平成12年1月18日
道路使用
  駅から少し歩いた商店街の角で、時々『浅蜊(アサリ)』を売っているおじさんが居ました。
  ある日、私がその場所を通りかかった時に警官が「ここで物を売ってはいけない。ちゃんと道路使用の許可を取ってから売りなさい」と指導をしていました。
  警官が去った後で、おじさんはふて腐れて浅蜊を片付けながら、「許可を取れって言ったって、許可証なんかくれもしないくせにッ!」と大分不満そうです。
  道路法(道路交通法ではありません)から言えば、許可を得ず公道を使用する事は、『道路法禁止行為、交通に支障を及ぼす恐れのある放置物件・・』等の違反になり、道路不正使用で罰金になります。
  ドラッグストアーや百円ショップの道路占有は強烈ですが、他にも、商店街の9割を超す店が、商品か陳列ケース、旗や看板など、何らかの形で道路を利用しているのが実際で、本来なら道路法違反をしているわけです。
  それでも、警察や消防は地域と協力しあう原則もありますから、道路使用状況調査の場合には事前に商店街に連絡があり、調査や指導の当日だけ、全店舗が品物を道路から引っ込めているのが実情でしょう。
新 事 業
  中延アーケード商店街の真中にあった、持ち帰りの寿司屋『茶月』が昨年の夏に閉店しました。どうやらあの商売も、不況に加わえて配達式の寿司屋やコンビニ弁当の攻勢が影響しているのでしょうか。
  そして、その同じ場所で11月の末から店舗工事が始まり、『何の商売ができるのかな?』と興味を持っていたら、百円ショップのような店造りで、主として食料品を商う安売り店だったのです。
  12月の始めに開店したお店は、スナック菓子やカップラーメン。ガムからカレーの素などの食品を道路の真中近くまで並べ、店頭で大声で怒鳴りながらお客を呼び込む何とも元気な商法です。
  開店の日などは、店員だけでも8名も居りましたし、店内に入れないほどにお客が押しかける大繁盛。店頭に並べた品物とお客さんが乗ってきた自転車のために、自動車が通れないほどに道路も混雑しました。
  店の名前は『つる・かめ』。出店者は、かなり大手の会社の『新事業』であり、看板にも鶴と亀を浮き出し、店内は唐草模様のクロスを張り巡らした特長ある店の造りです。
  朝の仕入れの荷物を運び込むトラックも、ダンボール箱を山のように積み上げて店内に運び込み、商品の積み上げ方などもアメ横並であり、最近は少ない下町の雰囲気をかもしだす珍しいお店でした。
スペース
  ところが、開店から2週間後の12月18日に、驚く無かれその繁盛店が閉店してしまったのです。お客さんが押し寄せていたのですから、何かに無理があったからの閉店に違いありません。
  安売りの商法は、広いスペースが必要な事と人海戦術の展開になるのは宿命であり、実際に15坪の店では狭かったらしく、道路を利用して商品を並べ、大きくはみ出すしか戦術の立てようが無いのが問題でした。
  自分ひとりで商売をしているのではありませんから、道路に商品が大きくはみ出し、大声でお客さんに呼び掛ければ近隣の店舗からの苦情が殺到するのは当然です。
  つる・かめの店長は、『長く商売をやっている者は道路に物を並べてもよいのに、新参者は駄目というのはおかしい!』と商店街の役員さんも苦笑いの理論だったようですが、私が見ても『ちょっと派手すぎる!』と感じたほどですし、店長も『所詮、店が狭すぎて継続は難しい!』と判断しての撤退だったようです。
  ま、権利金や家賃、店舗改装や人手確保の経費などと、かなり高額な投資をしたはずで、計画性が無いというか武家の商法と言うか、大いなる誤算があったとしか思えないミジメな展開でした。 
  新商売の確立を目指して挑戦する企業は沢山ありますが、例えば、クリーニング業にも、ガソリンスタンドやセブンイレブンなどが参入しても全くの大失敗であり、既存の商売が頭打ちの現在、それぞれの業種にはその道のプロがいて、『皮算用』も机上の目論見ほど簡単に成功するものではないようです。
  やっと埋まった空き店に、超元気な店舗が登場して『起爆剤の役目』を果たしてくれると拍手喝采であったのが、あまりにも早い繁盛店の撤退に、商店街の役員さんたちも複雑な心境のご様子です。
ツル・カメは、次は戸越銀座に出すそうで、何とも『凄いッ!』としか・・
  せり出して
     大声出して
       はみ出しぬ


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