平成12年12月12日
忘 年 会
  同業者の忘年会で毎年利用していた川崎の大衆フグ料理屋が今年の8月で廃業しました。そして、大衆割烹を営む知人が、「ここ数年、忘年会の予約が少なくて困る!」と嘆いています。
  これだけ景気が低迷していては、当然ながら忘年会の数も減りクリスマスも地味になります。ま、新内閣には、橋本竜太郎さん、宮沢さん、河野さんと元自民党の総裁が三人も揃うのですから大いに期待したいところです。でも、来年は巳年であり『竜さん』の出番では無いような気もしますが。
寄 せ 鍋
  20年ほど前の話し、新宿の寄席の末広亭のすぐ側の割烹『大黒屋』で 同業者の忘年会を行いました。
   出席者は約40名、酢の物や刺身などが型どおりに出た後で、土鍋に魚介や野菜が山盛りの寄せ鍋が8ヶ所据えられてコンロに火が付き、話がはずみ出す頃には湯気が出て美味しそうな臭いがしてきます。
  鍋物は、わいわい騒ぎながら食べた方が美味しいが、私の隣の鍋のグループは、乾杯を繰り返して盛り上がった気の早い連中で土鍋の蓋を取り皆で食べ始めました。
  その内の一人が、『今日の鍋には黒ゴマが沢山入ってる、珍しいね〜』 というと、他の一人が『このゴマは泳いで白菜の方に逃げていくよ!』という。気がつけば、あっちの鍋もこっちの鍋も黒ゴマの水泳大会、座敷中が大騒ぎになってしまった。
  私達の鍋も確かめると、孵化した黒ゴキの赤ちゃんが、白菜か春菊のきざんだ中で全体に広がったのを板前が気付かず盛り付けたために、全部の鍋に行き渡ってしまったのです。
  何人かが興奮して『板前を呼べ!』とか、『親父を出せ!』の意見も出たが、知り合いの紹介の店でも有り、幹事が交渉の末、寄せ鍋分が只になっただけのお粗末な結果でした。
  暮れになると思い出す『てんやわんやの忘年会』でしたが、あえて店名を書いたのは、その後、大黒屋が廃業したからです。ま、あの程度のサービスで生き残る事は所詮、無理だったのでしょうが。
  料理の話のついでに、『鯉料理』の話を少し書きましょう。私の田舎は、長野県の佐久地方ですから、例の『佐久鯉』の産地で、宴会となれば必ずと言っても良いほど鯉料理が出てきます。
  実際には、鯉という魚はそれほど美味しいものではありませんが、それでも、『佐久の鯉太郎』という歌があるほどに名が知れているせいか、佐久地方の宴会には鯉の料理は欠かせないようです。
  秋に田舎にお墓参りにいった際、兄と鯉料理の話になったら、「最近は、暖かくて発育がいい○○県で鯉を大きくして、『仕上げの数ヶ月だけ佐久で育てる鯉』が多くなって残念だ」といいます。
  ですから、「鯉の料理に差が出るもんかねぇ?」と聞きますと、「鯉こくにして煮た時に、身が内側から弾けるように出るのが佐久の本物で、皮が余るようなのが偽物だよ」と言っておりましたが、さて?。
  『鯉料理』といえば、まず、@味噌汁仕立ての鯉こく。A刺身にしてからお湯をかけ、冷水にくぐらせる鯉の洗い。B甘辛く煮た煮鯉。C丸ごとカラ揚げにして甘酢あんをかけた中華料理などが定番です。
  その他に、D鯉を笹の葉で包んでから焼く特別料理があり、料理の名前を『コイのササヤキ』とか言うそうですが、『誠に情緒がある』ともいうその料理は、残念ながら私はまだ食べた事がないので・・・。
  『発育がいい地方で早く大きくする』といえば、『松阪や飛騨の牛』も、他で育てた牛を、最後の数ヶ月だけビールを飲ませるパフォーマンス等をしながら育て『本場物』として売る事もあると聞いたような!?。
  大手が受注した工事を下請けや孫請けが請け負う『丸投げ』も似た様なものですし、衣服のブランド物などは、本物と偽者を海外の同じ工場で作っている場合もあるそうですから、何ともはや・・。
 世相ゆえ
   フグからタラに
      変わる鍋


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