思うこと 第243話 2007年8月17日 記
続・リーダーのあるべき姿 −その2−塩野七生氏からのメッセージ
文藝春秋7月号:114ページに塩野七生氏による『日本と日本人への10の質問』(下写真)は、日本の現状と今後の進むべき方向を論じたもので、
イタリアに住み、古代ローマの歴史に精通した筆者ならではの、すばらしい視点から日本へのメーッセージを送ってくれており、ぜひ、読んでいただければと思う。上記写真のタイトルに示されている通り、10のテーマについて語っておられ、いずれも私は感動したが、なかでも、特に我が意を得たりと感動した『リーダーシップについて』の項の内容について、その一部を抜粋して紹介する。
『では、真のリーダーとは、どんな人物なのでしょうか。ローマやヴェネツィアの歴史を書きながら、私は無数の歴史上のリーダーたちと対話を重ねてきました。
ローマ史における最大のリーダーは、カエサルをおいては他にいません。彼から学んだリーダー哲学は二つ。
その中でも、第一にして最大の要諦は「すべての人材は活用できる」とした彼の人材活用術です。
どんな組織も、部下たちの能力の欠如を嘆く上司がいますが、それは即、上司の側の想像力の欠如に問題があるのです。部下の能力を適切に見極めて、適材適所で、限られてはいてもその能力を最大限に発揮させることこそが、リーダーに求められる資質だと思う。
第二は、部下たちが喜んで苦労するように持っていく才能。
人間は誰でも、何かをするに際して苦労しなければならないことはわかっているのです。だから、苦労することは甘んじて受ける。しかも、その苦労も、喜んでやりたいと願っている。それをさせるのがリーダー。日本にも「士は己を知る者のために死す」という言葉があるではないですか。
この二つを同時に満たすエピソードがカエサルにはあります。−−−−−』
私は、心底感動した。私が、長年に亘って考えていた「リーダーのあるべき姿」に関し、極めて切れ味良く、簡潔にまとめてくれてあり、私が辿り着いていながら、言い表せていなかった文言にやっと辿り着いたという、感慨を味わったのである。私はかって、わが家の庭の芝とゼニゴケを例に、適材適所を論じたことがあったが、あの時言いたかった事はまさにこのことであったし、またこれまで10回に亘って『思うこと』の中で論じてきた『リーダーのあるべき資質・姿』も、煎じ詰めればまさにこのこの2つのポイントに要約されるように思う。