平成14年5月7日
見ている
  昼食などを食べにラーメン屋に入ったときに、カウンターに座った私には楽しみがあります。
  その楽しみとは、料理を注文してから出来上がって来るまでの料理人が行う行動を見ていることであり、たった5分間ほどですが、料理人によって作業の動作の違いがあるのが嬉しいのです。
  注文を受けた料理人は、まず最初に麺を鍋に投げ入れます。そして、菜ばしで麺をかき回しながら脇ではスープの準備を始めることになります。
  濃い目のたれを小さなひしゃくで丼に入れて、麺の茹だるタイミングを計りながら、次にひしゃくでスープを加えますが、プロですから塩加減は分かっているので味見はしません。
  そして、茹だった麺をスープが入った丼に入れてから、シナチク、チャーシュー、刻みねぎと入れていくわけですが、手際のよい人と未熟な人がいるのは一目で分かるものです。
  ベテランになると、『お客が見ている!』と分かっていますから、知らん振りをしながらも見せ場を作っていて、茹で上がった麺のお湯を切る動作や、シナチクを入れる手付きにも演出を凝らしているものです。
  その一連の作業を見ていて、『スープの色具合は完璧だっ!』とか、『麺を茹で過ぎていないか!?』などと私も気がきではありませんが、流れるようにスムースな料理人の場合には心配は要りません。
  そして「今日は、笑顔を見せながら、根性を入れて作ってくれる腕のいい料理人に出会って良かった!」と食事が楽しくなり、そのお店にもう一度通いたくなるのは自然の流れでしょう。
見られている
  飲食店とはかなり雰囲気の異なる、クリーニング店に来るお客さんはどう見ているでしょうか。
  カウンター脇で、お店の人とお客さんとの双方の行動を観察していると、実に良く分かるお客さんの心理状態があって、それが『信頼!』につながるポイントであることが分かります。
  お客さんの一連の行動とは、まず、自分がクリーニングをするために持ってきた品物を、店の人がどのように扱うかを厳しくチェックしていますが、チェックの素振りは見せないものです。
  まず、@クリーニングに持ってきた品物をどのように持ち、どのように点検をしたか。Aタッグは、どの位置にどのように付けたか。Bその品物を、何処にどのように置いたか。Cその後はどうなるのか。D自分の仕上がった品物は、何処にどのように保管してあったか。Eそれをどのように扱って自分に渡してくれたか。
  このようなチェックを、ほとんどのお客さんがしているわけですから、乱暴な取り扱いをしていれば、 「駄目な店!」のレッテルを貼られてしまうことは間違いないでしょう。
  また、F店内は、整理整頓されているか。Gハンガーや棚の品物は整然となっているか。H掃除は行き届いているか。I明るい雰囲気があるか。Jそして、だらしなさのチェックも同時進行で行っているのです。
  お店の受付は、お客さんから見つめられる『アイドル!!』なのですから、何時でも、K品が良く。L笑顔で応対ができて。M明るい演出をする心構えが出来ていることが大切でしょう。
  おそらく、この文章をご覧になっている貴方も、お出掛けなどの時には「乱暴なパーマやだわっ!」とか、「態度の悪いコンビニ!!」などと、外部には厳しいチェックをしているのが現実でしょうねぇ。
  照明が暗く髪がぼさぼさで、服装がだらしなく、サンダル履きで無愛想の応対をしていながら、「この地域には、お洒落なお客さんが居ないから、高級な洋服が出ないっ!」と言っても、出るはずがないんです。
  ですから、『何時も見られている!』、ことを自覚して、見つめられても恥ずかしくないような状態にしていることが、商人の一番大切なことと思うのですが、如何でしょうか。  
 そして、何よりも怖いのは、「だらしないわねぇ!」と文句を言わずに他のお店に変わるお客さんです。
  見回せば
     見たくなくても
        見えるボロ


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