平成11年3月16日
コルク
  話題の飲み物のワインの入っているビンには『コルク』の栓がしてあります。普段何気なく手にする『コルク』ですが、あのコルクの感触には天然素材の温かみを感じます。
  『コルク』は、『切り倒した木の皮』か『コルク状の柔らかい樹木を伐採して作る』か、もう一つ『木屑を圧縮して作る』のだろうと私は思っておりましたら、とんでもない勘違い。愛論百科≠煖ウ養を重んじるようになり、今回は植物学です。
  コルクは、地中海沿岸やスペイン、ポルトガル等の南ヨーロッパの原産で、栽培しているブナ科の常緑高木(15bに達する)『コルク樫(ガシ)』が原材料です。樹皮は厚いコルク質になっています。
  『コルク』は、軽くて弾力に富み、水・ガス体・熱などを通しにくい特長を持っているので、保温材や防音材として多く利用されています。世界に向け、年間に40万トンの産出だそうですからかなりの量です。
  20年ほど経ったコルク樫の生木から夏に樹皮を剥ぎ取り、数ヶ月の間、自然乾燥をした後で煮沸して、タンニン酸などを除去して平らに伸ばしてから使用。質や厚さをそれぞれ7等級に分け出荷します。 
  植えてから20年程度の若木では、一回の採取量は10s程度ですが、樹皮は剥ぎ取っても再生するので、以降、10年に一回程度の間隔で採取し、50年を経過した木なら一度に40〜50s、100年の大木なら200sも採れるそうです。そして、樹齢150年程度まで採取できるそうです。
素 材
  軽くて熱に強く、保温の効果があるとなれば『コルク』の利用を多角的に考える人がでてきます。
  先日、銀座三越で、あの『コルク』を使って作った『バッグ』や『インテリア素材』などの小物を展示販売しているコーナーを通りかかりましたら、何と、コルクで作った洋服まで販売していました。スカートにスラックス、ジャケットやコートに帽子、ネクタイまで展示してあるのです。
  『これ、洗えるんですか!?』と販売員に質問しますと『東北の会社が10年も研究を重ねて、特殊な技術でコーティングをしてあるから、濡れた布で拭き取るだけで綺麗になります』とおっしゃった。
  つづけて、『薄くスライスしたコルクに塩化ビニールを張りつけてあるから、拭くだけで簡単に汚れが取れるんです』ともいう。『洗っちゃいけないんですか?』と聞くと『拭けば汚れは落ちますから』と。
  『でも、泥の上で転んだら駄目でしょう!?』と聞くと、困った顔をして無口になってしまったのです。『乱暴な着方もコーティングが耐えられないでしょうねぇ?』と続けると『丈夫ですけれど、お洒落着ですから・・・』と。着用した人からの苦情をかなり経験している様子です。
  何と言っても材料はコルクですから高級品に見えるはずがなく、製作には手間がかかるそうですから値段はウール製品の3倍から5倍。コートなどは25万円もするのですから、物珍しそうに見ても買う人は一人も居りません。ま、希少価値とでもいうのでしょうか。  
  何でも、コルクを外国から買って、特殊な技術で『0.1ミリ程度』まで薄くスライスした物を、ボンドなどで塩ビレザーなどに貼りつけた物ですから、販売員が言うほど汚れをとるのは簡単ではないはずです。
  思うに、あんな物が出回ったら大迷惑で私の頭痛の種が増えてしまうが『で、売れてますか?』と心優しく質問すると『まだ、皆様に知っていただく段階ですから・・・』と悲しそうな顔でしたから一安心です。でも、世の中には、変わり者と物好きが居るから・・・少し心配も・・・。
  次々と出現する『洗えず、拭くだけでOK!』という無責任な素材に業界の悩みは尽きません。

うららかな春。心弾む春。
 待ちわびた春。夢膨らむ春。
  我が業界には、尚更に!!


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