ハリソン内科学ー第2版ーついに完成!

 ハリソン内科学がグローバル・スタンダードであることは誰もが知っていることである。
 その日本語訳の第1版は3年前、2003年春、メディカル・サイエンス・インターナショナル社の熱意と、卓越した2人の監修者(福井次矢先生と黒川 清先生)により完成したのであった。この翻訳本の成功の舞台裏の秘策は、400ほどの章のそれぞれに、その分野の本邦の最高のエキスパートを配置し、出版社がそれぞれの訳者に、こまめにさまざまの連絡をいれたことにあった。
 私は、私のHPを立ち上げた当初から、この初版の愛読者になり、教室でも3冊購入し、同時に周囲の若者にも薦め、このホームページでも「医学徒に薦める本」としてとりあげた。 ことわっておくが、私は翻訳者でもなければ、出版社から頼まれたわけでもない。 私は、真に力のある医師・医療人を育てる事を私の最も大事な仕事と位置づけているので、医学徒にはこのような本物の本で学んでほしいと願っているから、だから推薦するのである。
 この本の出版により、私の教室はもとより、多くの医学徒ならびに医師が莫大な恩恵を受けた事は周知の事実である。ちなみに、私の身近なところで起こった2つの事例を紹介しよう。私の教室のスタッフの一人は、診療の実力でも群を抜く存在で、研究でも世界をリードするオリジナルな研究を毎年数多く出し、ずば抜けた存在感をしめして続けている男であるが、その男は、内科学会の認定医ではあったが、認定専門医の資格までは診療・研究・教育に日夜明け暮れている多忙な中でとる暇が見出せないでいた。しかし、その男が、内科学会認定専門医を取るぞ、と一念発起した。その彼が、選んだのが当時出版されたばかりだったハリソン内科学の翻訳書初版であった。彼は、診療・研究・教育のペースを落とすことなく、というより、すざましい勢いで診療・研究・教育のペースも加速させる中で、その合間を縫って、6ヶ月かけてこの本を完全に読破し、そして、一発で、内科学会認定専門医に合格したのである。同君は、「私が合格できたのはこの本のおかげです!」と謙虚に語っていたが、私は、この本を選んだ彼が偉かったと思ったし、同時に、人間、やる気で取り組めば、この様なことが出来るのだ!と感銘を受けたのであった。同君は、「この本を読み終えてからは、患者さんを診るのがさらに楽しくなりました。」とも言っていた。 もう一つ紹介したい事例は、親しくしていた学生で、受験直前の思わぬ個人的事情で医師国家試験に集中できず、不合格となり、一年間国試浪人するはめとなり、すっかり意気消沈していた男の事例である。 私は、「神様が君をさらに伸ばそうと考えて試練を与えてくれたと受け止めてほしい。この一年間で、大きく伸びてほしい。ハリソン内科学の翻訳本を買って、先ずそれを読破しなさい。読破の後、過去問を解きはじめて、疑問点をハリソン内科学の翻訳本で解決しながら、その前後を興味の向くまま楽しみながら読んでいってごらん。それを、10月ごろまでに済ませ、あとは、模擬試験を受けたり、他の仲間を指導しながら一年を過ごしてごらん、きっと、すっごく大きく育った君がいると思うし、国家試験なんて絶対楽に通るだけでなく、その後君が、医師として活躍する基盤になると思うよ。」と指導したのだった。その男は素直に私の言葉を信じてくれ、実行し、そしてすばらしい結果を、翌年、私に報告してくれたのであった。
 先だって、英文の新版が出たあと、私がどれほど、その翻訳が完成する日を待っていたかご理解いただけることと思う。何故、原著を読まず、翻訳本を待ったかというと、答えは簡単である。翻訳本のほうが、はるかに読みやすく、理解しやすいからである。 その翻訳がついに完成し、今月(3月)7日に発売となった。私が、私の本棚の初版をこの第2版すぐさま入れ替えた事は言うまでもない。この本の翻訳に携わった方々のお名前を拝見すると、まさに本邦のその分野のトップでかつ英語に熟達された方々からなっている。だからこそ、極めて短期間で翻訳の作業が完成したものと思われる。今、目を通し始めたばかりではあるが、内容も一新されている。ちなみに、価格も、29800円におさえてある。
(2006年3月14日、納 記)