平成12年4月18日
行政指導
  東京の近郊都市で営業している親しい同業者A氏と話していたら、実に無駄と思える話題になった。もっとも、この話は以前から何度も聞いて、行政の無駄の馬鹿らしさに呆れている次第ですが。
  クリーニング業の場合、店舗の開店をするのに保健所の認可が必要です。従って、開店する数日前に保健所に行き、営業者の住所氏名や店舗の図面などを書き込んだ開設届けを提出します。
  東京都の場合には、カウンターの『受付と引渡しの区別の札』と『内部が清潔に保たれている』と判断されれば営業許可が下りるようですが、A氏の地域では、もう一つ、誠に不思議な条件が加わるのです。
  その条件とは、クリーニングで仕上がった品物の内、畳んである物は『ガラスなどの戸の付いた棚に入れる事』の決まりです。何も、仕上がってポリ袋に入った品物を戸棚に入れなくても良いと思うのですが、そこはお役所、『戸棚の無い店舗は駄目です。許可しません!』の一言で開店する事が出来ません。
  戸棚に品物を入れたのは、物資が乏しく、ポリ袋が高価な為に紙で包装していた40年も昔の保管方法であり、現在のように、全品をポリ袋で包装してあるものを戸のある棚に入れる必要など全くないのです。
  畳んだ品物は戸棚に入れる指導なのに、立体の品物は、戸の無いハンガー掛けを使用しても良いと言うのもおかしな話しで、戸棚を使わなければならない根拠に説得力がありません。
戸  棚
  保健所は、開店の認可のときには厳しくチェックをしますが、営業が始ってしまえば戸棚を使用していなくても営業停止などの罰則処置は致しません。
  罰則しない理由は、現状、開店後は誰も開け閉めが面倒になる戸棚を使っておらず『戸棚が無ければ営業停止!』の断を下せば、その地域の殆どの同業者は閉店することになってしまうからです。
  そこで、友人A氏の考えた作戦は、小さな茶ダンスを買い求め、開店するお店に設置して、開店の許可を受けた戸棚は次の店が開店するまで倉庫に仕舞っておく繰り返しです。
  そして、「一本の茶ダンスで、何十軒も開店したんだから、安い買物になった!」という状態ですから、改革の出来ない行政と、状況を判断できないお役人のために、実に無駄な作業が行われているのが情けない。
  もし、『今時、そんな馬鹿なことをしているのは、何処の町だッ!』と読者から質問されても、町の名誉の為に『未来都市の実現を目指している、YOKOHAMAだッ!』とは、余程口の堅い人にしか言えません。
  上の話で思い出した事があります。昔、ポリ袋の無かったころには、ワイシャツは『巾20a程度の紙』で帯のように包装し、背広は二つにたたみ、柏餅の葉っぱのように包んで紙テープで結わえていたものです。  
  紙の巾が狭いために、衿が剥き出しのワイシャツを棚に入れると、夜中に鼠が飛び回り、戸を閉め忘れた棚に置いてあるワイシャツの衿は、鼠の可愛い足跡だらけになるのです。ですから、戸棚がないと全部洗い直しになるわけで、アルミサッシの生活では考えられない滑稽な事件です。
  昔は、『棚に戸を付ける事!』の理由に、上記の問題もあったのです。あれから40年近く経ちました。どうやら、未来都市では、アルミサッシを破ってまで悪戯する鼠がいるのでしょうか。
  実は、あの市の若手の職員は、『馬鹿らしい取り決め!』と分かっているのですが、『上司や先輩達の決めた規則を変える』のには、『昇進できなくなる』というリスクがある為の止むを得ない指導なのです。
  開店の前の審査の時に『所詮、使わなくなる戸棚を、・・』と文句をいうと、『小さくても良いから、一応設置してくれませんか』と哀願される事もあるそうで、馬鹿らしいにも程があると思うのです。
  行革の様々な障害の中に『先輩の作った基準を改める事は出来ない』の条件が加わっては『未来都市の実現』は難しく、石原さんの実行力にお願いし、東京都と双方兼務の知事をお願いするしか手は無さそうです。
  行 革 に
     慣例・メンツの
        厚 き 壁


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