平成15年11月25日
蕎麦続報
  先日、琵琶湖の側の同業者の父親、Aさんの作ってくれた美味しいおそばの話を書いたら、興味を持った方から質問が来ましたので、うろ覚えの中から続報を書いて見ます。
  お蕎麦を作ってくださったAさんは、5年前から本格的な蕎麦を打つために研究を繰り返し、そば粉の産地から付け汁の返しまで徹底的に工夫を繰り返しておられるのです。
  情報収集も怠り無く、蕎麦に関する専門書も数多く揃っていて、そば粉は北海道と新潟、長野と茨城の物などをブレンドし、季節によって使い分けているのですから凄いでしょう。
  蕎麦をこねる大きな鉢は、つやの有るケヤキの一枚板で作られていて、蕎麦を打つ棒は8本も揃えてあるのですから、本物を追求するというのは大変な努力とそれなりの資本もかかるようです。
  三角形の蕎麦の実の中は、おおよそ三段階に分かれますが、殻を外した一番外側は黒っぽくなっていて、『蕎麦は黒いもの』というのは、この部分の粉を使って打ったものです。
  次に、三角の蕎麦の実の外側を削った中間の部分の粉は、蕎麦粉としては少し白っぽくなっていて、味と香りが上品で蕎麦を打つのに一番適している部分と言えるでしょう。
  蕎麦の実の芯の部分は、真っ白で粘りが少なく、蕎麦を棒で伸ばすときにくっ付かない様に粉をまぶす時に使います。Aさんの場合、蕎麦粉が9割に小麦粉を1割と大和芋をつなぎに使っていました。
  蕎麦粉を10割で打つと千切れたり「ぼそぼそ」して食べにくい状態になるので、長野の蕎麦好きは『蕎麦がき』といって、お椀に蕎麦粉を入れてかき回しながらお湯で溶いて生醤油などを掛けて食べます。
  街の蕎麦屋さんでも、蕎麦粉は7割か8割で、残りは小麦粉を混ぜるお店がほとんどであり、駅の立ち食いの場合には、蕎麦粉が2割で小麦が8割といわれているほどです。
  前回、「噛みしめつ 心に残る 蕎麦の味」と川柳を書いたら、「蕎麦は、噛まないで喉越しを楽しむものでは・・!」と言った方が居られましたが、実際には、3回から4回は噛みしめたほうが味わいが深くなりますし、香りも楽しめるので意地を張らずにお試し下さい。
  蕎麦は、包丁の切れ味で食感が変わります。切れ味の悪い包丁できった場合には、蕎麦の切り口が乱れるために茹でる間に蕎麦がちぎれる事が多く、切り口が鋭角なほど喉越しは美味しく感じるものなのです。
  「蕎麦は、太さが不ぞろいでは茹でる時間が定まらない」と考えるAさんは、蕎麦を1.5ミリの厚さに平らに伸ばしてから、包丁で1.5ミリに切り揃えるので、長さが20aほどの見事なお蕎麦が仕上がります。
  それを熱湯で20秒間茹でて網ですくうと、都合25秒ほど茹でることになり、それを冷水で洗って引きしめます。太さが異なる『乱切り田舎蕎麦』などは部分的に茹ですぎて歯ごたえが不満に成ります。
  Aさんは、打ち立ての生の蕎麦をクーラーボックスに入れて友人達に届けますが「茹で方で失敗をしないように、特製の網と秒単位で表示されるタイマーを100軒も差し上げている!」というのですから本格的です。
猿といえば、やはり孫悟空でしょう。
今回のイラストは、孫悟空が
『悟空上仕上げ』の品物を三蔵法師に
お渡ししているところです。




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