平成12年7月4日
短  気
  『短気は損気』とか申しますが、世の中には自分勝手な人が多くて困りますねぇ。
  梅雨の晴れ間に商店街を散歩していたら、三十代と思えるご夫婦が大声で喧嘩をしながら通り過ぎました。どうやら、奥さんの不満の度合いが大きいらしく、金切り声を上げながらご主人を攻め立てます。
  ご主人も言い返しているのですが、遠慮と恥ずかしさゆえか奥さんの方が圧倒的に優勢の様子でした。で、今回は、次元が低くなっていく日本人の寂しい精神状態のお話です。
横  暴
  電車に乗ったときに座席を確保することを意識するようになったのは、私も歳のせいでしょうか。
  先日も渋谷駅発の東横線の急行に乗って席を確保し、田園調布までたったの10分ほどの乗車時間ですが『ほっ!』と一安心で目をつむり座れた喜びをかみしめたのです。
  電車の発車するベルが鳴ったとき、私は強い力で肩を押され、「おじさん。どけよッ」と大声で言われて席を立つように命令されました。みれば、プロレスラーのような体格の若者が私の前に仁王立ちです。
  そして再度、人差し指で私に立ち上がるように指示します。突然の出来事でしたが、最近は若者の怖い事件が続発しているので私は素直に席を立ちました。
  結局、私を含めて三人の乗客がその男の指示のままに立ち上がり、男は、三人分の席を斜めに使って座り込み、腕組みをして周りを見渡しながら満足の表情です。
  私は肩を押され、つぶらな瞳を開けて立つまでの間に、@若者の命令を断ったらどうなるか?。A立ち向かったら勝てるか?。B負けたら怪我をするか?。C周りの人達は助けてくれるか?。D世間体は?。などの事を一瞬に判断し『下手に逆らわない方が大人の対処!』と耐えたのです。
  ま、生き馬の目を抜く東京ですから、凶暴な事件に発展しないとは言い切れず、こういう場合は逆らわないほうが賢明でしょう。私の対処は間違っていなかったとは思うのですが、席を立たされて、周りの人達に見つめられた私達三人は立っているのが辛かった。この状態を、『立場が無い!』と言うのでしょうか。
  おそらく、あの若者は精神面に悩みを抱えて生きているのでしょうが、やっと席を確保した私の楽しみを奪った罪は重く、彼は長年にわたり何らかの形で罪を償うことになるのでしょう。
逆 恨 み
  先日、中年の男性がお店にきて「妻に対する接客態度が許せない!」と怒り始めました。
  その男性の奥さんが前日にお店に見えたときに、お客さんが立て込んでいたために対応が遅れた事と、その日に奥さんが、財布にお金を入れ忘れたために料金を支払えず恥をかいた為の逆恨みです。
  そして、無理難題を店長に押し付けます。「申し訳ありませんでした」と丁寧に詫びても、その男性の怒りは治まらず、長時間の苦情を聞くことになってしまったのです。
  どうやらその男性は、奥さんに命令されて仕方なしにお店に来たようですが、女房の我侭を押えられず、店に出向いてうっぷんを晴らす男の意気地なさを思うとき私はとても悲しいのです。
  最近、世の中が殺伐としている事と、不況の収入減や会社の嫌な出来事を『商人や女性や部下など、弱い立場の者を怒鳴る事でうっぷんを晴らす卑怯者』が増えているのが実に残念です。
  他人を脅すことで自己満足をする人の次元の低さは、『単細胞。下品。ばか者』の部類であり、世の中が荒廃し、『思い遣り』を尊重した『日本人の美徳』が失われていく現状を考えるときに、私は、とても寂しい気持になるのですが、皆さんは如何思われますでしょうか。
  大酒が原因で奥さんに逃げられたA氏は、反省して酒を絶ち復縁。同じ状況のB氏はやけ酒の毎日です。
  ヘビースモーカーのC氏は、赤ちゃんの誕生を機に禁煙。『持って生まれた性格は直らない』とか申しますが、要は本人の気持ち次第であり、嫌われつづけるより好かれる人生のほうが楽しいと思うのですが。
 うっぷん
鬱 憤 を
 弱者で晴らす
    卑 怯 者


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