思うこと 第252話             2007年9月20日        

TQM活動発表会に感動!

昨日行われた今村病院分院の『第2回TQM活動発表会』にはとても感銘を受けた。

会場は大会議室を使ったのであるが、それでも満員で、座れない人も出るほどであった。



 
 TQM(Total Quality Management)と言う言葉の説明を簡単に触れる。 TQMの日本語訳は『総合的品質管理』で、企業で用いられてきたことばである。総合的品質管理という日本語には、TQC(Total Quality Control)とTQM(Total Quality Management)の2つがあり、 両者は区別されなければならないのにControlもManagementも日本語に訳すると管理となってしまうので、英語で語る方が理解しやすい。米国企業で行われていたQC( Quality Control)が日本企業で取り入れられ、改良され、日本の製造分野企業の世界的な躍進の基となった。このQCがTQCへと発展し、さらにTQMへと発展したもので、現在企業ではTQMが主に用いられている。トヨタやホンダがこのTQM活動に力を注ぎ、現在の発展に繋がったことは、よく知られている。
 この、TQM手法を医療質の向上に利用しようと言う動きが、麻生飯塚病院をはじめ幾つかの病院ではじまり、私達の病院でも昨年『第1回TQM活動発表会』を行い、今回第2回を行ったというわけである。伊豆元総看護部長の提言を宇都宮院長が推進し、病院全体で取り組んできたとのことであった。
 今回発表を行ったのは、10チームであり、その何れもがとても良い発想で取り組んでおり、成果を挙げていた。まさに、全員・全体(Total)で、医療・サービスの質(Quality)を、継続的に向上させ(Management)つつあることを実感させてもらった。私が今年4月に財団法人慈愛会会長に就任して以来、全職員に送り続けてきたメッセージ『患者様の目からみて日本一の病院に』の目標達成に、このTQM活動が大きな役割を果たしてくれるであろうことを、これらの10チームの発表を聴きながら、実感させてもらたのであった。それぞれユニークなチーム名で発表が行われた。聴衆全員の採点で順位がつけられ、院長から後日賞品が贈られることになっているため、各チームとも発表に熱が入っていた。
それら、10チームの発表の内容が、どれほど私にとって印象的なものであったか、以下に簡単に触れる。

透析患者様を対象に2年前から取り組んできた腎臓病教室の成果が述べられたが、「火災時の避難訓練」も患者家族と一緒に行われ、透析回路からの緊急離脱の方法の検討や、離脱にかかる時間を如何に短縮するかなど、訓練から大きな成果が得られていた。「検査データのみかた」の教室ば最も人気があったとのこと。教室を通して、患者様や家族の方々の知識が向上しただけでなく、職員とのコミュニケーションが深まったとのことで、生涯透析を続けなければならない患者様にとって、この教室のはたす意義は大きいと思った。素晴らしい取り組みである。


実態調査の結果、新人看護師が仕事を辞めたいと思った時期は、就職後すぐから6ヶ月の間で、6ヶ月過ぎより仕事が面白くなったことが明らかにされた。このため、就職後6ヶ月の間に集中的に教育とサポートを行う体制の構築に努力することが重要で、そのための具体的な提案がなされた。恐らく、来年の新人から大きな成果が出るであろうと思った。


看護者が臨床現場で直面する臨床倫理問題の現状、課題、そしてそれへの対策と、極めて重要な、かつ困難な問題に取り組んだもので、素晴らしい取り組みである。簡単な問題ではないが、それだけに、頑張り甲斐のある大事なテーマといえる。


糖尿病治療のために入院中の患者様のインシュリン自己注射の際、ナースステーション内のボードの指示量を看護師と共に確認して行っている。このインシュリン自己注射の誤謬やエラーを分析し、それを減らす対策を検討・実施した結果、当初患者要因と考えられていたエラーを実に25%にまで減少させることに成功したと言う画期的な成果をあげた。素晴らしい取り組みと成果に私は感動した。この努力を続けるといずれエラーを0%に持ってゆけるかもしれないと思った。


院内発生褥瘡ゼロを目指して頑張っている褥瘡委員会が、発生件数が減少しない現状があるため、近年の発生状況を分析し、対策を立てたもので、今後の成果が楽しみである。 この熱意があれば、院内発生褥瘡ゼロの目標達成も夢ではないと思った。


画像診断部における造影CT撮影検査の件数が増大してきており、また、撮影部位およびタイミングの複雑化などに伴い造影剤注入速度も高速化してきている。これに伴い、造影剤の血管外漏出の頻度に増加がみられるようになって来た。これを予防するために、チムーは検討を重ね、その結論に基づき、平成17年度より新たな方式を実施した。この結果、血管外およびシステム接続部からの漏出が、平成15、16年度の2年間では1334件中31件(2.32%)であったものが、平成17、18年度の2年間では1441件中5件(0.35%)に激減させることが出来た。まさに、感動的試みと成果であると言えよう。


糖尿病診療の現状は、患者数が年々激増しているため診療現場では医師が必死で診療しているにもかかわらず、患者様の待ち時間は長くなる傾向がある。この待ち時間にかんして、臨床検査を担当するスタッフが患者様の精神的なサポートをかねた指導、教育、調査の取り組みを行った。これは、画期的な試みであり、まさに患者様の視点での取り組みと言えよう。


リハセンター安全対策部が約2年前から取り組んできた、車椅子安全管理のチェックリストに関し、効果と有用性を調査したもので、このような細かな気配りで患者様の安全性が護られている事に感心したのであった。


薬剤部では、平成14年より入院及び外来患者の全てを対象に抗がん剤無菌調整を開始した。平成17年12月より完全実施を目指して、平日午前に加え、平日及び土曜日にも無菌調整業務を拡大した。これにより、調整実施率が71%から86%に増加した。これは、土曜日の調整率が完全に100%になったことによる。すばらしいことの達成はスタッフの努力に支えられていることを実感した発表であった。


昨年冬期は日本中の病院でノロウイルスが猛威をふるったが、対応が後手に回った病院も少なくなかった。その中にあって、今村病院分院では、ノロウイルス感染症の発生からわずか16日間で完全終息させることに成功した。 ノロウイルス感染症が疑われた時点で、早急に拡大感染症対策委員会を開催するという迅速なチームの対応と病院を挙げての体制構築がこの画期的な成果に結びついたことを知った。すばらしい取り組みであったと思う。