平成12年10月17日
  親しい方から、まことに大ぶりで見応えのある高級珍味の『カラスミ』を頂戴いたしました。近頃元気になるような話題が少なかっただけに、あまりの嬉しさに皆様にご報告です。
  カラスミを頂くときに、「かるくあぶって、薄く切って食べたほうが美味しいですよ」と教えて下さったので、早速、かるく焼いて5ミリほどの薄切りにして食べたら、かすかな塩味にほのかな香りが素晴らしく、深い味わいを堪能させていただいたのです。
  そして思った。タラの子が『タラコ』なら、カラスミは『まさか!?』と辞書で調べてみたら、『ボラ、サワラ等の卵巣を塩漬けにし、圧搾、乾燥させた食品。酒の肴に合う』と書いてありましたから『あぁ良かった!』と。何が良かったのか・・。
  そこで、魚の卵や卵巣について興味がわいてきました。まず、鱈子(タラコ)は、『タラの腹子。主にスケソウダラの卵を塩漬けにしたもの』となっています。同様に筋子(スジコ)は、『サケ、マスの卵を卵巣から取り出し、一腹づつ塩漬けにした食品、すずことも言う』と書かれています。
  次にイクラは、『サケやマスの卵を塩蔵した食品。特に、ベニザケの卵を用いる。日本では、筋子に対して一粒づつ離した食品をイクラという』とのことです。
  ついでに、とびっ子、『飛びっ子。飛びくらの意の児童語』と書いてありましたが、大変失礼いたしました。辞書を見る場所を間違えたので、皆さんが真面目に読んでいるか確かめたわけではありません。とびっ子は、築地の市場に聞いてみたら『トビコまたは、トビッコ』といって飛魚の卵だそうです。
  数の子は、『ニシンの卵巣を乾燥、または塩漬けにした食品。名を子孫繁栄に結び付け、正月などの祝儀膳に用いる』と書いてありましたが、私の子供の頃には、北海道の砂浜を埋め尽くすほどニシンが捕れたそうで、当時の数の子はかなり安かったのに現在は高価なのが残念です。
  ここまでの卵類を考えると、『日本人は、卵を塩漬けにして乾燥するのが好きな民族』とつくづく思います。ついでにロシアには、『キャビア』がありますが、あれはチョウザメの卵を塩漬けにしたものです。
  他にも、卵がお腹に入っているシシャモやイワシも美味しいし、カレイとヒラメの煮付けやタコとイカも卵の入っている場合には格別な味を感じます。
  卵といえば、鯨やマグロの卵を食べたことが無いのが残念です。1回に1頭程度しか生まない鯨の卵は、サッカーボールか運動会の大玉送り程度の大きさでしょうかねぇ。「鯨は哺乳類だから、卵は無いはず!」などと目くじらを立てないで下さい。『卵(ラン)』といって、殻は無くても人間と同じで最初は卵ですから。
秋 刀 魚
  少し塩を振った大ぶりのサンマを焼いて、熱々のうちに醤油をかけた大根オロシを付けて食べると、しみじみと『秋だなぁ!』と思うと同時に、ささやかな幸福感にひたるのです。
  そして考える。『ニシンの塩焼きには数の子が入っていることがあるのに、サンマは丸々と太っていても卵が無い!。それどころか、サンマの場合には卵という存在さえ聞いたことも無い!』と。
  そういえば、から揚げ用に『小アジ』を売っていることはあるが『小サンマ』を見たことが無い。まさか、一度に30センチもの大きさに成長するはずもあるまい。と秋の夜長に悩み始めた。
  そこで調べましたねぇ。そして分かったのは、サンマは回遊しながら主に南洋で産卵するので、その近辺で漁をすれば卵を抱えたサンマが捕れるのですが、遠洋のためにコストが高くつくので捕らないようです。ニシン、シシャモ、ハタハタ等は北海道付近で産卵しますから小魚でも漁師の採算が合うのです。
  サンマは、表面が15〜18度の水温を追って回遊し、成長は速く、寿命は諸説あるが通常一年で、体長22センチ程度で成熟し、多回産卵する。生涯の総産卵数は1〜2万粒程度。長径1.8_程度の楕円形の卵を南洋の表層の海藻などに産み付ける。約2週間で孵化し、3〜4日後には卵黄を吸収して間もなく成魚と似た体型の稚魚になるそうですが、『小さなサンマが泳いでいる所を見てみたい!』ですねぇ。
小さんまの
  夢果てしなき
     食の秋


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