平成13年5月15日
雰 囲 気
  良い雰囲気を保つのが繁盛の一番大切な条件ですが、その雰囲気を作るのは簡単ではありません。
  私は出かけることが多いので、昼の食事はほとんど外食になります。先日も昼食時に、『お昼のサービス850円』と書いたポスターを見て小さな寿司屋に入りました。
  のれんをくぐると10人ほど座れる店内に先客が一人、みるからに暇そうな寿司屋ですが、のれんをくぐってから引き返すのもみっともないので、まずは、カウンター席に座りサービスランチを注文しました。
  店に入るときに、「らっしゃい」の声が聞こえたような聞こえなかったような、それでも店主が『笹の葉』を私の前に置いたところを見ると、サービスの寿司といえども『笹』は本格的で気を使っているようです。
  薬品の匂いの強いお絞りで手を拭いてから、前に置かれた二つの寿司の一つを食べたらワサビが強すぎるので、次からはワサビを半分ほど取り除いて笹の葉の上においてから食べることにします。
  そして、チラッと先客を見たらお椀が付いている。それに気付いたのか店主が「何をもたもたしてんだ!」と怒鳴ると、奥さんらしき人が、塗りの剥げかかったお椀で味噌汁を持ってきた。
  「何時もの事で、分かってんだろうにッ!」と亭主が再び怒鳴ると、おどおどした奥さんらしき人は、一言の挨拶もなしにお椀を置いて奥に逃げ込みます。
  そうこうしている内に、お寿司は一通り握り終わって、最後のカッパ巻きが出てきました。私は、最初の握りを食べてから、ワサビを少しずつ脇によけてワサビの小山があるのですから、普通の板前なら、すぐに気付いてワサビの量を減らしそうなものですが、まったく自分流を変えないのには呆れます。
  その間に、店頭の持ち帰りのお客が来ると、またも奥さんに向かって「客だって言ってんだろう・・」の怒鳴り声、ま、夫婦喧嘩というよりも、短気な亭主にのろまな奥さんの組み合わせでは困りものです。
  寿司屋を出るときに、「また、どうぞ!」と仏頂面で言われたが、二度と私が行く事はないでしょう。気持ちよくお帰り頂いて、再度のご利用を頂くのが商売繁盛の大事な条件なんですがねぇ。
中華レストラン
  四ツ谷に出かけた折、駅の改札口を左に曲ったところにある中華レストランに入る事にしました。店内に入ると、「いらっちゃいまて!」と中国系の4人の女性が並んでお客を待ちうけています。
  そして、私は席に案内されましたが、何と、私の席はその4人の女性の真正面ではありませんか。「他の席は?」と聞くと、「これから昼で混雑しますから、お一人の方はこちらで・・」と片言でいう。
  仕方なしに座って定食を頼むと、暫くして運ばれてきます。そして、私が食べようとして丼を持ち上げると、全員が私の方を向いているから実に食べにくい。
  おかずを取るのもスープを飲むのも、全部看視されているようで恥ずかしくって困っていると、彼女達は「くすくす・・・」と笑いながら私の方を見るところを察するに、「次に食べるのは『ザーサイ』よッ!」とか言いあっている様にも感じるのです。
  『そっちがそうなら、こっちにも考えがある!』とコップの水を一気に飲み干して水を要求したら、4人が一緒にこちらに向かってきた。配列を乱せばこっちの勝ちとほくそえんだが、さて、何を勝ったのか。
  食べ終わる頃には他のお客も入って来て、緊張の状態から解放されたが、食べているお客の正面を複数の店員が見ている営業方法は如何なものでしょうか。商売の秘訣は、『見ているようで、見ていないような、でも、呼ばれればズグに応対できる気配りのある接客』が理想のように感じた昼の食事風景でした。
  凝視され
    もう金輪際
       来ない客


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