思うこと 第214話 2007年5月24日
箱根国際会議余話
箱根で開かれた『第13回国際ヒトレトロウイルスHTLV会議』については、『思うこと第213話』で述べたが、私は箱根で、2つの念願をかなえる事が出来た。その一つは、私が19歳の時、すなわち46年前の日本縦断自転車無銭旅行の際、箱根で感動した風景を、もう一度見てみたかったことである。あの時の、記憶にまさに一致する風景があったので、感動して写真に納めた(下写真)。
昨夜、帰鹿後、すぐ当時の写真帳を開けた。そして、やはり、同じ風景であった。当時の出来事が、写真帳に書き込まれているので、読みやすいように、活字でここに書く:
『箱根八里は馬でもこすが、越すに越されぬ大井川。 箱根はすごかった。 1000mの頂上まで16
Km。 自転車を押さねば登れない所も多かった。 登る途中、雨が小降りになり、霧があたり一面を包み、あたりが深閑となった時、ウグイスがホーホケキョと鳴いた。 澄んだその声はは神秘的に胸にひびいた。 そしてもう一度短く鳴いた。 それっきり鳴かなかった。 不思議な沈黙だった。 思わず自転車を止め、道の辺に立って感慨にふけった。 霧の中を上へ上へと登るのだが、なかなか頂上へは着かなかった。 とうとう力尽きて、自転車を降りてため息をついたとき、さーっと霧が晴れて、目の前に美しい湖がうかんだ。 芦ノ湖だ! そしてそこが頂上だったのだ!
私は、これらの写真と文を読み、もう一度当時を思い出すことであった。
もう一つの念願は、やはりこの芦ノ湖沿いの旧東海道の“昼なお暗き杉の並木”と歌にもうたわれ、横山大観が描いた感動的な日本画(下写真)としても残されている杉並木の実物を見たいということであった。
この横山大観の絵では、杉の根元に立つ2人の旅人を描いたことで、杉の大きさが見事に描き出されている。
その実物の杉並木は、やはり昼なお暗く、そして杉は巨大だった。
私は横山大観にならって、前を歩いていた2人の人物を入れて撮った。この人物像がなかったら、なるほど、これらの杉の巨大さは表現できなかったであろう!
2つの念願が叶ったという箱根余話を紹介した。