思うこと 第59話           2006年1月22日 記       

2006年の“年の初め”の読書 −その4− 

日本の今後 −その3−


 私にとって毎週送ってくる日経ビジネス誌を流し読みすることは、約3年前ごろから始まった習慣で、楽しみの一つとなっている。

本誌の新春特大号(2006.1.9)は、私にとってタイムリーなことに、財政危機の特集が載っていた。





この中で、「小さな政府」の設計者の竹中平蔵総務大臣は、「小さな政府」への改革の手綱を緩めてはいけないとの熱い思いを語っている。

 左の見開きいっぱいを使って描かれているイラストの「ワニの口」は財務省主計局の矢野康治氏が提唱した言葉。下顎の線が税収で上顎の線が支出。2005年度予算では44兆円の税収に対して約二倍の82.2兆円の支出。この上顎と下顎の差額の大半が毎年新規国債として積み上げられ、2005年度末には770兆円にのぼる。この上顎の線を下げ、下顎の線を上昇させ、いずれ新規国債をゼロにもってゆき、そしてさらに、税収よりも支出を少なく出来て初めて、その時までにさらに積み上がってしまっているであろう膨大な国債残高の償還に手をつけることが可能になる。 

いったいこれは、可能なシナリオだろうか、それとも、とうてい不可能なシナリオだろうか? 

(ここで、何故、突然『ワニの上顎』が1998年ごろから2000年にかけて急上昇し、下顎が急に下降したのであろうか、ということに関して、参考までに、注釈を加える。  この頃は、小渕首相に請われて元総理の宮澤喜一氏が大蔵大臣を務められた時期に一致する。 当時の状況に関して、「論座」2006年2月号の <キーパーソンが語る証言> のなかで、 宮澤喜一氏が次のように述べておられる。(抜粋してピックアップした。)

問い 『宮澤さんは小渕政権に蔵相として入閣しました。 小渕さんからは早い段階で「ぜひ協力してほしい」という要請があったわけですか。』
宮澤 『「一切まかせるからやってほしい」というお話でしたね。金融も財政も、とにかく総力をあげて取り組み、出す金はみんな出す、というお話でした。それしかしょうがないでしょうという認識でしたね。』
問い 『大蔵大臣になって、最初にどこから手をつけられたのですか。』
宮澤 『それは、とにかくお金を出すということですよ。 
減税も、公共事業も、金融も。 とことん金を出す。 ただあの時は、どんなに金を出しても、ヘドロにコンクリートパイルを打っているような感じがしましたね。つまりは、いろいろやってみても、景気に全然跳ね返ってこなかったのです。』
問い 『宮澤さんは大蔵官僚出身ですが、財政の収支バランスが気にはならなかったのですか。』
宮澤 『なりませんでした。あんな状態の中で、そんなことはとても言っていられませんでした。 とにかくやれることはすべてやったといってもいいんじゃないでしょうか。金融機関に金を使うということは、それまでやらなかったですからね。にもかかわらず、思うような効果が出ないので参りましたよ。』

やはり、歴史を動かされた方の証言は重い、と思わずにはおれない。 )


 さて話をもとにもどすが、この特集には、日経ビジネス編集長による谷垣禎一財務大臣へのインタビューの記事も載っていた(左写真)。
その一問一答のなかで、私にとってとても衝撃的であったのが、左図の中の赤線でアンダーラインをつけた部分(右図)である。 すなわち;

谷垣禎一財務大臣の答 
債務残高がGDP(国内総生産)の150%を超えるという水準も、破綻した国を除くと、余り例がないと思います。 破綻に近いと言われていた、かってのイタリアですら、150%まではいっていませんでした。
 
『つまり一流の経済国家としては、破綻しているようなものだと。』
谷垣禎一財務大臣の答 
私は立場上、破綻とは申しませんが、ストック(累積債務)の状況が先進国の中でも最悪ということです。

これを読むと、谷垣禎一財務大臣が我が国の財政危機が破綻に近い状況まできていることをオープンにした上で、国民と危機意識を共有しながら、ではどうしたらいいのかという議論を前向きに推進しようとしていることがわかる。 

 昨夜、9時半に帰宅したところ、NHKの総合テレビで谷垣禎一財務大臣が大写しになって熱弁をふるっておられた。なんと、午後7時半から10時半の3時間にわるNHKのテレビ公開討論の最中で、テーマはまさに 
<日本のこれからー 「本当に増税しかないのか?」> というものであった。 私はテレビに釘付けとなって、最後の1時間を聞いたが、会場の中央の谷垣禎一財務大臣を囲んで、約40〜50人ほどの国民各層の代表が、これからの日本をどうすべきか熱い討論が行われ、また、FAXで送られてくる膨大な数の視聴者の意見も討論のあいだで紹介されていた。 その討論を聴きながら、今、いかににこの問題に国民の多くが関心を持っているかを、実感として感じたのであった。 質問に一つ一つ丁寧に、そして明快に答えてゆかれる谷垣禎一財務大臣の姿勢に私は感銘を受けたが、おそらく、多くの視聴者も同じような印象をもったのではないかと思うことであった。