─ 作品雑感 ─
私が筝曲の世界に道を進めて以来、出会った曲は数知れません。幼い頃は両親が古典の師匠をしていた関係で
古典を中心に勉強しておりましたが、1955年頃からは当時流行っていました宮城曲や久本曲を始め、中村曲
・菊城曲・坂本曲・衛藤曲などに触れ、筝曲の楽しさを覚えるようになりました。当時の曲は箏曲の手法を取り
入れ、純粋にその良さを引き出すといったもので、箏曲の特徴を極自然に表現していました。今から思えば一番
楽しかった頃かもしれません。そして1965年頃からは澤井曲や唯是曲・船川曲に惹かれて一歩新しい合奏を
覚え、1970年頃からは現代邦楽と言われた洋楽系の作曲家の曲を演奏するに至り、かなり高度な奏法やアン
サンブルも経験して参りました。しかし、高度な技術を要求される曲は一般的には敬遠され、曲の持つ価値とは
別に、箏曲界の底辺を広げる面では決して生産的ではありません。その後新しい箏曲の方向性を考えるに従い、
自分の作品を書き進めて参りましたが、これまでに触れた作曲家の作品が、私の作品に多大な影響を与えたこと
は言うまでもありません。現在作品を書くにあたり、従来の箏曲からは逸脱せずに自然に箏曲を楽しむことが出
来る曲をと念頭に置いております。また、皆様の心に残る曲を1曲でも書き残せたらと願ってやみません。
大嶽和久
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