平成13年2月20日
駅の売店
  自由が丘の駅で電車を待っていたら、急に大声で怒鳴る若者がいたのでビックリです。
  「電車に乗り遅れたら責任を取れ!、ばばあッ!」と若者に怒鳴られているのは、売店の年配の女性の販売員で、どうやら、領収書を書くのに時間がかかったために怒られているようです。
  領収書を貰うつもりなら少し早めに家を出ればいいものを、自分が間抜けなのに気付かず他人を怒鳴ってうっぷんを晴らされたらたまりません。
  その男は、周りの人達が自分に注目しているのに気付き、捨て台詞を残しながら走って前の車両に乗り込みました。少しは恥を知っているのでしょうか。お気の毒なのは販売員、悲しそうな目を今も思い出します。
KIOSK(キヨスク)
  殆どの駅の構内や改札口の側に小さな売店がありますが、今回は駅の売店のお話しです。  
  あの売店の名は、JRは『KIOSK(キヨスク)』で、東急は『ТOKS(トークス)』と呼んでいます。尚、JRの場合『キオスク』と読めますが、語呂がいいから『キヨスク』と言うのが正しい読み方だそうです。
  東京駅の構内を歩くとその広さに驚きますが、あの広い構内に、44箇所のキヨスク、12箇所のコンビニタイプ、お土産と弁当関係が15箇所、他に専門店が数店舗あるそうですからさすがに日本一の駅です。
  店に並ぶ物は、ガム、アメ、スナック菓子、タバコ、ライター、ジュース類、ビールにお酒におつまみ、弁当、ゆで卵、新聞、週刊誌、文庫本などの雑誌、フィルム、インスタントカメラ、電池、ハンカチ、ネクタイから香典袋まで、ミニコンビニと言えるくらい商品の種類は多いのですから管理は大変です。
  コンビニは、商品のバーコードをスキャナでなぞるだけでコンピュータが計算してくれるから、合計金額にお釣り銭までがモニターの画面に出て、お客さんと双方で確認できます。
  それが、駅の売店ではスキャナは有りませんし、値段の書いてない品物も多いので全部の金額を覚えなければなりません。例えば、値段が書いてないガムだけでも30種類を超すのですから簡単ではありません。
  大きな売店の場合、競馬新聞なども加えると、新聞だけでも40種類もあり、新聞の料金も各社ごとに違う上に、朝刊と夕刊でも料金が違うのですから覚えるのは大変でしょう。
  聞けば、『数十種類有るタバコの値段を覚えるだけでノイローゼ!』の売り子さんまで居るそうですが、暗算と受け渡しの素早さも要求されるわけですから、パニックになるのも分かるような気がします。
  販売員の一人は、「疲れたときには、お客さんが出した金額を信じて受け取る事にしている」と言っていた豪傑も居ますが、ラッシュの時にはその心境になるのもうなずける程の混雑状況です。
超  人
  常に、『イライラ、カリカリ』の急ぐお客さんばかりですから、のん気に座って応対できる状態ではありませんし、テキパキ素早く処理しながら万引きのチェックも出来なければ販売員失格です。
  ガムやアメは、一個売れるごとにストックの棚から追加をして、隙間から品物の山が崩れるのを防ぎ、配達員が新聞や週刊誌を持ってくると、それらを所定の位置に並べたり、新聞の束や箱単位で動かすジュースの重さに、腕や腰を痛めるスタッフも多いそうですし、売れ残った新聞等を梱包するのも重労働との事です。
  東急線の売店トークスでは、年中無休、朝6時から夜の9時半まで15時間30分が営業時間で、一人立ちの店員は8時間交代ですから、朝6時から午後2時迄と2時から閉店までの二交代の勤務になります。
  8時間の勤務をしていると、トイレや食事の問題が出てきますが、聞いてみたら『慣れると言う事は凄いもので、私は8時間はトイレを我慢できます』と言うのですから、人間は鍛えると超人になるものです。
  駅によってはトイレまでの距離が数百mもありますし、商品と現金を置いたままで長時間の留守は出来ず、トイレに行く場合は、新聞や週刊誌を仕舞い込みシャツターを閉めるので大ごとになります。
  そして、北風吹きすさぶ深夜の寒さは身体にこたえて、申し訳程度に足元だけ暖める電気ストーブでは役に立たず、ホカロンを身体中に巻きつけると言いますから見た目より楽ではないようです。
  時給ほど
    ホカロンの要る
      寒 の 夜


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