患者の立場での糖尿病臨床研究
その1:糖尿病とメタボリックシンドロームを薬なしで克服
−肥満を伴う糖尿病:1例目と2例目−
まず1例目は私自身です。
私が健診で診断された経過を示します。
基準値よりは全て高いとはいえ、程度は軽いと判断されました。
それにしても全く予期していなかったので、かなりショックを受けました。
これらの値はメタボリックシンドロームの基準を満たしていました。
加えて、糖尿病の診断基準も満たしていました。
私の頭にまず浮かんだのは、下に示す渡邊 昌先生の本でした。
渡邊先生は私と同年代で、かつ、私が新しい脊髄疾患HAMを発見した時、国立ガンセンターでのHAMの講演に声をかけていただいた仲でした。
渡邊先生はかなり高度の糖尿病が健診で発見され、薬物治療を勧められたとのことですが、あえて薬物にたよらず、食事療法と運動療法でみごとに糖尿病を克服されたのでした。
渡邊先生の横綱クラスの糖尿病に比べると“ふんどし担ぎ”クラスの糖尿病の私が、薬なしで頑張らないわけにはゆかないと考えたのでした。
私には、もう一つこのことに取り組みたいと思った背景がありました。それは、かって私が痛風になった時に、患者の立場から痛風を分析研究して、痛風の専門医にも役立つ幾つかの新しい情報を提供することが出来たという経験があったので、同じように糖尿病とも患者の視点で取り組んでみる価値があると思ったのです。
糖尿病とメタボリックシンドロームの両方とも毎日の規則正しい運動と食事療法により、体重を理想的な状態に持って行くことが基本ですので、私は、毎日ウォーキングに努め、食事は単純に今までよりも総量を減らして、腹8分の食事に切り替えました。そして、毎朝かかざず、同じ条件で体重を測定し、方眼紙にグラフで記入しました。
行ったのは、ただそれだけでしたが、効果は、下の表に示しますように自分でも驚くほどすばらしい結果でした。
10ヶ月後の4月には体重は7.4 Kg減少し、上記の全ての値を正常値になったのです。
HbA1c はもともと5.7で高くはなかったのですが、厳しすぎる基準の保健指導域よりも低値の5.1まで持ってゆくことができました。
何よりも嬉しかったのは、血圧も完全に正常化し、糖尿病だけでなくメタボリックシンドロームも全て完全に克服できたことでした。 その後、現在まで、薬物療法なしでこの正常な状態を保てています。
全ての値が正常化した2009年4月の時点で、内臓脂肪面積の測定をしたところ、下に示しますように、
予想通り内臓脂肪はかなり少なくなっていることが分かりました。私の病院でこの測定が出来るようになったのが2009年になってからでしたので、残念ながら2008年6月の内臓脂肪の量は測定できていませんが、腹囲と体重から考えると、当時は内臓脂肪の量はかなり多かったであろうと推定されました。
私は、私よりも重症の糖尿病の未治療の人に運動療法と食事療法だけで糖尿病を克服してもらって、その前後で内臓脂肪を測らせてもらえたらと考え適当な候補者をさがしたところ、うって付けの人に出会うことができました!
肥満を伴う糖尿病患者:2例目
その男性のプロフィールを示します。
この男性と私を比べてみますと、
この男性は私よりはるかに悪い数値で、糖尿病としても中等度以上の糖尿病と診断されました。
メタボリックシンドロームに関しても、
このように、基準をはるかにオーバーしていました。
本来なら薬物療法をするべき程度の糖尿病でしたが、本人は渡邊先生の本に感動し、また、私の結果にも刺激をうけ、薬物療法は行わず、運動療法と食事療法のみで経過をみたいと強く望み、私と同じ方法で頑張ることになりました。
まずは、スタート前に内臓脂肪の測定を行ったところ、
お腹の中は内臓脂肪がギュウギュウ詰めになっていて、121cm2と非常に多い事がわかりました。
さて、本人の努力の甲斐あって、約半年で体重は約10キロ減り、お腹も下の写真のようにとてもスリムになりました。
この両時期の検査の値を比較しますと、
このように、全ての値が驚くほどよくなり、糖尿病もメタボリックシンドロームも完全克服できていたのです。 高かった血圧も完全に正常となり、中性脂肪は413から80
mb/dl へとみごとに減少していました。
内臓脂肪の量も、
121から41.83cm2に著減していました。
前後の内臓脂肪画像を脊椎の大きさを同じにして比べてみますと、
お腹の面積がかなり小さくなっていることがわかります。
この様に、脂肪は、内臓脂肪だけでなく、皮下脂肪も著減していました。 この皮下脂肪の減少は運動療法のたまもので、運動療法を一生懸命した証拠は背筋と傍脊柱筋がむしろ大きくなっていることに示されています。
糖尿病の専門の先生のコメントでは、これほどの高度の糖尿病を薬物療法なしで克服できたのはこの男性の意思の強さの賜物で、なかなかここまでやれる人は稀とのことでした。 私も、この男性の意思の強さと、薬なしで克服しようという強いモチベーションに感銘をうけました。 ちなみに、この男性はその後、今日に至るまで同じ正常値を保っており、このこともすばらしいことだと感嘆しています。
私の例と、この2例目の男性の事例から、これまで言われていたことではありますが、内臓脂肪を減らすことの重要性がかなり説得力をもって強調できると思います。