思うこと 第288話           2012年6月27日 記

小学国語読本による戦前の小学生教育
『松坂の一夜』の紹介

 先日、戦前の小学校の徳育の教育に『小学国語読本』が使われ、効果を上げていたとの新聞コラム記事を読んだ。 そのコラムで例として紹介されていたのが、『小学国語読本 十一巻』にある『松坂の一夜』であった。 この、『松坂の一夜』を小学生に読ませ、学ぶこと、そして努力することの重要性を学んでもらう徳育の教材につかったのである。 『松坂の一夜』の話の骨子は、次のようなものである。 若き学徒だった本居宣長は、念願であった万葉集研究の泰斗、賀茂真淵との対面が、宝暦13年(1763年)5月に実現した。 ほの暗い行燈の下、2人は夜遅くまで話し込んだという。 この時、本居宣長は、長年夢見ていた『古事記』の研究の手がかりを賀茂真淵より伝授された。 この対面は一晩だけで、その後二度と会うことはかなわなかったが、本居宣長は賀茂真淵の導きに従い、独学で『古事記』の解読に挑戦し、刻苦勉励、血のにじむような努力を重ね、何と、35年という気の遠くなるような歳月をかけた末、『古事記伝』という不朽の名作を完成させたのであった。 この『古事記伝』がなければ、後世において『古事記』解読は不可能であったろうと言われている、それほど、歴史的な出来事であった。 この、話の基になった『松坂の一夜』は三重県出身の歌人、佐々木信綱が松坂市に伝わる話や、宣長の『玉勝間』の挿話を基に書いたものである。
私は、戦前に使われた『小学国語読本』の実物を読みたくて探したが、なかなか見つからず、ほとんどあきらめかけたところで、わずかな可能性に賭けて鹿児島県立図書館に相談した。 何と、そこに、現物が保管されていたのである。 『小学国語読本 十一巻』の表紙と68ページから74ページの全てをここに感動とともに掲載する。








以上。