平成12年4月4日    
懸 賞 金
  伊豆の大島に椿を見に行った時、観光バスの運転手さんが運転をしながら「動物園から逃げ出した『サル』と『リス』の繁殖力が凄くて島民が困っている」とマイクで陽気に話し始めました。
  「一万人ほどの島の人口より多い野生のリスは、椿の木の皮をかじって食べるので困る。同じように見える椿の木でも旨い木とマズイ木があるようで、木が枯れる事もあってとても迷惑です。ほら、左上の椿の木をご覧下さい」とバスを止めて被害状況を見せてくれます。
  そして「サルは、柵の隙間から入り込み農作物を荒らして困るし、野菜を小脇に抱えて逃げる足が速くて農家の人は対策に苦慮している」と話は続きますが、毎日話しているだけに見事な説明ぶりです。
  「そこで大島町では、リスとサルに懸賞金をかけて捕獲する事になった。リスの懸賞金は、生死にかかわらず一匹500円。小学生で一ヶ月に1万円も小遣いを稼ぐ子供もいて、繁殖力が強いから、いくら捕まえても減らない為に子供達は大喜びです」と面白いような困った話しです。
  「サルの懸賞金は一匹5万円で、これは子供達の手には負えず猟師の出番ですが、大勢の猟師の中でもサルを撃てる人はたったの二人しか居ない」と話は続きます。
  「猟師がサルを見つけて鉄砲を向けると、サルは両手を合わせて拝むそうで、その姿は、人間が助けを求める姿にそっくりと言いますから、普通の猟師には撃つことが出来ない」といいます。
  動物園から逃げ出したサルが憎まれものになり、『悪さをするから退治しよう!』となって、猟師が懸命に退治しようとすれば、「手を合わせるサルを普通の人は撃てない!」と『非情な人』のレッテルを貼られた猟師は立場がないじゃ〜ありませんか。ま、のんびりした島の何とも皮肉なお話しでした。
どんでん返し
  上の懸賞金の話を聞いて『大島、サル退治、懸賞金付き船の旅≠煌yしいかも!』と思いついた。
  そして、『阿部君が2匹捕まえれば、福本君も頑張るはずで、剣道を習った五反田さんも・・と数えると、サルが20匹で100万円。リスが200匹で10万円。合計でぇ〜!』と楽しい皮算用です。
  それで、リスは人口より多く棲息しているとは聞いたが、『懸賞金付きのサルは、何匹ほど棲息しているものか?』と気になり、早速、都の大島支庁と大島の町役場に電話をしたのです。
  で、「野生のサルの数は?」と聞きますと、「おおよそ、300〜400匹程度と思います」とのことですから、「年間に何匹ぐらい駆除しますか?」と聞くと「大体、百匹程度です」という。
  「一匹5万円で、百匹も捕まえたら予算が大変ですねぇ」と私がいいますと、「えっ!。サルは一匹5千円ですよ!」というではありませんか。「じゃ〜、リスは?」と聞くと「450円です」とのことです。
  「リスを捕まえると子供達の小遣い稼ぎになるそうで!」というと、「サルもリスも『鳥獣駆除の資格』を持った人しか捕まえる事は出来ません」というから、だんだん懸賞金の旅が遠のいていく。
  続いて、「リスの駆除の資格を持った人は12人おりますが、サルの駆除の資格をもった人は1人しか居りません。資格を持たない人が獲れば犯罪になります」と、全然予定が狂ってくるじゃ〜ありませんか。
  「有害鳥獣駆除の許可は都の支庁で出し、鳥獣駆除員に依頼するシステムで、駆除に関する経費は、東京都が年間に30万円の補助金を出し、残りは大島町で負担しています」と難しい話しになっていく。
  「30年も昔、私が子供の頃からリスを遊びで捕まえた事はありましたが、子供達が懸賞金を貰った話しは聞いた事がありませんし、子供達の教育上も宜しくないでしょう」とは大島のお役所の人の説明です。
  また、「動物園から逃げ出した『サルとリス』は共に台湾産で、サルは年間100匹、リスも300〜500匹程駆除しても、大島の気候風土に適したらしく増えつづけているようです」との事でした。
  バスの運転手さんが面白おかしく喋った話しとはいえ、50名からの観光客の誰もが、自宅に帰ったら『土産話し』として言いたくなる懸賞金の話題であり、おそらく彼は、観光客相手に同じ話しを繰り返していると思いますし、『同僚も一様に・!』と考えると、嘘の情報が日本中に蔓延(マンエン)する事になります。
  『楽しい旅の話題』をくれた運転手さんですが『少し悪戯が過ぎる』ようで、『ほら吹き害人を、懸賞金付きで駆除!』と決まれば、今度こそ『懸賞金ツアー』が実現可能となりそうです。ご一緒に如何!?。
  真 相 は
     どんでん返しが
        世 の 習 い


Copyright(C) Taketosi Nakajima 1997-2003