「きいてください、看護師さん」ーセピア色のノートからー  2014年9月12日 記

卒寿(数え年90歳)を
迎えた誕生日の写真
       元鹿児島県衛生部長
                  日本尊厳死協会かごしま名誉会長 内山 裕


セピア色に褪せた古い私のノートの一節である。(原作・ルース・ジョンストン,訳詞・長谷川 浩)

  ひもじくても、わたしは,自分で食事ができません。
  あなたは、手の届かぬ床頭台の上に、わたしのお盆を置いたまま、去りました。
  そのうえ、看護のカンフアレンスで、わたしの栄養不足を、議論したのです。

  のどがからからで、困っていました。
  でも、あなたは忘れていました。
  付き添いさんに頼んで、水差しをみたしておくことを。
  あとで、あなたは記録につけました、わたしが流動食を拒んでいます、と。

  わたしは、さびしくて、こわいのです。
  でも、あなたは、わたしをひとりぽっちにして、去りました。
  わたしが、とても協力的で、まったくなにも尋ねないものだから。

  わたしは、お金に困っていました。
  あなたの心のなかで、わたしは、厄介ものになりました。

  わたしは、1件の看護的問題だったのです。
  あなたが議論したのは、わたしの病気の理論的根拠です。
  そして、わたしをみようとさえなさらずに。

  わたしは、死にそうだと思われていました。
  わたしの耳がきこえないと思って、あなたはしゃべりました。
  今晩のデートの前に美容院を予約したので、勤務のあいだに、死んで欲しくはないと。

  あなたは、教育があり、立派に話し、純白のぴんとした白衣をまとって、ほんとうに
  きちんとしています。
  わたしが話すと、聞いて下さるようですが、耳を傾けてはいないのです。

  助けて下さい。
  わたしにおきていることを、心配して下さい。
  わたしは、疲れきって、さびしくて、ほんとうにこわいのです。

  話しかけて下さい。
  手をさしのべて、わたしの手をとってください。
  わたしにおきていることを、あなたにも、大事な問題にして下さい。

  どうか、聞いてください、看護師さん。