平成13年3月6日
カーテン
  お客様から厚手のカーテンをお預かりして、それを洗ったらトラブルが発生してしまいました。クリーニングに事故はつき物とは申せ、カーテンという難物について少し書いてみたいと思います。
  今回のトラブルのカーテンは、厚い表生地に薄い裏地を袋状に縫ってあり、縫いこんで見えない生地の真中に、薄いゴム状の物が挟み込んであるというやっかいな品物でした。
  このカーテンは、雨戸の無い洋間を真っ暗にするための『暗幕(アンマク)カーテン』であり、縫い込んである部分が見えないために、『事故にならなければ良いが!』と心配しながらのクリーニングでした。
  カーテンは一度に沢山の枚数が出るものですから、まず試しに、一枚だけドライクリーニングで洗ってみたら、心配したとおりに中心のゴム引きの部分がボロボロに破れてしまったのです。
  ですから、次には水洗いでテストしたのですが、これも同じような状況になってしまってのですから、失敗した二枚のカーテンを見つめながら溜め息がでます。
難  物
  通常、下着やワイシャツなら毎日、その他の衣類でも時々洗うのに、カーテンは、24時間部屋に掛けてあるだけでなく、夏物と冬物の区別も無いために10年〜20年も掛けたままの場合があります。
  その上、強烈な南や西の強い日差しにさらされたり、タバコのヤニや焼肉の煙などにも耐え、湿気の多い場所などの過酷な状態で窓に掛けっぱなしなのですから堪りません。
  長い年月を西日に痛めつけられた生地は、『チョット指で引っ張った』だけで破れますし、洗えば、日に当たった部分は染めが褪めている上に、生地がもろくなっているので大きく破れる事もあるのです。
  その上カーテンの生地には、クリーニングで扱い難い事ではトップクラスの生地の『レーヨン』が多いのですから、色が褪めたり光沢がなくなったり風合いの変化も激しいのです。
  弁償になるとまた大変で、たった一枚失敗しても何枚も同じ柄のものがセットになっている為に、全部の品物の買い替えになる事も困るのです。
  そして、同じ柄のカーテン地の製造はせいぜい3年程度ですから、10年も20年も昔の製品は、製造元に同じ物が無いので破れてしまった一枚だけを買う事が出来ません。
  そこで、カーテンを大量に取り扱っている知人に相談したら、「基本的に、カーテンは洗う事を前提として扱ってはいないので『汚れと日焼けの酷い物』は預からないほうが賢明です」と教わりました。
  尚、最近のカーテンの裏地やコーティングには、@フィルムコート。Aウレタン性。Bラバー。Cゴム引き。D樹皮コーティング等が使われているそうで、「今後は、ますます複雑な構成になるでしょう」という。
  そして、「コーティング等の品物がクリーニングに出た場合は、その部分に弾力が無くヒビが入っていたら、お客さんに『駄目になっても責任を取れません』と伝えた方が無難です」とのことでした。
後 日 談
  冒頭の事件のカーテンを、製造メーカーに『修理できないでしょうか?』と送ったら、暫くしてから『出来ません』と返事がありましたが、もたもたしている間にお客さんは新しい物を買ってしまいました。
  やむを得ず、『長い間使ったカーテンですから、弁償は半額にして・・』とお客さんとの交渉はまとまり25万円の半分を支払って一段落、次に、保険会社に請求するために破れたカーテンが必要になりました。
  そこで、カーテンのメーカーに「先日のカーテンを返してください」と連絡したら、「方々探したが、あのカーテンが見つからないのです」と事件はドラマチックになっていきます。
  結局、カーテンを無くしたメーカーが弁償金を支払ってくれる事になり、ま、何とも奇妙な結末となりましたが、それでも、幸せな解決になったと考えるべきなんでしょうかねぇ。
  カーテンを洗うと『縮む』事がありますが、仮に、高さ3bのカーテンが3%縮むと9aも短くなってしまいますので、窓にかけると下に隙間が出来ます。ジュータンも同様で、生地によって縮むこともあります。
  カーテンをコーナーで縛る紐に、アフリカの動物の尻尾を使う高額品もありますが、高級なのか?。
  うっかりしましたが、我が家のカーテンも長年に渡って文句も言わず頑張っています。・・・感謝。
  カーテンに
    喜怒哀楽を
     見つめられ


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