫婦になってからは、事務的に受け取るだけで愛想がまったく無いんです」という。
  「あまり褒められると馬鹿にされたような気分になるけれど、あそこのお母さんは、にこにこしながら自然に出てくる褒め言葉だったから、つい、嬉しくなって・・・」と話は続きます。
  「すこし奮発して買ったブランド物のスーツを着て町に出かけても、誰も褒めてくれるわけではないし、友達と出かけても、せいぜい、『あらっ、買ったの・』程度しか言ってくれないでしょ・・」というから、「まぁ、褒めてくれる友達は少ないでしょうねぇ」と私も納得するのです。
  「それで、私としては高い買い物だっただけに、寂しいわけですよ、だから、クリーニングに持っていって、あのお店のお母さんに褒めていただくのが楽しみだった・・!」となります。
  「ごく自然に褒めてくれるのが嬉しいのよねぇ。『あら〜〜、素敵なセーター・・!』のお母さんの言葉が、まだ耳に残っているようで・・・」となれば、褒めた効果は抜群だったわけです。
  先輩も、「あそこのお母さんは、俺が行ったときにも、『まぁ、顔色が良くて、何か良いことでもあったんですか?』なんてお世辞を言うんだが、まぁ、誰だって、お世辞と分かっていても褒められて悪い気はしないからねぇ」といいますから、歳をとっても褒められれば嬉しいものなのです。
無 愛 想
  「そこにいくと、あの若夫婦は、『笑うと損だっ!』てな顔をしているんだもの、馬鹿らしいからこっちも、つい、仏頂面で店に入るようになるわけで、『以心伝心』ってやつだよねぇ・・」と先輩です。
  「『不景気面』ってのがあって、何が面白くないのか仏頂面で店先に突っ立って『上客かどうかとお客の値踏みをするような目』で睨んでいれば、お客の方だって、そんな顔は見たくないから行かなくなるわけで、ま、悪循環を自分で作っているわけだっ!」といわれると、そういう感じのお店ってありますよねぇ。
  「何屋に限らず不景気だが、あそこは今までは繁盛していたんだから、親の良いところを真似していれば繁盛するはずなんだが・・、ま、俺としても、よその事を言っている立場でも無いが・・・」と。
  事務の女性も、「愛想が悪いだけじゃなくて、ガラスも磨かず、掃除もしないから店の中が汚らしいし、お嫁さんは、私の大事な品物を鷲づかみにするのよっ!・・、だから、あの店には滅多に行かなくなった・・・」と聞くと、只で教えていただいた教訓であり、『会う人、皆、師匠』と感じた午後のひと時でした。
  「値踏み」とは、見て値段を付けることで、「値踏みの目」とは、『疑いの意味』も加わり、上目遣いで顔色を伺いながら、お客さんをランク付けしているような見方を言うのでしょう。
  イラクや北朝鮮の武器が問題になっていますが、商人にとっての武器は、『心のこもった接客』に尽きると思うのです。武器を磨き、積極的にアピールすることを心がけましょう。明日の貴方の幸せの為に。
 今日もまた
  お客を減らす
    値踏みの目


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