平成15年12月16
焼き鳥屋
  友人と「軽く、いっぱい飲もうか・・・」と話がまとまって焼き鳥屋の暖簾をくぐりました。
  友人の知っているお店ですから、「よおっ!」と手を挙げて挨拶を交わし、マスターのご夫婦とも気軽な会話をしながら少し汚れてべた付くカウンターの席に陣取ります。
  ビールで乾杯をしながら店内を見渡すと、15人ほどで満席になる店にしては不釣合いな大鍋がマスターの後ろの棚の上のほうに乗せて有ります。
  ですから、「その鍋は、お宅のお店には少し大きすぎないかねぇ!」と問いかけますと、「そうなんですよっ、注文したら、持ってきたのが大きすぎたんですが、断るわけにいかなくなって・・・!」という。
  大きすぎるナベなら、使い始める前に取り替えるのが普通と思うのですが、おおらかというか人のよさを感じるマスターの脇にはお似合いの奥さんが笑っています。
  焼き鳥は一本100程度の安いお店なのに『炭火』を使っているので、「炭は、何処のものを・・?」と聞くと、「今は、中国産の物なんですが、在庫が少なくなって・・・」という。
  「中国からの輸入の炭は、大気汚染などのトラブルから輸入が出来なくなってしまったために、炭は便乗値上げしているんですよっ」というので、「今のは、洒落ですか?」と聞きます。
  すると、「えっ、何ですか?」というので、「備長炭を値上げするから、便乗値上げと洒落たのかと思ったのに・・・」と言ったら、「気がつきませんでした・・!」となる。
隠 し 味
  「マスター、後ろの棚においてある『本出し』の箱は、別な入れ物に入れ替えて、お客に隠し味を見せないほうが良いと思うがねぇ!」と私のチェックは続きます。
  すると、「私たちのように安い店では、鰹節や昆布から出汁を取っていたんでは、手間が掛かるから割が合わないんですよッ、だから同業者はほとんどこれを使っているんです・・」となるわけです。
  「ま、それにしても、調味料のメーカーの大箱をそのまま見せちゃまずいでしょう」と、普段は無口な私もアルコールが入っているので、余計なお節介はとどまるところ無く続いていきます。
  「玉子が3パックもあるが、全部、安いプラスチックに入ったままになっているでしょう。それって、少し高級な紙のケースに入った卵を一回買ってきて、それに入れ替えておけば体裁が良いのに・・」となる。
味  見
  「最後は、小さめな焼きオニギリにしようか・・」と注文すると、中国産の備長炭?の上に乗せた網に、奥さんが握ったオニギリを二つ乗せてマスターは焼き始めます。
  オニギリを焼きながら醤油を刷毛で塗り始めたので、「あまりしょっぱくしないでねっ」と言いながら見ていると、マスターは人差し指に二粒ばかりついた飯粒を口に持っていったのです。
  すかさず、「マスター、今、二粒食べたのは、味見したの?」と聞くと、「えっ、何かしましたか?」と自分が飯粒を口に持っていったのを気づいていないのです。
  飲食業を営むものとして恥じるべき行為なのに、癖になっていて無意識に口に持っていってしまうのに気がつかないのですから、何とも幸せな商売をしているといえるでしょう。
  それなりにお客さんが来ている焼き鳥屋のマスターのお陰で、「私も、気をつけなければ・・・・!」と商売のコツを教えていただいたのですから、ま、「飲み代はかなり安かった・・・ (⌒▽⌒) ・」のかも・・!。
本出しを
 丸出しにして
    底が知れ


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