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思い出の曲(TITLE)



 幾つかある思い出の曲の中で、一番最初に惹かれたのはチャイコフスキーの「ピアノ協
奏曲第1番」でした。中学生の頃にクラシックを聴き始め、当時はロマン派の作品を中心
に沢山の曲を聴き漁りましたが、この曲に巡り会ってしばらくは毎日これに聴き入ってい
ました。豊かなメロディー、そして華麗で優美に完成されたこの曲は、当時の私を魅了し
虜にしました。次に衝撃を受けたのは二十歳頃に澤井先生ご夫妻の「瀬音」をNHKの放
送で聴いた時でした。それは本当に斬新な演奏で、それまでの私の価値観を全て覆し、そ
れをきっかけに澤井先生の演奏に傾倒し、師事させて戴くところとなりました。次はそれ
から数年して青木鈴暮(当時は静夫)師のリサイタルで聴いた、地歌「八重衣」の演奏で
した。青木師の尺八ほか、三絃は大田里子師、箏は米川敏子師で、その演奏は全く乱れが
無く、終始緊張感に包まれ、呼吸をするのも忘れるほど引き込まれて行きました。これま
での歴史に残る名演奏であったと言えましょう。他にも思い出に残る曲は沢山あります。
この様な心に残る演奏は以降の音楽観は勿論、人生観をも変えてしまいます。演奏は瞬時
に消え去る芸術で、その時に聴けないと、もう聴く事が出来ません。私はこの様な名演奏
に接する事が出来た事を感謝せずにはいられません。

                                    大嶽和久