ホスピス(緩和ケア病棟)・考
日本尊厳死協会かごしま
名誉会長 内山 裕
ホスピスとは
試みに手元にある「広辞苑」を引いてみると、次のように書かれている。
(宗教団体などの宿泊所の意)癌などの末期患者の身体的苦痛を軽減し、残された時間を充実して生きることを可能とさせるとともに、心静かに死に臨みうるよう幅の広い介護に努めるための施設。また、そのような活動。家族もホスピスの対象に含まれる。
尊厳死とホスピス
私自身、淀川キリスト教病院ホスピスをはじめ、いくつかのホスピスを訪ねてみたし、又ホスピスの誘致に懸命な人達との話し合いにも参加してきた。
強いて言えば、尊厳死運動は理念的であり、ホスピス運動は実際的具体的であると言うことであり、想いは一つと言い切れるだろう。
前項に書いたとおり、ホスピスは、昔キリスト教巡礼者の宿泊施設のことを言った。英国のシシリーソンダース女医(元看護師)が、無意味な医療措置をしない施設として、1967年(昭和42年)にセント・クリストフアー・ホスピスをロンドン近郊に作ったのが始まりである。
ホスピス(緩和ケア病棟)とは、末期癌の患者を主に、治癒の見込みのない人たちの生を支えるために、痛みや不安な症状をコントロールする等、専門的なケアをする施設やプログラムを意味する。
ホスピス施設数
ホスピスには、キリスト教主義に基づいたホスピス、仏教に背景をおいたビハーラと呼ばれる緩和ケア病棟、宗教とは全く無関係に運営されている緩和ケア病棟などがある。
厚労省は、その特殊性に鑑み、病床面積、個室率、医師看護師などの体制等の施設基準を定めており、これらの基準を満たす承認施設は、以下の通りとなっている。
2007年12月末 全国 177施設
2008年5月末 九州 40施設
鹿児島県内承認施設は、次の通りとなっている。
◎相良病院 21床 1997年開設
◎サザン・リージヨン病院 11床 2002年開設
◎国立病院機構南九州病院 25床 2006年開設
◎堂園メデイカルハウス 19床 1996年開設(未承認)
◎阿久根市民病院 10床 2008年開設予定
ホスピスでの二つの約束
旧知のあるホスピス医が患者にこう話すのを聞いた。二つの約束をしよう。一つ目は、痛みは最後までコントロールしてあげる。二つ目は、最後までひとりぽっちにはしない。ホスピスと聞くとあの時の青年医師の澄んだ柔らかい眼差しを想い出す。
そしていま
私は、現在の医療の中に、ホスピスの理念を取り入れたい。ホスピス的ケアの普及を目指したい。そんな想いにとらわれている。
(2008年7月10日記す)