市民公開講座後の痛風経過

  平成14年3月17日の市民公開講座の後にストレスと尿酸値の関係をさらに確信する出来事があったので、ここで紹介しましょう。

 それは、私の病院長としての仕事が極めて忙しくなった平成14年8月末のことです。はじめて痛風発作を患ってから丸一年経っていました。このころ、私は日々の激務のなかで、過労が蓄積し、ついには血圧が上がってしまい、通常の血圧降下薬で効果がなく、けっきょく懇意にしていた内科病院に一時的に入院させてもらうことになりました。図にあるように、それまでの超多忙な中にあっても、ユリノームとウラリットの服薬だけで尿酸値は完全に正常域にコントロールされていました。

入院してからの三ヵ月間はもちろん病棟規則によりお酒は飲めなかったので、結果的に断酒となりました。入院時にそれまで続けてきたユリノームとウラリットの服用をそのまま続けるか、それとも中止するか、どうしようか悩みましたが、仕事から離れ(入院に際しては副病院長を病院長代行に任命し、病院の業務を任せていました)、ストレスもなくなると思うし、規則正しい生活を送るのだから、「薬を飲まなくても尿酸値は上がらないだろう」と考え、これを機に実験的に服用をやめてみることにしました。

実際に、入院してからは、多忙な仕事から離れて心身ともリラックスした状態を続けていましたので、いざ、薬の服用中止を実行してみましたところ、果たして結果は私の予想どおりで、尿酸値は全く正常値を保つことができたのです。

4ヵ月後の平成14年12月に高血圧も全快し、翌年1月に仕事に復帰したときには、ありがたいことに病院長代行が正式の病院長に選出され、就任されていたため、私の仕事は教授職としての仕事だけでした。

ここで私は入院中の実験の続きをやってみることにしました。病院長職と比べて負担の少ない教授職だけのストレスだけだと、どの程度尿酸値が上がるのか確認するため、薬を飲まずに様子を見ることにしたのです。

私は「ストレスが少ないのだから尿酸値は正常値(7mg/dl以下)に保てるだろう」と予想しましたが、尿酸値の数値は7.5 mg/dl前後の上昇を示し、病院長の時ほどではありませんが教授職だけのストレスでも、やはり薬を使用しないと、尿酸値は上がってしまうことがわかりました。

さらに、自分で追い討ちをかけてしまったのですが、ある夜の宴席で酒と白子を大量に摂取する機会に恵まれてしまいました。 白子は私の大好物なのですが、他の食品と比べても特にプリン体を多く含んでいます。 そのため、尿酸値は一気に10.9mg/dlまで急上昇し、その後、「これはまずい!」とすぐに断酒したのですが、効果はむなしく、なかなか下がってくれなかったので、ここで再度、薬を飲む必要があると判断しました。

平成15年6月27日から以前と同じように薬物治療を再開したところ、服用を開始してからは尿酸値も正常範囲内に戻り、その後は、どんなにアルコールを痛飲しても、白子をどんなにたくさん食べても全く正常の値を保っているのです。もちろん痛風発作も起きていませんし、一番重要な腎機能も全く正常で、肝機能ほか全ての生化学検査の値も完全に正常値を保っている状態です。

 この入院というハップニングによって私が得ることができたのは(あくまで自己体験からの結論ですが)、仕事のストレスから解放されれば尿酸値は正常化するということと、教授職程度のストレスでもやはり薬の力を借りないと尿酸値を正常域に保つことは出来ないということを、確認できたことです。あとこの後の楽しみは、あと2年半後に教授職を定年退官しますので、そのときにもう一度、服用を止めて、教授職としてのストレスがなければ薬なしでも尿酸値を正常に保つことができることを証明する実験をすることです