ターミナルケアと認知症

  日本尊厳死協会かごしま
  名誉会長  内山 裕


2008年9月
鹿児島県社会福祉協議会の認知症介護実践研修会にて

講演の概要

1,「死」のかたち
  西行法師、良寛に流れる死生観、庶民の中にあったポックリ信仰。最近になっておきたPPK運動、更に癌死願望の声。
2,医学の進歩とカレン裁判
  あまりにも進んだ延命措置は、尊厳ある生を冒す場面も多くみられるようになった。
  カレン裁判の判決は、生命維持装置の取り外しを認めた世界初の判例である。
3,尊厳死と安楽死
  尊厳死とは一個の人格としての尊厳を保って死を迎えること。近代医学の延命技術などが、死に臨む人の人間性を無視しがちであることへの反省として認識されるようになった。一方、安楽死とは、助かる見込みのない病人を苦痛の少ない方法で、人為的に死なせること。
4,東海大学病院事件と横浜地裁判決「医師による積極的安楽死が認められる四条件
  1,耐え難い肉体的苦痛    2,死が避けられず、死期が迫っている
  3,他に代替え手段がない   4.患者の明示の意思表示があること
5.医療現場の苦悩
  尊厳死の希望を容れて、延命治療を中止した医師が罪に問われることがないように尊厳死立法化が必要である。
6.認知症の記憶障害
  1.記銘力の低下・・・話したことも、覧たことも、行ったことも、直後には忘れてしまう
    程の酷い物忘れ。同じ事を繰り返すのは、毎回忘れてしまうため。
  2,全体記憶の障害・・・食べたことなど体験したこと全体を忘れてしまう。
  3,記憶の逆行性喪失・・・現在から過去に遡って忘れていくのが特徴。昔の世界に戻っている。
7,認知症の感情残像
  1, 言ったり、聞いたり、行ったことはすぐ忘れるが、感情は残像のように残る。
  2, 理性の世界から、感情の世界へ。(褒める、感謝する。謝る、事実でなくても認める)
  3,お年寄りが形成している世界を理解し、大切にする。その世界と現実とのギャップ
    を感じさせないようにする。
8.衰弱の進行と終末期
  1,認知症のお年寄りの老化の速度は非常に速く、そうでないお年寄りの約3倍。
  2.認知症の高齢者の場合、ターミナルでは、疼痛や不安、恐怖感は少ない。穏やか
    で、最終的には静かに亡くなる場合が多い。