優しい嘘つき



 「 えっ?実家に?」

 「 ああ。曾祖母の何周忌とかの法事でどうしても実家に戻らないといけなくなったんだ 」

 「 そうなんだ、大変だねアスラン 」

 「 いや、俺は別段大変って訳でもないんだが…そういう訳だから二、三日戻れないと思う 」

 「 うん、分かった 」

 「 だから、キラもその間実家に… 」

 「 何で?大丈夫だよ僕、アスランがいない間一人でも。それに、学校だってあるし 」


『学校は実家からは遠いじゃない』と言うキラを何か言いたげに見るアスラン。
すると、キラはにっこり笑って『大丈夫』ともう一度言った。
それでも心配そうなアスランの様子に深く溜息を漏らす。

 「 ねぇアスラン、僕ってそんなに頼りない?」

 「 いや、そういう訳じゃ… 」

そう、そういう事ではないのだ。確かに頼りないか?と聞かれればどちらかと言えばキラは頼りない。
本人に言ったら怒り出しそうだが。でも、今はそういう事でキラに実家に戻れと言っている訳ではない。
キラがどう考えていようともアスランがキラを心配なのだ。
それにキラはよくそういう嘘を吐くから。人の為に自分を偽る嘘を。
だからキラの『大丈夫』は信用できなかった。

 「 そう言う訳じゃないなら、はいっもうこの話はおしまい。」

ぽんと掌を合わせてキラは勢い良くソファから立ち上がると自室へと戻っていってしまった。



結局それからアスランは何だかんだとはぐらかされてキラを説得する事が出来ずそのまま実家に戻る日を迎えてしまう。


 「 じゃあ、行って来るけど…キラ本当に一人で― 」

 「 もう、アスランしつこいよっ 」

尚も往生際悪くキラを説得しようとするアスランにキラはむっと眉を寄せる。

 「 わかったよ、じゃあ、成るべく早く帰ってくるから 」

 「 うん。気をつけて 」

アスランはキラの頬に軽くキスを落とす。キラもそれを受ける為に瞼を閉じる。


 ― パタン… ―


閉ざされた扉を見つめているキラの顔から先ほどの笑顔が消える。


 「 さみしくなんかないよ… 」



一人きりの空間の中で呟かれた言葉は誰の耳にも届く事はなかった。




  ◆あとがき◆
まず、一言自分で突っ込みを入れます。たかだか二日、三日留守にするだけで騒ぎすぎだよ、君ら…
まるで今生の別れでもするようだ…
この話、他のお題に続きます。お題を見ればどれに続くか大体予想は付くと思いますが(笑)