思うこと 第95話           2006年6月2日 記       

フィラデルフィアの学会に参加して

 フィラデルフィアで行われた国際神経ウイルス学会(2006年5月31日〜6月2日)に参加し、帰国前の最後の夜にこうしてフィラデルフィアでこの項を書いているが、今回改めて、我々のHAMに関する一連の研究がいかに国際的に認知され、かつ我々の研究の進展状況に大きな関心がもたれているかを痛感した。 別に改まって驚く事もないのかもしれないが、まさに、身の引き締まる思いを、改めて、ずしりと感じさせられたのであった。 この学会の発刊している雑誌“Journal of NeuroVilology”は、インパクトファクター(どれぐらい注目されているかという指標で、2以上だと一応の評価を得ていると考えてよく、論文を投稿しても審査が厳しく採択されるのは半分以下である。ちなみに、日本から出版されている英文の学会誌の場合にはインパクトファクターが1以上のものはそれほど多くはない)に関しては、この本のインパクトファクターは2〜3.5の間をいつも維持している。  この学会の理事・運営委員 (Board of Directors) は19名で、米国人9名、ドイツ人2名、イタリア人2名、スイス人一名、カナダ人一名、オーストラリア人一名、スエーデン人一名、イスラエル人一名に加え日本人の私の計19名の構成である。 このBoard of DirectorsのもとにさらにAssociate Editors が約90人選ばれていて、これまで日本から4人が選ばれていたが、この度斉藤峰輝助教授(左写真)が選任された。 斉藤君は日本におけるHAM研究の若手リーダーの一人で、今年3月までは鹿児島大学の私の研究室でHAM研究を推進してくれていたのであるが、その功績が認められ今年の4月から金沢医科大学生体感染防御学講座(大原義朗教授)の助教授に就任したばかりの青年医師である。その斉藤君が今回の晴れ舞台で“HAM研究の現況”について講演してくれと学会から招請されたのであるから、同君にとって名誉なことであるだけでなく、本邦のHAM研究陣にとっても光栄なことであった。 同君の講演(右写真)では、鹿児島大学を中心とした本邦のHAM研究がいかに進展しているかをとても明快に述べてくれ、座長を務めていた私までもが嬉しい思いをさせてもらった。 講演の後、多くの人から、斉藤君だけでなく共同研究者として名前を連ねていた私までもが、『HAM研究がここまで進展して、おめでとう!』の祝辞をいただいたのであったが、私にしても、斉藤君にしても、HAMの完全な根治療法が完成するまではすなおに喜べないというのがその場での気持ちであった。 幸い、鹿児島大学の出雲周二教授と有馬直道教授の指導のもとで多くの若者達がHAMならびにHTLV−Iの研究と取り組んで、日夜頑張ってくれているので、いずれ今回の祝辞をすなおに喜べる日が来ると信じながらこの項の結びとしたい。